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第7回:地元の反応:商店会理事長との会談 -緊急事態対応に役立つ信頼関係を日頃からつくっておく-

紅葉山FCが利用している市営グラウンドが、近隣住民からの苦情によって使えなくなってしまったため、他の利用団体の協力も得ながらグラウンドの利用再開を目指しています。ところが苦情の原因がはっきりしないために利用再開のめどは立っておらず、このままでは再来月にこのグラウンドで開催する予定の公式戦ができなくなってしまいます。

そこでサッカー協会のアドバイザーに助言を求めたところ、毎年の公式戦には地元の商店会が関わっていることが分かりました。毎年恒例の公式戦が開催されないとなると、地元商店会にも影響がありそうなので、早めに事情を説明した方が良さそうです。

高宮監督らが紅葉山FCを結成したのは5年ほど前で、サッカー協会主催の公式戦に出場し始めたのは4年前からです。その当時から市営グラウンドを使っていますが、これが地域のイベントとなっていることについて、高宮自身は全く意識していませんでした。

そこで高宮監督はサッカー協会との面談が終わったあと、紅葉山商店会の理事長で、薬局を経営している朝倉に電話して面会を求めたところ、翌日に会ってもらえることになりました。


高宮:早速本題なんですが、昨日電話でお話しましたとおり、市営グラウンドの近隣の方々から苦情がありまして、夜間のグラウンドの利用ができない状態です。このままだと再来月の公式戦の開催にも影響が出そうな状況で、一度状況を説明させていただきたくおうかがいいたしました。

朝倉:6月のサッカーに限らず、市営グラウンドで何かしらの大会やイベントがあると、商店街の人通りが増えて店の売上も多少上がりますから、基本的にはウエルカムなんですよ。あと会場周辺に屋台を出す店もありますからね。商店会の会員の方々の中でも、商売のチャンスとして考えてる人はそれなりにいるんです。


ここで高宮監督は、やはりサッカー協会の助言にしたがって朝倉に会ってみて良かったと思いました。これまで商店会との関係など考えたこともありませんでしたが、市営グラウンドで公式戦を予定通り開催できることで、メリットを享受できる人たちがいるのであれば、商店会との協働を具体的に考えた方が良さそうです。

朝倉:ただねぇ、毎年何らかの苦情はあるんですよ。近隣の住民の方々から。

高宮:商店会の方に苦情が来てたんですか?それは全然知りませんでした。

朝倉:ありますよ。だいたい騒音と、会場周辺の道路でのゴミのポイ捨て、あと迷惑駐車とかですね。住民の方々は誰に文句言っていいか分からないから、とりあえず屋台出してる店に文句言ったり、市の方に苦情を出したりしてるみたいです。私もサッカー協会に何度か申し入れをしたことはあるんですが、特に改善されたことは無いですね。まあ、そんなことがこの2、3年続いてますから、近隣住民の皆さんの中ではサッカーをやること自体に対して何かネガティブな印象を持ってるかも知れません。これはそのうち何とかしないとなぁ、と思ってはいました。

高宮:いやぁ、毎年試合に出ていながら、そういう問題を全く認識していませんでした。大変申し訳ありませんでした。これからはもし今後の試合で何か問題がありましたら、私に連絡いただけますか?我々紅葉山FCとしても出来るだけのことはさせていただきますし、サッカー協会にも要請しますので。

高宮は、これまで地域とのコミュニケーションにあまり気を配ってこなかったことを悔やみましたが、これを機に商店会との繋がりを深めることができれば、今後の活動にとってもプラスなのではないかと思いました。


【今回の場面における緊急事態対応の勘どころ】

緊急事態対応においては地域社会の協力が必要になることが多いので、日頃からコミュニケーションをとれる関係を作って信用を高めておくと、有事の際に協力を得やすくなります(※A)。

また、地域社会と良好な関係を築くことができれば、平常時における課題の発見や解決に繋がる可能性もあります。今回のケースに関して言えば、もしこれまでの試合でも近隣住民から苦情が来ていたことを知っていれば、普段から近隣住民との関係に留意することによって、練習場所が使えなくなるという緊急事態を未然に防げたかもしれません。

本連載は緊急事態対応に関するノウハウが体系化された国際規格「ISO22320」を拠りどころにして書かれています。今回の場面における緊急事態対応の勘どころがISO 22320の2018年版に記載されている場所は次のとおりです(アルファベットAは上の ※A に該当します)。

A:6.2.4 コミュニケーションの確立


イラスト:上倉秀之
オリジナル記事はこちら

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