【映画】「ダウントン・アビー」&「ゴスフォード・パーク」英国階級モノ傑作選
突然の旧作映画話になります。というのも久々にTOEICにチャレンジしようという意欲が沸いてきているのですが、リスニングパートでなかなか聞き取れないのが英国系アクセント。試験問題やリスニング動画ばかりでは飽きが来るので、趣向を変えて映画を見ることにしました。そこで見たのが「ダウントン・アビー」と「ゴスフォード・パーク」。
うーん、いずれも英国階級モノの名作ではありますが、時代モノなので、現代ビジネス英会話の役に立つのか?という疑問は残りますが、ま、そこは「試験勉強と自分を納得させたうえで、単に久々に見返したくなった」ということでして・・・(笑)。例によってネタバレ的要素も含みます。また、ほとんどを頭の中にある薄ーい知識で書いておりますので、細かい記憶違いもあるかと思いますがご容赦ください(どちらも大好きな作品です)。
①ダウントン・アビー(映画版)
先に告白から。すみません、ファンの方からすると怒られてしまいそうですが、TVシリーズは見ていないんです・・・(次々に困難に巻き込まれるというあらすじをみてしまい、日和った)。映画版は2作品ともに拝見しましたので、映画版についての感想になります。TVシリーズのキャスト陣がスクリーンに戻って来る!ということで、ここまで未見だった自分でもようやく仲間入りできるかと思って鑑賞しましたが、人間関係などが上手に描かれているので、すんなり世界観に入ることが出来ました。
チーム感抜群の群像劇!
そして何より私が大好きなジャンルである、「群像劇」である点もすごく良かったです。どのキャラクターにも心配りされて描かれており、全員がその場面では主役。階上、階下それぞれにドラマがあり、互いに連携して一つの大家族が構成されている様子が伝わってきました。これは長年のTVシリーズで培った空気感が劇中だけでなく、リアルの世界で役者陣(もちろん製作・スタッフチームも)にも醸成されているからでしょうね。そうした「阿吽の呼吸」感が伝わり、観ていてとても好感でした。
TVシリーズ終了後、満を持しての映画版ということもあり、第1作の方が2作目に比べて興行収入や評価も高いようですが、私は2作目推し(あ、もちろん1作目が良くないということではないですよ)。あれだけの大人数、しかも観客それぞれに推しキャラがいるなかで、新たに登場するキャラクターを織り込みめ、様々な物語が同時進行で複数進んでいく描き方は素晴らしかったです(やはり階下チームの連携シーンは観ていてスカッとしますね、本当に仲が良さそうでした)。
「A NEW ERA(新たなる時代へ)」
2作目はサブタイトルが「A NEW ERA(新たなる時代へ)」ということで、古き良き伝統の貴族社会にも現代化の波が押し寄せ、新旧の文化が衝突する・・・という、こうして文字にすると「よくあるテーマ」かと思いますが、これが上手くブレンドされていて、数々のヒントがのちに繋がっていく構成は見事でした。今回はダウントンでの映画撮影を中心に、その映画界でも「サイレント」から「トーキー」への移行もテーマになっています。
徹底的に細部にこだわった緻密な脚本!
ダウントンの屋敷を事実上取り仕切るメアリー夫人がひょんなことから吹き替えの代役として活躍するエピソードや、傲慢な主演女優がメイドたちに心を開き、交流していくシーン、さらには劇中映画のラストで階下のスタッフたちがエキストラとして映画に参加するシーンなど、細かいエピソードなのですが、そうした細部まで心がこもっているストーリー展開であり、きっと誰もが見終わった後にホッとできると思います。
劇中とリアルの嬉しい共存
映画版「ダウントン・アビー」の2作に共通しているのは、ダウントン内には敵がいないこと。映画では皆で力を合わせてダウントンを守ろう、というチーム感に満ちている点も好きなのだと思います。また、いつもの「みんなで頑張ろう主義」ですね(笑)。これは役柄を超えて、役者たちもそう思いながら、つまりはこのシリーズに戻れて本当に良かったという気持ちで演じているんだと思います。こういうのは伝わりますからね(メイキング映像などを観ているとそうした光景が伝わってきます)。
②ゴスフォード・パーク
こちらも英国貴族モノの名作。とはいえ、久々に見直してみると、映画版「ダウントン・アビー」が非常にハートウォーミングに作られているのに対して、こちらは相当ビターテイスト。それもそのはず、アメリカの鬼才ロバート・アルトマン監督作品だからです(またいずれ記事にしたいと思うのですが、実は私、大のアルトマン・ファンです!)。アルトマンといえば群像劇。しかも大御所でもあり、役者陣から相当な信頼を得ており、ビックネームの役者たちが他の映画だったら役を引き受けないだろう、という脇役でも出たがるという伝説級の監督。そんなアルトマンが英国階級モノにチャレンジした意欲作なんです。
だいぶ「ビターテイスト」な仕上がりに
繰り返しますが、ストーリー自体は「ダウントン」よりもかなりビター。風刺が満載ですし、どこか距離感持って英国貴族たちを茶化しているような描写もあります。が、ここがまたアルトマン流なんです。結局、階上の人々は階下の方々のサポートなしには生きられない、という皮肉。また、階下は階下で、階上以上の階級社会が構成されていて・・・(ここはダウントンのチーム感とは離れています)。どこか寒々とした冷酷な世界が描かれています。ま、これはこの屋敷の主人に難ありで、「ダウントン」のグランサム伯爵が心優しい理想の主人であるのに対し、「ゴスフォード」の主人、マッコードルは性根の曲がった意地悪な人間なので、屋敷全体がそうした冷たい空気で覆われているんですよね。それに屋敷に集まる上流階級の面々も、複雑な思いが交錯しているので・・・。
圧巻はラスト!ヘレン・ミレンの名演技に注目
ただ、とはいえ、かなり入り組んだ人間模様をちょっとした台詞でつないでいき、彼らの関係性が見えてくる面白さがあります。そして圧巻はラスト!ここはぜひご覧になっていただきたい名シーンです。家政婦ウィルキンソン夫人を演じたヘレン・ミレンはその後「クィーン」でオスカーを受賞しますが、「ゴスフォード・パーク」でも助演女優賞でノミネートされていました。いやー、このシーンを見る限り、この作品でも受賞してほしかった!また、「ダウントン」にも出演しているマギー・スミスもまた、底意地の悪いマダム役を名演しております。
③脚本家ジュリアン・フェローズ
実はどちらの作品も脚本を担当しているがジュリアン・フェローズ。脚本を書く前は俳優経験もあるそうで、この「ゴスフォード・パーク」でオスカーを受賞しています。アルトマンは脚本を「読み込まない&深追いしない」ことで有名。脚本通りを嫌い、脚本はあくまでも「あらすじ」。そこから現場で役者と一緒に作り上げていくことを楽しむタイプの監督。ですので、脚本を一字一句間違うことなく要求するような脚本家とは相性が悪いので、おそらくフェローズも最初は戸惑ったのではないでしょうか。
アルトマン流「脚本から自由に」
とはいえ、元々が役者出身なので、役者としては「脚本から自由に」というアプローチにも理解があったのでしょう。二人のコラボレーションは非常に良かったこともあり、前述の「感動のラスト」が生まれたという秘話が生まれたそうです。実は、撮影が始まってから、ふとしたときにアルトマンがラストにつながるアイデアが生まれ、そこからフェローズが脚本を作っていったそうです。こういう即興性って素晴らしいですよね、現場で作られていくリアル感。役者陣がこぞってアルトマン映画に出たがる気持ちが分かります。いつもは脚本に忠実にあれ、と教わっているのに対し、脚本から離れて自分で考えろ。そのため、アルトマン映画に出てくる役者の動きや口調は非常に自然なんですよね。しかも嬉々として役を演じているように見えます。
緻密な構成の「ダウントン・アビー」
一方の「ダウントン・アビー」においては、そうしたアルトマンとのコラボレーションの効果もあったと思いたいのですが、こちらでは細部まで作り込まれた重厚な脚本像が伝わってきました。大勢のキャラクターに光が当たるように練り込まれ、どの役者にも見せ場がある。一言、二言、さらには数分間の短いシーンややりとりにも意味がある。また、長年のTVシリーズで培ってきた連帯感からか、チーム意識も高いので、場面によってメインになり、サブになりという面で、役者たちも互いを輝かせるために動いているようにも見えました。観ていて幸せになるのは、物語自体だけでなく、作品作りを楽しんでいるか、そうした見えない「空気」を感じた時なんですよね。
ということで、結局は魅入ってしまい、英語の勉強になったのか?というと若干(いや、相当?)不安なのですが、ひとまず日本語字幕版を鑑賞し、好きなシーンだけは字幕なしで観るという、オーソドックスなトレーニングはしてみました。実は、最初から字幕なしで観てみたのですが、全然・・・(涙)。ストーリーはなんとなく覚えているのですが、会話がチンプンカンプン。やはり普段からのリスニングが大事ですね。毎日BBCニュースを観るとか、聴くとかも入れていくしかないですかね。あとは、どちらも階級社会という時代モノでしたので、現代イギリスモノを開拓しなきゃなーなんてことも思いました。
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