国際派遣レポート②:チェンジマネジメント(チェンマネ)の四要素
皆様
こんにちは!オピニオンリーダーのKT(佐藤慧)です!
前回のレポートでは、チェンマネについて語る上で欠かせないEXについて、その重要性と構造を説明してきましたが、本レポートからいよいよチェンマネの要素に移っていきたいと思います。
本投稿のアジェンダは下記となっておりますので、気になるところから読み進めていただけますと幸いです。
―1.導入/背景
―2.Employee Experience(EX)の重要性
―3.Employee Experience(EX)が向上する構造
―4.チェンジマネジメント(チェンマネ)の四要素
―5.チェンジマネジメント(チェンマネ)の実施段階
―6.結語
導入/背景、Employee Experience (EX)の重要性、Employee Experience (EX)が向上する構造についての記事はこちら👇
4.チェンジマネジメント(チェンマネ)の四要素
チェンジマネジメントの四要素とは?
Petrobrasの整理によれば、チェンジマネジメント(以下、チェンマネ)には以下の四つの重要な要素があります。
傾聴(Listen)
理解(Understand)
行動(Act)
統制(Govern)
また、Petrobrasの説明においては特に示されていませんでしたが、それぞれの要素には下記図3にあるような基本的な流れが存在するのではないかと考えています。(筆者作成)
ステークホルダーマネジメントの重要性
各要素の説明に入る前に、チェンジマネジメントの大上段には”ステークホルダーマネジメント”が存在することも触れておくべきでしょう。
PMBOK[1]によると、”ステークホルダーマネジメント”は以下のように定義されています。
具体的には、プロジェクト推進において「誰と協力して」「誰に対して」働きかけるべきかを特定することが求められます。
しばしば、従業員に対してのチェンマネが語られがちですが、より狭義ではプロジェクト関係者も含んだ視点での検討が必要と言えると思います。
傾聴(Listen)と理解(Understand)
傾聴(Listen)と理解(Understand)は、異なる二つの要素ですが密接に結びついています。
これは想定ユーザーが何を求めているのか、現在の状況を可視化し理解する段階です。
Petrobrasはこの段階の情報収集を以下の3つに分類しています。
1. 聞かずとも人々が言っていること
トレンドや感情、状況の要点を捉えられることになるとされています。
2. 知らずに人々が言っていること(行動データ)
ベンチマークや外れ値の特定、仮説検定が可能になるとされています。
3. 聞いた時に人々が言うこと
十分な情報を基に、現状の診断が可能になります。
単純なヒアリングやサーベイだけではなく、求める情報の質によって、集めるデータソースや分析に使うテクノロジーを変えるという点が、当たり前のように見えて中々意識できていないことだと思いました。
また、対ステークホルダーに関しては、HR-Business-ITの三者間で言語、語用、認識をそろえること(IBM)が, アジリティーの担保につながる(Colgate-Palmolive)と講演内でも触れられており、プロジェクトにおいて傾聴・理解のフェーズでそれぞれの考えていることを理解するべく努めることの重要性が強調されていました。
行動(Act)
行動(Act)は、期待値の調整、認知の向上、デザインの改善など、チェンマネの中心となる要素です。特に以下の点が挙げられます。
期待値の調整
ユーザーとのギャップを最小化し、現実的な内容を伝えることが重要認知の向上
「チェンジエージェントの育成(L'Oréal)」や「迅速な情報共有、曖昧さを減らす(SLB)」など、行動に基づくアプローチが必要
「EXが向上する構造」でも説明した通り、プロジェクト推進側ができることと、想定ユーザーが求めることの間にギャップが生じることが、大きな問題であることを考えると、まずは正しく方向性や計画を伝えることが大事だということになります。
しばしばプロジェクト推進側はできることよりも、やりたいことをベースにして語ることが多く、必然的に想定ユーザーの期待値を高めてしまっている場合も少なくないと思います(これは自身の体験談)。
実際のプロジェクトは理想的な状態を追求するべきかと思いますが、こと従業員コミュニケーションにおいては、実態を捉えた現実的な内容を伝えることが正確な理解を育む上で重要だと考えられます。
また、興味深いのは政府からの規制など、外的な制約によって期待値に影響がある場合についても適切に触れるべきであるとしていた点が印象的でした。
Petrobras以外の各社の事例でも触れられていた主なポイントとして、認知の向上に関わるコメントが多かった点は特筆すべきだと思います。
行動様式に伴う発言が多かったことは、チェンマネが実践においていかに難しくも鍵を握るかを表すことの証左であると考えられます。
統制(Govern)
最後に統制(Govern)についてです。
統制は、傾聴・理解・行動のベースとなる要素であり、以下の内容を含みます。
役員層の巻き込み
KPIマネジメント
ガイドラインや戦略の定義
特にColgate-Palmolive[3]の、「人事だけではなく経営の問題としてSF導入プロジェクトを認識することが重要である」という発言には、まさにこのトップを巻き込むという考え方の重要性が詰まっているように思います。
意識的に実践することで、木を見て森をみず状態になることを防ぎ、プロジェクト並びにステークホルダーの全体感を意識したコミュニケーションが可能になると考えられます。
おわりに
総じて、各社のコメントが行動の部分に集約する傾向にある反面、Petrobrasの整理によって、4つの要素に構造化されている点は、チェンマネというふわっとしたものの解像度を上げるには有効だと思い、皆様のご参考になればと思う次第です。
本記事では、チェンマネを形作る四要素について触れ、実際に各社の言葉も引用しながらご紹介をいたしました。
次の記事では、各社発表からの気づきとしてチェンマネの実施段階に関する洞察を得たのでそのご紹介をします。
[1] PMBOK(ピンボック)とは、「Project Management Body Of Knowledge」の頭文字をとった略語であり、プロジェクト管理に関する知識やノウハウを体系的にまとめたもの
[2] シュルンベルジェ・リミテッド(Schlumberger Limited)世界120ヵ国以上で、エネルギー業界に対する最先端なデジタルソリューションや、革新的な技術を提供する技術サービス企業で、世界最大のオイルフィールドサービス会社。
[3] コルゲート・パーモリーブ(Colgate-Palmolive)は、石鹸、洗剤、歯磨剤、ペットフードなど日常生活用品を開発、製造、販売するアメリカ合衆国の多国籍企業。