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貪り読むときは不安なとき

文庫本を脇に挟んで玄関で靴を履きながら
「本を貪り読む時って、不安な時だよね」と呟いたら
家族が深く頷いた。
そういう彼も、コロナ禍の中、いつも以上に本を読んでいる。
ずっと読んでいる。

noteを始めた時期はコロナ禍と重なるけど、
これまで意識して「コロナ」に触れないで書いてきた。
なんとなく意地だったように思う。

でも今朝そうやってふと口をついて出た言葉が、何より真実だと気づいた。
私はこの一年、今までにないほど常に本を読んでいる。
図書館に通い、借りては読み、返してはまた借りる。本屋に立ち寄り、衝動的に文庫本を買う。知っている作家だけでは足りなくなり、初めての作家の本も手に取る。夜中に目が覚めたときのために、必ず枕元に本を置く。電車だけでなく駅から会社までの道すがらでさえ、文庫本を開きそうになる。
もともと読書は人生の重要な一部だったけれど、この一年、隙間ができるのを恐れるかのように貪り読んでしまっている。

コロナ禍の社会が不安で不安で、仕方ない ーー それが本を手放せない理由だったんだ。それが今朝、玄関で、やっと言葉になった。

吸い込んで、吸い込んで、貪り読む。すごく楽しい、もっと読みたい。そしてすごく、不安だ。