
人は変わらない、だからこそ学ぶんだ~アドラーに学ぶ「職場コミュニケーション」の心理学/小倉広④
元日本生命で活躍した後、ライフネット生命の創業者となり、その後は大学の学長に就任されるという異色の経歴の持ち主、出口治明さん。大の読書癒家としても知られており、中でも歴史に関しては多数の書籍を発表されるほど。私にとっては「知の巨人」といえば出口さんの方が相応しいと思っています。実業界でも活躍され、そこから教育の世界にこれまでの知識や経験を還元されたわけですから。
・・・と、前置きが長くなりましたが、そんな出口さんはかつて著書の中で「人間の進歩はチョビチョビしたものだ」というようなことを仰っていました。要は太古の昔から人間の本質はそれほど変化していない、ということ。美味しいものが食べたいし、楽しいことが大好き、そして基本的には怠け者。そんなちょっぴりダメなところもあるけど、だからこそ人生は面白いんだという「出口史観」も私は大好きですし、共感しています。
なんだかアドラーを再び読み直していると、そんな「人間の進歩チョビチョビ論」に改めて納得だな、と感じています。そう、結局、「人は変わらない」(笑)。それはそうなんですけれども、それでもちょっとは成長したいじゃないですか。そのヒントをアドラー先生は教えてくれているような気がします。
「いいね!」とウインクを送る
相互尊敬、相互信頼の関係を築くためには、相手の行為にたいしてこまめに素早く承認を与えることが重要である。承認とは「私はあなたを見ていますよ。あなたに関心がありますよ」ということを言語、非言語を問わず、相手に伝えることだ。
私たち日本人はえてしてこの承認が苦手である。「阿吽の呼吸」や「空気を読む」ことを大切にし、感情を表に出すことを恥ずかしがる日本人らしい習慣ではある。しかしいくら心の中で相手を承認していても、言葉に出さなければ伝わらないのだ。
特に日本人は共感力が高いのかもしれません。または同調圧力が強いということもあるのでしょうね。なんとなく口にしなくても、以心伝心だったり、その場の「空気」が全体に伝わる・・・なんてこともありますからね。ただやっぱり大事なことはしっかり口に出して伝えなければ、相手には伝わりませんよ、ということ。特に家族や友人といった身近な人ではなく、ビジネスでのつながり(社内・外の関係者など)なら尚更。他人なのですから、より丁寧に関係性を常に築いていかなければ、思わぬ一言、ちょっとした出来事で崩れてしまう・・・ということも。年に一度の大奮発したプレゼントよりも、毎日の感謝の言葉の方が効果は高いですよね(反省です・・・)。
相互尊敬・相互依頼につながる「勇気づけ」
アドラー心理学は別名「勇気づけ」の心理学とも呼ばれている。勇気づけとは困難を克服しようとする活力を高めることであり、相手に心のガソリンを継ぎ足すことと言えるだろう。
アドラー心理学では最も効果的な勇気づけとして「感謝を示す」こと、すなわち「ありがとう」を伝えることを上げている。「偉いね」、「すごいね」といった上から目線ではなく、「あなたのおかげで助かった、本当にありがとう」と勇気づけるのだ。
相手のちょっとした行動を見逃さず、素早く、こまめに承認を与える。上から目線で評価するのではなく、横から目線で共感する。そして感謝の言葉で勇気づける。これこそが相互尊敬、相互信頼につながるのではないだろうか。
前職が「教える」仕事でしたので、教師と生徒という関係であれば、ある意味、上から目線の感謝は致し方ないのかな、と思います。が、私の場合はなぜか、「上から」ではなく「横かナナメ」の関係が多かったです(単にナメられてただけ?汗)。別に迎合するわけではなく、馴れ馴れしく友だちになろうということでもなかったのですが、あんまり「先生然(先生ヅラ)」するのも性に合わなかったので、まあまあ言いやすい人間として見てくれていたのかもしれません。イメージとしては「親戚の叔父ちゃん」くらいを意識していました(笑)。
さらにスタッフに関しては、極力、素早くこまめに承認、は気にしていました。まあ、全てにおいて完璧だったわけではないですが。また、老いては子に従えではないですが、彼らの方が私よりも得意なこと、上手なこともあるわけで、そういうことについては、私が教えを請いていました。なんでも出来るぞ、オレについてこい、っていうのもガラでは無かったので・・・。それにムリして威張っても、見透かされるだけですからね。それだったら、自分の不得意なことについては、得意な人に任せ、達成したら感謝する、みんなに得意なことをやってもらい、自分はフォローにまわる・・・みたいな
動きをしていましたね。
相手のグローブに向かって投げる
「会話は言葉のキャッチボール」ということは、互いにボールを投げ合い続けることが重要だ。つまりは会話が途切れないようにする。そのためには次の話題、すなわちトリガー(引き金)を会話に織り交ぜるのが礼儀である。次の話題のトリガーをさりげなく織り交ぜる。このことにより、互いがスムーズにボールを投げ合えるようになるのだ。
毎回書きますが、「人間、口は一つで、耳は二つ」という名言が思い出されますね。自分が発する言葉の倍は傾聴しろ、ということですよね。誰もが「自分が、自分が」の世界なので、「損して得取れ」ではないですが、ここは相手に譲って、相手に気分良く話をしてもらう。徐々にテンポが合ってくると、うまいことキャッチボールになってきますからね。まあ、稀にただひたすら自分語りをする方もいますが、そういう方は徐々にね・・・(笑)。とはいえ、それが上司だったりすると、それはそれでしんどいですよね。これはもう、他山の石とするしかないですよね、自分はこうはならないぞ、みたいな。それなのに、いつしか、そんな上司に近づいていたりするから、怖いですよね、常に律しなきゃ、です←自分に言い聞かせてます(笑)。