非認知能力を伸ばす方法|コスパ最強!
今でも話題に上がっている非認知能力。なんか聞いたことあるけどよくわからない!という人は多いのではないでしょうか?私自身、知識が曖昧なところがあったので、これを機に徹底的に調べてみました。
この記事では、
そもそも「非認知能力」とは何なのか
どうやって伸ばしてあげられるのか
についてまとめてみました!
なるべく科学的根拠のあるものを厳選してみたので、ちょっと長くなりますがどうかお付き合いください。
非認知能力とは
非認知能力(Non-cognitive Abilities)とは、いわゆる性格のようなもの。場合によっては、性格特性(Personality Traits)や学びの構え(Learning Dispositions)と呼ばれることもあります。
ただし全ての性格が非認知能力になるわけではありません。調査基準にもよりますが「人生において役立つ性格」が非認知能力という枠組みに入っているというイメージ。
認知能力の重要性は昔から知られていた一方、非認知能力の重要性が知られるようになってきたのはここ最近(Campbell et al., 2014; Heckman et al., 2010b)。教育学研究が進んでいろんな種類に分類されていますが、性格よりも狭い意味で使われることが多いようです。
これも認知能力と同じように、乳幼児期に伸びやすいと言われています(Campbell et al., 2014; Heckman et al., 2010b)
非認知能力の重要性
非認知能力を有名にしたのは「ペリー就学前教育プログラム」という調査。
これは貧困世帯の3歳~4歳の子どもが幼児教育(2.5時間.3日/週+家庭訪問90分/週)を2年間受けたらどうなるか40年間も調べたものです。
この幼児教育を受けた子どもは、
高校卒業率が高い
学業成績が高い
雇用率が高い
収入が高い
犯罪率が低い
健康状態が良い
という傾向がありました(Campbell et al., 2014; Heckman et al., 2010b)。
しかも!!
驚くことに、この成果に子どもの認知能力は関係なかったんです。というのも、この調査において伸ばされた認知能力は長期間維持できていなかったからです(Heckman et al, 2010a)。維持できてたのは認知能力以外のもの、これがすなわち「非認知能力」だったわけです。
たった2年間でこれだけの成果、しかも伸ばされた非認知能力は年齢を重ねても長期間に渡って維持されていた。
これはコスパが良い!ということがこの調査結果から知られるようになりました。研究を率いていたヘックマンは、このような功績が認められてノーベル経済学賞を受賞しています。
非認知能力の種類
教育学研究の進歩によって、非認知能力はいくつかに分類されながら調べられてきました(Duckworth et al., 2007; Farrington et al., 2012; Gutman & Schoon, 2013; Heckman & Kautz, 2012)。
忍耐力
自制心
社会性
回復力
創造力
自己効力感
メタ認知
などがよく知られています。それぞれ簡単にまとめました。
忍耐力(Grit)
忍耐力とは、長期に渡って頑張ることができる能力。「頑張る」というのは、難しいことや退屈なことを乗り越えて目標を達成しようとすること。伸びにくいが、重要性は高い。
自制心(Self-control)
自制心とは、自分の感情や行動をコントロールできる能力。目先のことだけを考えずに長期目標に意識を向けられるということ。伸びにくいが、重要性は高い。
社会性(Sociability)
社会性とは、他人と協力できる能力。「協力」というのは、話し合ったり・助け合ったり・共感したりすること。いわゆるコミュニケーション能力や協調性。伸びやすい。
回復力(Resilience)
回復力とは、立ち直ることができる能力。逆境をものともしない精神力。「逆境」というのは、貧困・虐待・死別などのこと。いわゆる適応能力。伸びやすく、重要性も高い。
創造力(Creativity)
創造力とは、意味のあるアイデアを思いつくことができる能力。「意味のある」というのは、オリジナル性があって役に立つということ。好奇心も含まれます。伸びにくい。
自己効力感(Self-efficacy)
自己効力感とは、自分ならできる !と信じることができる能力。新しいことにチャレンジするときの自信。自己肯定感も含まれます。伸びやすい。
メタ認知(Meta-cognition)
メタ認知とは、自分自身を知って工夫しながら目標に立ち向かうことができる能力。「工夫」というのは、考えたり・計画したり・観察したりすること。問題解決能力や批判的思考も含まれます。伸びやすい。
こんな感じ!
大人でも難しいですよね(笑)
これだけあると大事なものだけを選びたくなってしまいますが、どれかにしぼるのはおすすめできません。非認知能力は複雑に結びついていると言われているからです(Gutman & Schoon, 2013)。
非認知能力の特徴
非認知能力という言葉が出てくる前、性格は長年研究されていました。
その中でも、
解放性(オープンさ)
誠実性(真面目さ)
外向性(元気さ)
協調性(優しさ)
情動性(不安定さ)
これらはビッグファイブという有名な性格診断テストの基準で(John & Srivastava, 1999)、心理学研究において長年使われてきました。
これを非認知能力と比べてみても、
解放性 ▶︎ 創造力
誠実性 ▶︎ 忍耐力・自制心
外向性 ▶︎ 社会性
協調性 ▶︎ 社会性
情動性 ▶︎ 回復力・自己効力感
ぴったり当てはまります!
というのも多くの非認知能力は性格から派生してきたものだからです(e.g., Heckman et al, 2010a; Kautz et al., 2014)。
この性格からの派生というのが大事!というのも性格のうち半分は環境要因で決まると言われているから(Bouchard & McGue, 2003; Jang et al., 1996)。もうあと半分は遺伝子。要するに、まわりの環境を整えてあげれば非認知能力は育てられるということ。
その一方、非認知能力は数値化することが難しいので「測定困難能力」と揶揄されたりもします。今のところ相対評価で確認するのが主流。ここでの相対評価とは、他人と比べるという意味ではなく、過去の自分と比べるという意味です。
非認知能力と日本教育
さて、日本教育において非認知能力はどのように位置付けられているのでしょうか。詳しく見てみましょう。
日本政府の取り組み
日本の幼児教育は、
『保育所保育指針』
『幼稚園教育要領』
『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』
という日本政府が出している文書を基準にしています。日本国内の認可園(公立・私立)はこの文書に沿って運営しなければいけません。
日本政府の見解
と書かれていることからも、非認知能力を意識していることがわかります。
ところが不思議なことに、
自尊心
自己制御
忍耐力
社会情動的側面
はここ以外には出てきません。
学びに向かう力・人間性等
ここに書かれている「学びに向かう力・人間性等」という項目が非認知能力にあたるのでは?と言われてはいます(横井, 2020)。これは幼児教育の基礎部分。ところがこれ以上の説明はありません。あまり具体的とは言えない、というのが現状のようです。
その他の記述
あとは文書を通して「自立心」「協同性」「好奇心」「探究心」といった言葉が出てくるのですが、具合性も参考文献もありませんでした。これでは日本政府がどの非認知能力を重視したいのかわかりませんよね。
これから改善されるかも?
(ちなみに改定は10年に1度)
教育現場の取り組み
日本の保育園や学校ではどうでしょう?
教育現場でどんな非認知能力が意識されているか、まとめられている報告書がありました(お茶の水女子大学, 2015)。
と書かれていたので、実際のデータから各年齢グループで使われていた上位キーワードを抜き出してまとめました。
3歳児入園~4歳児前半
挑戦・試す・試行
自発性・能動性
安定・安心
満足感
観察力
3歳児後半~5歳児前半
自発性・主体性中・能動性
試す
つながる・連帯・一体感
目的を持つ
没頭
5歳児後半~小学校入学
葛藤
共有
挑戦・試す
思いやり
自発性・能動性
小学校1年生~2年生
受容
自発性
観察・力
期待感
目的を持つ
めっちゃ現場独自ですよね(笑)
調査当時の日本政府が出していた文書とも関係なさそうでした(厚生労働省, 2008; 文部科学省, 2008)。もともと非認知能力の指定がないので当然かもしれません。保育園や学校それぞれ工夫しながら取り組んでいるようです。
子どもの非認知能力
現場独自とはいえ大事なのは結果!
これまでの取り組みによって子どもの非認知能力は伸びているようです(お茶の水女子大学, 2015)。そう考えると方向性はズレてないのかも。
報告書のデータによると、
自己効力感(挑戦・自発性など)
社会性(共有・受容など)
メタ認知(試す・観察など)
を重視していることがわかります。
確かに、日本は治安も良いので子どもが何かに挑戦したり体験したりするような環境は整っていますし、人口も多いので人間関係を通して社会性を育てられます。観察や反省を通してメタ認知を促すような教育実践も昔からあるので、報告書のデータはあながち間違っていないはず。あとは子どもひとりひとりに合わせて、バランスを考えてサポートしてあげるだけ!
非認知能力を伸ばす方法
ここまで来たらもう非認知能力に関する知識は身についています。あとは実践方法を知るだけ!科学的根拠のあるものを厳選してまとめてみたので参考にしてみてください。
◎ 愛着をつくる(およそ0歳から)
愛着とは、子どもと親の信頼関係のこと(Bowlby, 1969)。
ミネソタ大学のおよそ30年間にもわたる追跡調査によると、愛着ができていた子どもは、粘り強さなどの忍耐力があって、思いやりなどの社会性があって、好奇心などの創造力があって、高校卒業率も高かったそうです(Sroufe et al., 2005)。
恐ろしいのは、およそ1歳児時点の愛着が生涯にわたって影響すること(Sroufe et al., 2005)。論文69本というデータのメタ分析でも、愛着ができなかった子どもは問題行動を抱えるリスクが高くなると報告されています(Fearon et al., 2010)。
こうして愛着の重要性が知られるようになりました。親子だからといって自然にできるものではないので意識して築きあげていきましょう!
愛着づくりの実践方法をまとめました。
抱っこする
これはもはや言わずもがな!「抱き癖」なんて言葉がありますが、気にしないでたくさんしてあげてください。
膝の上に乗せる
別に抱きかかえなくても大丈夫なんです。腰をいたわってください!
目線を合わせる
言葉がまだわからない赤ちゃんにとって、アイコンタクトもわかりやすい愛情表現です。ミルクをあげるときなど意識してみてください。
意識して声をかける
疲れて言葉すら出ないことありますよね。だけどそれが癖になるのはまずいかも!言葉の意味はわからなくても声は聞きわけています。ちょっと休憩したら思い出してみてください。
安全な環境づくり
そもそも子どもが安心できる環境を準備できてることが大前提!
当たり前なことばかりですが、それだけ子どもが愛情をたっぷり感じられる子育てが大切ってことなんです。愛着という状態を通して非認知能力が育ちます。
けっきょく愛情が大事!!
◎ 外遊び(およそ1歳から)
これまでの調査から、外遊びが非認知能力を育てることがわかっています(Chawla, 2015; Christian et al., 2015; Tillmann et al., 2018)。
これには、
自制心
自己効力感
創造力
回復力
などが含まれます。
理由としては自然からたくさん気付きをもらえるから(Chawla, 2015)。自然があると運動量が増えるのも大きなメリット(Gianfredi et al., 2021)。
とはいえ子どもだけで外を出歩くのは危険ですよね。小さい頃の外遊びのチャンスは保護者が意識して作ってあげましょう!
ポイントをまとめました。
家の立地・庭
治安が良くて交通量の少ないところに住むのが一番!子どもがいつでも遊べるような庭が敷地内にあるといいみたい。
近所にある施設
自然のある公園や娯楽施設もおすすめ!子どもが走り回ったり冒険できるような広いスペースを探してみましょう。
他の子どもとの交流
誰かといっしょに遊べるのが理想!友だちや親戚と参加できるアクティビティを探してみましょう。町内会やコミュニティセンターが企画してるかも?
安全性の確保
危険を感じると冒険するのをやめてしまいます。できる範囲で子どもが安心できるような環境づくりを意識してみてください!
楽しく安全にが基本!!
◎ おままごと(およそ2歳から)
意外かもしれませんが、おままごとも非認知能力を高めるそうです(Bodrova et al., 2013; Galyer & Evans, 2001; Lillard et al., 2011)。
これには
自制心
社会性
メタ認知
などが含まれます。
とはいえ毎回付き合うのはしんどいですよね!子どもだけでおままごとができる環境を整えてあげるだけでも大丈夫。
ポイントをまとめました。
他の子どもとの交流
理想はやっぱり誰かといっしょに遊べること!友だちや親戚を呼ぶのもあり。さらに忙しくなってしまう可能性もありますが(笑)
ぬいぐるみ
ちょっと大きめのぬいぐるみがあるだけでも楽しく遊んでくれます。ぬいぐるみ以外にも、ドール・パペット・ロボットなど子どもが好きなものなら大丈夫!
おままごとコーナー
おもちゃも道具もないところでおままごとを始めるのは難しいですよね!お家にもちょっとした準備があるといいかも。
基本はいつも環境づくり!!
最後に
非認知機能は乳幼児期に伸ばしてあげられる能力のひとつです。鍛えてあげることで子どもの将来の可能性が広がるかもしれません。
もちろん非認知能力を伸ばしてあげるというのは、子どもにとっても保護者にとっても簡単ではありません。保護者がどれだけ完ぺきな環境を与えることができても、子ども自身の頑張りによって大きく左右されます。そして言うまでもなく、子どもがストレスに感じていないということが大前提。
状況に合わせて取り入れてくださいね!
ではまたっ
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