【ファスト論文】日本広報学会で発表した『4Rモデル』をザックリと説明します
ファスト論文の第2弾は、日本広報学会で発表した『4Rモデル』についてザックリ解説します。
2024年4月14日に開催された第6回研究フォーラムで発表したものです。
広報会議7月号では「急速に変化するビジネス環境で企業が直面する課題に対応するための新たなコミュニケーションモデルを提案」と紹介されていましたが、ビジネス環境のデータなど、小難しい部分はバッサリ削って、今回も「セルフ切り抜き」でお届けします。
今回は論文としての査読を受けているわけではないので、私の個人的見解と提案です(笑)
※このコラムでは、一部図表を含みます。ご了承ください。
VUCAの困りごとが研究背景
以前の『ISM構造』同様、「VUCA時代を生き抜くには?」とか、「Z世代を理解するには?」とか、周囲の経営層やマーケティング関係の皆さまから聞かれまくったから、というのが今回の研究背景です。
そんなに困っているなら、VUCA時代のZ世代に通用するマーケティングメソッドを考えてみようじゃないか、というわけです。
ですが私は、マーケティングの専門家ではなくブランドコミュニケーションが専門なので、マーケティング理論の延長線上にオリジナルのブランディングフレームを追加しようと考えました。
それが『4Rモデル』です。
まずVUCAって何?
「VUCA」とは、「Volatility」(変動性)、「Uncertainty」(不確実性)、「Complexity」(複雑性)、「Ambiguity」(曖昧性)の頭文字を採って出来た言葉で、ざっくり言えば「物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態」のことです。
「正解が無い時代」とも言われています。
私が思うに、正解が無いのではなく、「正解がたくさんある」というのが妥当ではないでしょうか。
20世紀のマーケットにおいては、マスメディアがある種の「正解」を流布して、多くの人たちはその流行に乗って行動していました。
ところがインターネットが登場したことで、今までマスメディアが拾わなかったニッチな市場や個人の意見が見えてきて、自分の本当に好きなものを探して直接手に入れるようになったのが現代のマーケットです。
つまり多様性。正解は人の数だけ存在するのです。
Z世代について調べてみた
一般的に「Z世代」とは、「1990年代後半から2010年頃までに生まれたデジタルネイティブ世代で、多様性や個を重視する」と言われています。
上記のVUCAの説明でも「インターネットの登場によって多様性が進んだ」と書きましたが、その時代性の影響を強く受けているのがZ世代、と言えそうです。
また、様々な機関で実施された「Z世代」に関する調査結果からも、その特徴を抽出してみました。
ここではザックリ結論だけ書きます。
Z世代ってこんな人たち
これらの調査で分かったことは、Z世代は自分のアイデンティティや価値観を大切にして、流行よりも「共感できるか否か」を判断基準にしていると言えそうです。
共感できないものには興味が無いので、コスパもタイパも悪いだけ。
そうなるとアクセスするメディアも、共感できるインフルエンサーやYouTuberがいるSNSが快適となるのは自然なことです。
このような、流行や消費に対して必ずしも積極的とは言えない人たちに、「モノを売る」というマーケティングを仕掛けても嫌われるだけのような気がします。
ならば、従来のマーケティングに「モノを売らない」フェーズを付加してあげればいいじゃない、ということで開発したのが『4Rモデル』なのです。
マーケティングの『4P』と『4C』
ここで少しマーケティング理論のお話。
マーケティング理論には、「商品を売るにあたって様々な要素を組み合わせて考えましょう」という考え方があります。
これを一般的に「マーケティングミックス」と呼び、代表的なものが『4P』と『4C』です。
【4P】
E.J.マッカーシーが提唱したもので、「Product」(製品)、「Price」(価格)、「Place」(販路)「Promotion」(プロモーション)の4つを示します。
どんなに良い製品をつくっても、価格が高かったり、売り場が少なかったり、製品の存在を知らなかったりすると好調な販売に繋がらないので、この4つをシッカリ考えましょう、ということです。
【4C】
R.F.ロータボーンが提唱したもので、「Customer Value」(顧客価値)、「Cost」(経費)、「Convenience」(顧客利便性)、「Communication」(コミュニケーション)の4つを示します。
『4P』が「売り手視点」で考えられているのに対して、「買い手視点」で考えられたものが『4C』です。
だから製品の品質ではなく、その製品が「顧客にとってどんな価値を持つか」という視点。製品の価格ではなく「顧客が支払う経費」に、販路ではなく「顧客が入手する利便性」に変わります。
購買促進方法も、売り手側からの一方的なプロモーションではなく、買い手との双方向のコミュニケーションに変化していきます。
私の理解としては、『4P』から『4C』へ移行するのではなく、「両方の視点から見ることが大切」と考えています。
ミカタ視点の『4Rモデル』
「モノを売る」マーケティングとして開発された『4P』と『4C』ですが、前述したようにZ世代はそもそも購買に消極的です。
そこで購買とは別に、「モノを売らない」フェーズとして共感を醸成するために考案したのが、「ミカタ視点」の『4Rモデル』です。
「売り手」でも「買い手」でもなく、買い手のことを親身になって考えてあげられる「ミカタ」としての視点。
言うなれば、『4P』は「売る方法」、『4C』は「買ってもらう方法」、『4R』は「信頼される方法」です。
ミカタ視点の『4Rモデル』は、「Reliance」(共感の醸成)、「Risk」(リスクへの配慮)、「Relation」(関係構築)、「Recommend」(レコメンデーション)の4つを示します。
【Reliance】(共感の醸成)
製品や顧客価値といった「消費者が獲得する対象」は、「モノを売らない」フェーズにおいては「信頼」や「共感」となります。
ブランドメッセージやパーパスに共感してもらうことで、正しくブランド価値を感じてもらえたならば、直接的な購買に結びつかなくても、着実に信頼関係の構築に繋がるでしょう。
【Risk】(リスクへの配慮)
価格や経費などの「消費者が支払う対価」は、経済的な枠組みを超えて、タイパやスペパといった様々な「リスク」に及びます。
ウザい広告やDMなど、自分の時間や労力、体力や精神などが削られていくものはすべてリスクと考えられてしまいます。
そういった不安を少しも感じさせない「心理的安全性」こそミカタの証です。
【Relation】(関係構築)
販路や顧客利便性などの「取引経路」は、SNSによって狭き門となっているため、直接的な「関係構築」が必要になります。
メルマガ購読やアプリのインストールなど、初期ハードルは高いものの、一度ハードルを超えれば深いコミュニケーションへと発展する可能性の高いメディアが好ましいです。
【Recommend】(レコメンデーション)
プロモーションからコミュニケーションへと進化した「購買促進」は、事業者からのメッセージよりも信頼する相手からのオススメ=「レコメンデーション」が効果的となります。
星の数や商品レビュー、インフルエンサーの紹介といった「第三者の評価」が購買の背中を押してくれます。
おわりに
今回紹介した『4Rモデル』は、広報学会で発表しただけあって、実は広報PRにも近い考え方をしています。
とにかくブランドが、信頼されるには、愛されるには、推されるには、という観点から考えたらこうなりました。
多くの人に『4Rモデル』を試してもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
「4Rモデルを使ってみたよ」とか「役に立ったよ」というメッセージ、心からお待ちしています!
「フレームだけだと具体的なことが分からないよ」という人は、ぜひ個別にお話ししましょう!
下記よりご連絡お待ちしてます!
また新しい論文を書きましたら、この場にアップしたいと思いますのでお楽しみに!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。