![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/107111970/rectangle_large_type_2_04a9b9740c114ba2b04de3ad43e340de.png?width=1200)
【仕事】今話題の「チャットGPT」について思うこと(新井紀子さんの記事を読んで)
普段は映画・本やらスラムダンクに筋トレ・・・とライトな話ばかりな人間ですが、今回はちょっと重めの話題にチャレンジしてみようと思います。ある意味、関連した業界の一員でもありますので、思うことなど書いてみようと思います。
きっかけは先日読んだ「朝日新聞」に、新井紀子さん(国立情報学研究所教授)が書かれた記事が載っていたことです。タイトルは「チャットGPT 子どもに使わせるべき?~「東ロボくん」開発主導に新井紀子さんに聞く」というもの。今回はそちらの記事を参考にしながら、話を進めていこうと思います。まずに「東ロボくん」について簡単に説明すると・・・
2011年にスタートした「プロジェクト(ロボットは東大に入れるか)」で、2016年に東大は難しいということで一旦開発凍結となるが、それまでの過程でMARCHレベルは合格できるくらいの能力があることが判明した。ちなみに2019年のセンター試験の英語では200点満点中185点(偏差値64.1)をマークしたという。
当時、このプロジェクトの開始時は「いやー、本当にAIが東大に行ける世の中になったら、自分の仕事なくなるから困るなー」とか「子どもたちがますます勉強しなくなるんじゃないか・・・」と否定的に思っていました。すると新井さんの著書や記事を読んでいくと、以下のようなことを仰っていました。
高校生の8割が東ロボくん以下の成績となったことに開発者の新井紀子は衝撃を受け、これからのAI時代において人間が人間らしくあるために「AIの性能を上げている場合ではない」「東ロボくんの性能を上げるよりも、中高生の読解力向上が直近の課題」との結論に至る。
![](https://assets.st-note.com/img/1685633311940-GhCyW0VW5B.jpg)
この「読解力」というワードは、常日頃、子どもたちと接する機会が多かったこともあり、年々、「文章の読み間違え」が多くなってきたことや「この文章、何言ってるか分からない」という声をもらっていたので、現場として痛感していた事項でした。しかも新井さんたちはてっきりロボット推奨派で、「どんどん性能のよいAIを作って人間を凌駕していくプロジェクトを推進している」、と思っていたら、全くの誤解。「人間には読解力の向上が必要!」とのことで、一気に賛同したという次第です。(←相変わらず、変わり身が早いという・・・笑)
前置きが長くなりました。いよいよ新井さんの記事に関する話題です。新井さんの意見としては「(チャットGPTを使わせるべきではないと)一概には言えない」とのこと。(ただし、その後で自分に10代の子どもがいたら使わせませんね、とも仰っていますが。)記事から引用します。
「AIは、文章の最初の何語かを与え、次がどうなるかを当てさせる、ということを繰り返しながら文章を学んでいます。意味を考えているわけではなく、正答率100%を目指しているわけでもない。いかに人間らしく文章を生成させるかが大事なんです。だから、正しい知識がない子どもが使うと、その答えをうのみにする可能性があります。」
「子どもにチャットGPTを使わせることは、ユーチューブを使わせるのと同じ感覚です。(中略)ユーチューブは可能性があるけど、多くの人にとっては可能性を奪う道具です。」
朝日新聞5月朝刊より
このあたりは現場で携わる一介の人間としてかなり同意できます。やっぱり生身の人間を介在させて、実際に体験する、経験する、他人とのかかわりの中で自分を見つめて学んでいく・・・というようなことが若い時には大事だと思うんですよね。ユーチューブで最先端の授業などを見ることで「分かった気」になってしまうというのが一番怖い。ということですよね。新井さんは続いてこう述べています。
「その人の能力を見極めるには、1千年の歴史を(600字以内で)まとめる課題を出した方がいいのではないか。こういう能力を磨くことこそ、人間の課題としてすべきことだったと気づきました。ですので、今後もますます読解力が問われるようになるでしょう。例えて言えば文章を読んだときに、読んだことが意味として立ち上がる感じです。テキストがテキストのままで終わっている人は、文章を縮めることができません。でも分かっている人は、事実を俯瞰的に捉えることが出ます。」
朝日新聞5月朝刊より
実はこの前段階で、一時期流行った「主体的」について新井さんは否定的見解を述べています。この「主体的なこと」では、本当にその人が思っているのかどうか検証できない。一方で、1千年の歴史を600字以内でまとめよ、という課題の場合、これには相当高度な能力が求められると。実際チャットGPTに解かせて大手予備校の先生に採点してもらったら、なんと0点だったとか。
この「文章を読んだときに、読んだことが意味として立ち上がる感じ」というのは非常に(個人的には)刺さるというか、わかるという印象を受けました。ただ字ズラだけ追っている、なんとなく読んでいる、ではなく頭の中に入り、内容がイメージできるレベルまで落とし込めている感じでしょうか。ちなみに新井さん流、子育て法もなかなか豪快です。
自分で暑さ寒さを感じるとか、こうすると転ぶんだなとか、昆虫が動く様子をずっと見て「動く」ということの統一的な原理を認識するとか。そういうことを無言のまま学ぶ時期があると思うのです。その時期が十分にないと、その後の発達が難しくなるように人間はできているのではないでしょうか。(中略)鉛筆を使う、消しゴムを使う、モノサシをしっかり押さえて線を引く、こうした原始的な体験を積むことが大事、というところに戻るのではないかと思います。
朝日新聞5月朝刊より
そもそものAIと生身の人間との最大の違いはこの「実体験をすることができる」ということですよね。どうも知識の面だけに偏り、AIに取って代わられる・・・というディストピアを煽るモノが多いですが、そもそもライバル視すること自体、少し違っているのかもしれませんね。人間にしかできないこと、いや、人間だからこそできること、という面を今一度見直してみるという考えを持つということも大事ですよね。そうした実体験をしっかり積んだうえで、次の段階としてチャットGPTやらAIやら最新技術を使って、楽をできる部分では楽をさせてもらう・・・というように上手く活用していけるといいのではないでしょうか。
ただ、そこに行くまでにはいろいろな課題が多いのが本音ですよね・・・。じゃ、お前はどうしたらいいんだ、具体策を出せ!と言われても、「・・・とりあえず、新井先生の作られた『読解力テスト』やってみましょうかね?」くらいで止まってしまう気が(笑)。みなさん、チャレンジしたことありますか?このテスト、結構難しいというか、自分の読解力のなさ、というか、普段から考えて読んでいないことが露呈していまう、かなり考えさせられるテストです。もし機会がありましたら、ぜひやってみてください!