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【映画】フツーに「青春モノ」だと思っていたら・・・~「台北アフタースクール」

先日、「台北アフタースクール」という作品を観てきました。数ヶ月前に観た「青春18×2 君へと続く道」がとても良かったので、タイトルが「台北」となっていたこともあり、そんな青春モノだと思って観に行ったら、まあまあビックリな展開でした。が、後味が良かったこともあり、余韻の残る作品だったと思います。今回はそんな個人的サプライズだった(?)「台北アフタースクール」鑑賞記をまとめてみました。

※ネタバレを含みますので、お読み下さる時にはご注意下さい!!


まずは恒例のあらすじから・・・

1994年、台北。予備校「成功補習班」に通うチャン・ジェンハン、チェン・シャン、ワン・シャンハーの3人組は、予備校で「成功三剣士」と呼ばれる問題児だった。卒業後それぞれの人生を歩んでいた彼らは、入院中の恩師シャオジーを見舞うため久々に再会。先生の言葉をきっかけにかつて通った予備校を訪れ、懐かしい青春の日々を振り返る。高校3年、大学入試まで残り約1カ月となったある日、成功補習班に代理講師シャオジーが着任してくる。シャオジーは枠にとらわれない授業で生徒たちに寄り添い、3人は自分らしく生きるシャオジーと過ごすうちに、それぞれ自分自身と向き合うようになっていく。

映画.comより抜粋

ストーリーは、大人になった主人公たちが再会し、懐かしい思い出のある予備校(今は廃校)を訪れるところから始まります。そして90年代中頃を舞台に彼らの青春時代の様々なエピソードが展開されていきます。


問題児軍団「成功三剣士」とは?

元気で明るい主人公のチャン・ジェンハンとイケメンの親友チェン・シャン、そして内向的だが心優しいワン・シャンハーが紹介されていきます。チャン・ジェンハンは予備校の同じクラスにいるチェン・スーに片思い。なんとか気を惹こうとするのですが、ことごとく失敗に。そして常に彼の横にいるチェン・シャンはカッコいいので、女子生徒たちからモテるのになぜかガールフレンドはいない・・・という設定。ワンくんは実はこの予備校のオーナーの御曹司(全く関係ないんですが、爆笑問題の田中さんと俳優の梶原善さんお二人の若かりし頃のような印象で、登場するたびにお二人をつい思い出してしまいました笑)

ある意味一番カッコいい!チェン・スー!

そしてクラスのマドンナ的存在のチェン・スーですが、ただ可愛いだけではなく、実は「男勝り」というか「竹を割ったような性格」という言葉がピッタリくる超カッコいい女子。勇気を出して告白したクラスメイトをいとも簡単にフってしまったチェン・シャンを文字通り「公開処刑」に。そんな彼女もだんだんと先ほどの問題児軍団との親交を深めていきます。

このあたりまでは「青春18×2」テイストでした

という感じで、前半は主人公2人(チャン・ジェンハンとチェン・シャン)のおバカエピソードが続々登場。いやー、これを塾でやったらダメだろう、という御法度の連続。そしてチェン・シャンの家庭事情により、なぜか彼はチャン・ジェンハンの家に居候。むさ苦しい高校生二人が同じベッドで雑魚寝したり、ジェンハンの両親の食堂を手伝う光景、さらには自転車で登校する様子などが描かれていました。繰り返しますが、ここまでは懐かしい90年代の匂いのする青春ストーリーでした(台湾でも流行していたんですね、チャン・ジェンハンの部屋にはスラムダンクのポスターが飾ってありました!)

恩師の登場!(これは実話だそうです)

そしてストーリーが急展開するのが、恩師の登場からです。この恩師は予備校の臨時教師。本当は映画製作をするための渡航資金を貯めている映画監督の卵。風貌も若くて生徒たちから人気の出そうな先生でした。が、「What is love?」の授業はダメでしょう(笑)。いくら台湾が進歩的であっても、受験直前の生徒たちに「恋愛しろよー」はちょっと日本で予備校業に携わっていた人間としては、ここはいただけなかったかな、と(笑)。ま、映画にツッコミをいれても仕方ないわけですが・・・。

さらにここからサプライズの連続!

このあたりからストーリーはだんだんとディープになっていきます。実はこの恩師(リウ先生)はゲイのアクティビストなんですね。ですから、そうしたご自身の経験も含めてドキュメンタリーを制作しているという設定。そのため、主人公二人にも自身の状況を伝えた上で、実は映画作りを密かに夢見ているチャン・ジェンハンにカメラをプレゼントしたり、「好きに生きなさい」とアドバイス。・・・と、こう書くと、すごくいい先生なんだけど、やっぱり高校生を撮影だからといってナイトクラブに連れて行っちゃダメでしょう、とやっぱりここでも自分の常識から離れることが出来ず、なんとなく主人公たちに共感できなかったですね。

様々な思いが交錯していく・・・

そして「三剣士」のもう一人、ワンくんは実は女装に興味があり、そうしたことからチャン・ジェンハンが恋するチェン・スーと仲良くなることに。そしてとうとうそのことがお父さんにバレてしまい、ほぼ勘当状態に。さらにチャン・ジェンハンとチェン・シャンの友情も、とある行為をきっかけに断たれてしまうことに。このあたりの「揺らぎ」がとても上手に描かれていたように思います。友情なのか、それともそれを超えたものなのか・・・?という狭間の感じ。しかも私はチャン・ジェンハンがチェン・シャンにそういう思いを寄せていると思っていたら(そういう作りになっていたのかな?)、実はチェン・シャンだった!というのもまたサプライズでしたね。


いつの時代も親の子を思う気持ちは海より深い!

そして私(だけではないと思いますが)が一番感動したのは、こうした親子愛のシーンです。予備校を出て数年が経った頃、少し大人になった4人が再会します。そこでは綺麗にドレスアップしたワンくんが。彼(彼女?)はあれから家に帰れず、親御さんに会っていないという設定。その時に恩師が自分も同じように父親に勘当され、結局亡くなるまで会えなかったという話をします。しかし、実は恩師のお父さんは本当は会いたくて、何通も手紙を書いていたものの、出せずじまいだった・・・ということが分かります。そこでワンくんが意を決して実家に戻るのです。もうここのシーンを観ただけでも、この作品を観た甲斐があった!というくらい感動のシーンでした。常に息子の味方であるお母さんと、ちょっと硬派だけど実はワンくんのことが大好きなお父さんとの素晴らしい再会シーンです。

友情以上恋愛未満

チャン・ジェンハンとチェン・シャンの関係はまさにこれ(友情以上恋愛未満)。いや、チェン・シャンはもっと恋愛寄りかもしれません。しかし、この作品の素晴らしいところは、ベタベタせずに「お互い老いたら一緒に暮らそうぜ!」とメチャクチャ明るく一端の区切りをつけるのです。この二人の結末をどうやってつけるのかな・・・と思いながら観ていたので、なるほど・・・というか、もちろん可能性は少ないんだけど、互いに年老いた頃に高校生時代を懐かしんで、また一緒に暮らしたいよな、というノリだったんじゃないでしょうかね?爽やかな二人の演技もあって、なんだか妙にしっくりきた名シーンでした。

そして途中とラストは「モニカ」!

結局、チャン・ジェンハンは片思いの相手であるチェン・スーと結婚することに。新郎の付き添い(ベストマン)はもちろんチェン・シャン。このときのチェン・シャンの気持ちはどうだったんでしょうかね?映画では非常に爽やかに描かれていました。ちなみにチェン・スーが警察官という設定も、ものすごくピッタリで良かったです。警官姿、とても似合っていました。もっと出番があってもいいような気もしましたね、正直。


ということで、ほとんどネタバレエピソードでしたが、それくらい前知識なしで観たので内容がサプライズすぎてビックリしたというお話でした。もちろんところどころツッコミどころもあるんですが、それでもラストに向けて感情が揺さぶられたのは事実です。悪い人が誰もいないというのもいいですよね、メインの登場人物が皆、頑張っている様子も好感が持てますし。しかも実際に監督をされた俳優でもあるラン・ジェンロンさんご自身のエピソードを元にされているとのこと。実際にモデルとなった恩師は映像ドキュメンタリーを制作されていたそうです。やはり実話を元にしているだけあり、重みがあったのかもしれません。

そしてなんと挿入歌があの吉川晃司さんの名曲「モニカ」をアンディ・ラウさんがカバーした作品が流れるという、これまたサプライズ。しかもエンディングでは役者さんたちが予備校で歌って踊るという、ある意味カオス状態に。でも、こうした演出がより一層ラストに気分を高めてくれたように思います。



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