【映画】心がヒリヒリする2作品~「CLOSE」「アフターサン」
日焼けした後の肌がヒリヒリする感覚を「アフターサン」というそうです。今回は最近鑑賞した「ヒリヒリする」2作品をご紹介したいと思います。例によってネタバレ有りとなりますので、これからご鑑賞される方はご注意ください。なお、結論から申し上げますと、万人におススメできる作品とは多少異なると思いますので、何卒ご了承ください。
① 親友ふたりに訪れる悲劇「CLOSE」
「兄弟のように仲良しの二人が、同級生にからかわれたことをきっかけに二人の関係に変化が訪れ・・・」というのがあらすじ。ここまでは予告編などで観ていたので、劇中でも「そろそろ来るな」と構えてみていました。中盤に訪れる悲劇に向けて徐々に、親友同士の明るく楽しい時間から、じわりじわりとヒビが入っていく感覚と突然の衝撃に驚かされました。本当に幸せなひと時として描かれているので、その反動が相当堪えました・・・。
衝撃の後、主人公の一言が心に響く
その後は主人公の葛藤の日々。自分を追い詰めるように家業の手伝いやアイスホッケーのクラブチームでの練習に没頭する。これは親友のことを忘れるため、もしくは考えないようにするための逃避なのか・・・?周囲の大人たちも彼のことを心配し、声を掛けるのですが、頑なに自分の殻に閉じこもる。きっとうまく言葉にできないのでしょう。とにかく自分の中で咀嚼できていない感覚が上手に描かれていました。そして何気ないときに呟く「会いたい」の一言が物凄く心に響きました。
もし自分ならどうする?何ができる?
終盤、親友の母親に自分の胸の内を吐露するシーン。彼女もなんとなくは分かっていて、それでも聞くのが怖くて今まで避けていたのだと思います。そして予想していたと思われる内容に、何ともいえない悔しさや今まで心に溜めてきた様々な思いがにじみ出るこのシーンも忘れ難い。もし自分だったら?彼を許せるのか?また、主人公の少年だったら?親友の母親に会いに行けるのだろうか?そして心うちを伝えることができるのか・・・?救いが全くないわけではないですが、最後にボールが観客側に投げられた状態で終了します。ということで、未だに心が「ヒリヒリ」しています。
② 父と娘のラストバカンス「アフターサン」
「別れた父親と娘がトルコでバカンスを過ごす日々を描いた作品」が「アフターサン」です。まだ父親も若く、そしてどことなく心が不安定である様子が劇中で垣間見えます。一方の娘は無邪気な一面も持ちつつ、少しずつ「大人の階段」を昇っていく思春期を迎え、彼女なりに父をどこか心配しながら見つめています。この映画の斬新なところは、作品が彼らのビデオカメラに収められた内容を、彼女が大人になってから見返しているという設定になっているところです。
一見明るいトルコでのバカンスに見えるのだが・・・
ただ、そうした工夫が最初はよく分からず、しかも時々、現在のシーンと交錯するため、「これは一体いつのことなんだろう?」と混乱した部分もありました。また、夢か現実なのか、よく分からないように演出されていたりもするので、こういった部分でもよく飲み込めていなかった自分は、あとから批評などを読んで「ああ、そういうことだったのか」と気付かされました(映画評論家の町山智浩さんと女優の藤谷文子さんの番組で取り上げられていました)。
2回見ると理解できるそうですが・・・
町山さん、藤谷さんは「2回見るとよく理解できる」と仰っていました。ただ・・・ちょっと私としては2回見る元気はないかな・・・というのが本音。恐らく本編では「匂わす」程度になっていますが、この作品中の若きお父さんは最終的に心の問題で悲劇的な結末を迎えることがぼんやりと仄めかされているようなので、そうした悲しいエンディングを2回見るのは・・・辛いですよね。
ウディ・アレン作品との関連
古い映画ですが、ウディ・アレン監督の「インテリア」という作品にも似たようなシーンがありました。劇中の冷淡なインテリアコーディネーターである母親がふとしたきっかけで海に向かっていくシーンです。ただ、この作品にはラストに「救い」があるのが「救い」なのですが。ちなみにこの作品、当時はコメディの名手として知られていたウディ・アレンが初めてシリアス作品に挑戦したということで、相当叩かれたそうですが、私は結構好きです。役者陣の演技も素晴らしいですし、映像も美しい。
③ どちらも心が「ヒリヒリ」する映画でした・・・
ということで、今回紹介した2作品はいずれも心が「ヒリヒリ」する映画となってしまいました。本来、スカッと元気が出る作品が好きなので、こうした系統は久しぶりでした。とはいえ、時々はこうした「考えさせる」系も自分の幅を広げる意味でも、観て良かったかなと思います。が、未だに「ヒリヒリ」していますが・・・(笑)。どちらの作品でも「もし自分だったらどうする?」と考えずにはいられない、非常に考えさせられる2作品でした。
④ 最後に宣伝みたいですが(笑)・・・東京テアトルのご案内
どちらの作品も銀座にある「ヒューマントラストシネマ有楽町」で鑑賞しました。実は数年前から「東京テアトル」の株主でして、毎回定期的に無料招待券を「株主優待」として頂いているんです。映画ファンにはとても嬉しい優待です。昨今、「株主優待」を廃止する企業さんが多いのですが、この優待はぜひとも継続して欲しいです。
このテアトルグループはヨーロッパやアメリカのややマイナーな映画も上映してくれるので、「優待もあるし、観てみようかな」と気軽な気持ちで観られるところも気に入っています。ちなみに「ヒューマントラストシネマ渋谷」には音にこだわったシアターもあり、ここで「BLUE GIANT」を観ましたが、大迫力で本当にジャズコンサートを聴いているような感覚になりました。・・・と、ラストは謎に案件のようになってしまいましたが、好きな劇場なので勝手に応援してみました。こうしたミニシアターはぜひともずーっと残ってほしいものです。