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【映画】いつか本当に起きることかもしれない・・・~「シビル・ウォー」

なんだか徐々にきな臭くなってきている世界情勢時に、まさにタイムリーな作品を鑑賞してきました。「もしかしたら、ありえるかも?」という現実性とディストピアな世界観を体現している「シビル・ウォー」です。今回はこの作品の感想をご紹介したいと思います。ちなみに「ネタバレ有り」となっっておりますので、お読み下さる時にはご注意下さい(個人的には鑑賞に際しては、前情報ナシで見た方が楽しめると思います)。


まずは恒例のあらすじから

連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。

映画.comより抜粋

突然始まり、やや混乱状態で事態が進んでいきます。

これは作り手が意図的に演出しているんだと思うのですが、内戦について見ている側に情報が与えられないまま、事態が進んでいきます。分かることはアメリカが内戦状態にあること(これはタイトルから容易に推測できますよね笑)。大統領側の政府軍と西部勢力(テキサス州とカリフォルニア州の連合軍)による戦いであることがサラッと触れられる程度。どうやら大統領が独裁色を帯びているらしく、TV向けの広報では政府軍の勝利が近いことを喧伝するのですが、そのスピーチもどこか所在なさげで怪しい雰囲気で・・・ということが冒頭で短く登場する程度。ですので、実際に何があったのか、どういう状態なのかはあまり分からないまま話が進んでいくのです。

戦場カメラマン、ジャーナリストとは複雑な稼業です・・・

主人公は女性の戦場カメラマン。彼女と同行する報道チームは当然仕事として戦場の実態を伝えるわけですが、常に危険と隣り合わせですし、悲惨な状況も目の当たりにするわけです。しかし実際に戦う兵士たちとは異なり、あくまでも現場を取材するのが仕事。さらに「特ダネ」を求めたいという野心をもっており、そのためならどんな危険を冒してでもという「命知らず」な無謀者も多くいるようです(本作を見る限り)。今回、チーム同行する戦場カメラマン志望の若い女性(←あんまり感情移入出来なくて、最後の最後までイライラしていました、個人的には笑)は、主人公の伝説的女性カメラマンに憧れ、数々の危険の中に飛び込んでいくのですが、不思議と危険が迫るとアドレナリンが沸いてくるタイプのようで、見ていてハラハラしました。

敵か味方か分からないことが一番恐怖かもしれない

彼女たちはNYからワシントンD.C.に向けて車で出発するのですが、最短ルートは内戦により寸断されているため、大回りをして向かうことになります。そしてその道中で、数々の内戦によるアクシデントに見舞われます。これがもう・・・辛すぎるの連続でした。要は一番の恐怖は人間だということ。ここも詳細は語られていないのですが、隣人同士での殺し合いだったり、自分たちを防御するために銃による自衛が徐々に過剰になっていき、結果的に近寄る者全てに銃を向けるというようなことが描かれていました。ショッキングなシーンが続く一方で、使われている音楽が60年代、70年代のロックミュージック風だったりする不思議な感覚がより一層印象づけていました。とにかく一見、誰が敵か味方かが分からない、そんな不安に乗じてどんどんエスカレートしていく様子が淡々と描かれていました。一番怖いのは「人間」ということですかね。

いくつかの「なぜ?」

ここは鑑賞中に考えてしまったいくつかの「なぜ」を書きだしてみたいと思います。もしかしたら、きちんと内容を掴めていなかっただけかもしれませんが・・・汗。
○「なぜ、皆スマホを使っていないのか?」
→冒頭、電気が不安定で、主人公が泊まるホテルが10階なのですが、フロントのスタッフに「エレベーターを使うと停電になったときに、閉じ込められるから使わない方が良いですよ」と言われるシーンがありました。また、主人公がデータをアップロードするのもパソコンでした。たしか本編を通じてスマホで情報をやりとりしていなかったような・・・?大統領が冒頭でモニターに向かってスピーチを練習していましたが、そもそもテレビが映るシーンもなかったような・・・?

○「なぜ、主人公たちは銃を携帯していなかったのか?」
→これだけ危険な中に飛び込むのだから、自分たちも護衛の意味で銃を携帯していれば良かったのに・・・と思いました。まあ、そうすると、中盤で押し寄せる危機のシーンのスリルが半減してしまうので、そうするしかなかったのかもしれません。

○「そもそも原因は何なのか?」
→鑑賞中、ずーっと気になっていました。「原因はなんだろう?」と。大統領が3期目であるとか、FBIを解散したとか、言っていましたので、相当強権を発動して独裁色の強い政権なんだろうな、ということは分かるのですが、一方で西部勢力側は特にトップリーダーが登場するわけでもなく、ここもまた淡々と進んでいきます。ですので、実際に何が具体的にあったのかは結局最後まで分からないまま、終了したので、もやもやが晴れないという・・・涙。

○「彼らは日常生活をどうやって送っているのか?」
→これはぜひ映画を観て欲しいのですが、NYやワシントンD.C.での大銃撃戦シーンなどは圧巻です。かつてホワイトハウスをこのように描いた作品があったかな、というくらいでした。と、同時に全米各地で内戦が繰り広げられているため、日常生活が麻痺している設定になっています。途中、スタジアムを開放して避難所なっている描写もありましたので。となると、気になるのが、この人たちはどうやって暮らしているのか?ということ。たしか、途中で立ち寄ったガソリンスタンドでは米ドルがもはや無価値になっていて、カナダドルで支払う、というシーンがありました。それなら皆、カナダかメキシコに移動するという手もあったのでは・・・?とか結構本気でいろいろ考えながら見てしまいました笑。

ラストのホワイトハウスは圧巻!!!

そしていよいよクライマックスのホワイトハウスでのシーンは本当に凄かった!相当古い映画ですが「ブラック・ホーク・ダウン」のソマリア市街戦を思い出してしまいました。ここは次から次へと繰り広げられる銃撃戦とホワイトハウスへの突入劇に没入すること必至のはず。徐々にバリケードを破壊していくところは、少しだけ「ロード・オブ・ザ・リング二つの塔」を彷彿させましたね、個人的には(笑)。というように、いろいろな戦争映画やアクション映画の迫力あるシーンをミックスしたような出来になっています。その一方、ラストはあっけないので、ここはここでビックリでした。

まとめ「これはいつか本当に起きることかもしれない」

アメリカと言えば議会占拠事件がありましたが、今年11月に行われる大統領選挙の結果次第では、またこのような事件が起きるかもしれない、と言われていますよね。これは決して空想物語ではなく、どこか本当に起きることかもしれない、と思わせるだけの実経験があるからこそリアリティが生まれたように思います。また、ラストのホワイトハウスのシーンでは、私は舞台が日本であり、他国からの攻撃を受けたら・・・という目で見ていました。

ですので、どちらかというと西部勢力を敵方として見ていたことになりますが、こうやって徐々に議会なのか首相官邸なのか、そういったところへ攻撃を重ねて占拠していくとしたら・・・という怖いことをイメージしてしまっていました。もちろん現実にあってほしくはないですし、そうさせないためにできる限りのことをして欲しいわけですが、それでも「もしかしたら・・・?」と考えさせられてしまうところにこの作品のリアリティがあるんだと思います。見終わった後、皆さんがどういう感想をお持ちになったのか、とても気になる作品でした。私にとっては「傑作!」という部類ではないのですが、ずーっと後を引く、記憶に残る作品になったと思っています。
















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