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【映画】室井さんの笑顔が嬉しかった~「室井慎次 生き続ける者」

先週、「室井慎次 敗れざる者」を観て、その興奮(感動?)冷めやらぬまま続編である「室井慎次 生き続ける者」を観てきました。週末の先行ロードショーということで劇場は8割くらいの入りでした。それでは早速、感想をまとめてみたいと思います。ちなみにネタバレを含む箇所が出てきてしまいますので、ご覧頂いた後にお読み下さることをお願いいたします。


まずは恒例のあらすじから

警察を辞めて故郷の秋田に戻り、事件被害者・加害者家族の支援をしたいという思いから、タカとリクという2人の少年を引き取り、暮らしていた室井慎次。しかし、彼の家のそばで他殺死体が発見され、さらにかつて湾岸所を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・日向杏が現れたことから、穏やかな日常は徐々に変化していく。かつての同僚であり今は秋田県警本部長になっていた新城に頼まれ、警視庁捜査一家の若手刑事・桜とともに捜査に協力することになった室井。そんな彼のもとに、服役を経て出所してきたリクの父親が訪ねてくる。

映画.comより抜粋

結論から言うと、私はこのエンディング、非常に悲しいんですけど、これはこれでアリだな、と思いました。これはプロデューサーの亀山さんがインタビューで「柳葉さんを室井慎次から解放させたい」と仰っていましたので、見終わった後は「そういうことか・・・」と納得しました。ということで、室井慎次連作肯定派として書いていきたいと思います。


リタイア後のひとつの理想の生き方?

現役時代、理想に燃えて果敢に組織改革に猛進した室井さん。しかし、組織の壁はもの凄く頑丈で、結果として道半ばで挫折。本人は早期リタイアして秋田の山奥で第二の人生を始める。セルフリノベーションを重ね、少しずつ生活基盤が出来はじめ、犯罪被害者の里親として彼なりの「贖罪」を果たしていこうと決意する。子どもたちと交流する中で、これまで鉄のように堅く閉ざされてきた室井さんの心が徐々に融解していく・・・。というような流れなのですが、これってリタイア後の生き方として一つの理想型だと思いませんか?(といいつつ、実際はなかなか難しいのですが・・・汗)

頬を緩める室井さんの姿に涙

前編に引き続き、室井さんは里親として慣れない父親代わりを務めていくわけですが、子どもたちと接する中で、頬を緩め非常に大きな愛情で彼らを包んでいく様子が丁寧に描かれています。これは子役陣の演技力の高さもあると思うのですが、とにかくやりとりの全編が素晴らしい。そしてもちろん柳葉さんの演技力!本人(室井さん)曰く、「父親1年生だからどう接して良いのかよく分からないんだ」と本音を吐露するシーンが前編でありましたが、後編でも引き続き戸惑いながらも、室井さんらしい、まっすぐ実直に子どもたちと向き合います。(ナマハゲのシーン、最高でした!笑)


室井さんの生き方が徐々に地域に波及していく・・・

今回のタイトル「生き続ける者」ですが、その名の通り、「室井イズム」が周囲に少しずつ「良い影響」を与えていきます。前編では何かと室井さんにいちゃもんを付けてきた近所の人たちも、徐々に室井さんを理解し始め、協力をし始めます。ま、商店での若者とのいざこざシーンはちょっとどうなんだろう?取って付けた感があった気がしましたが・・・(と同時にあそこはガツンと室井さんにアクションシーンで成敗して欲しかった気もするのですが、室井さんならそんなことはしないような気もしますしね・・・難しい笑)。よくありがちですが、実は室井さんがあれこれ地域の方々のために手を尽くしてきたことが後から分かるわけですが、こういうのもベタな気がしますが、私は好きでした。

本人は「成功しなかった」と言うが、そんなことはなかった!

室井さんは常に「自分は何も出来なかった」そして「途中で投げ出してしまった」と現役時代の後悔を胸に生きているわけです。こういうことって現実の世界でもあると思いませんか?きっと一つや二つ、諦めたこと、出来なかったこと、などなど、誰にでも「後悔」があると思います。その事柄に情熱を懸けていた分だけ、出来なかったことを悔やむんだと思うんです。なんとなく室井さんのレベルとは違いすぎて比べるのも烏滸がましいですが、私にもそういう出来事がないわけではないので、このあたり妙に共感して見入ってしまいました。

でも、結果的に室井さんの考え方や生き方は周囲にしっかりと引き継がれ、劇中では秋田県の警察機構が大きく刷新したことが描かれています。真矢ミキさん演じる沖田さんも警察庁の上層部で同じく室井イズムを彼女なりに実現するために奮闘し、今回も室井さんに全面協力します。そして何より子どもたちもまた室井さんによって「生きる力」を授かったといっても過言ではないでしょう。劇中、室井さんは犯人に「現役時代は被害者のことなど考えなかった。でも彼らにも家族がいるんだ」というようなことを蕩々と伝えます(このあたり、なんだか和久さんに見えてきてしまいました・・・笑)。子どもたちが力を得たように、室井さんもまた彼らから気づきを得て、第二の人生を自信持って歩み始めたのでしょう。


衝撃のラスト!これは「踊る」ユニバースの結末の一つ

そしていよいよラストです。繰り返しますが、私はこのエンディング肯定派です。こんなカッコいいエンディングないでしょう。そしてエンディング後に描かれる室井さんイズムを引き続く方々のエピソードもまた素晴らしかった。もちろん出来すぎているファンタジーなんですが、いいじゃないですか現実じゃ無いんだから。これぞ室井さんが思い描いていた世界が少しずつ動いていく・・・という夢のあるエンディングになっていたと思います。ただ、子どもたち3人暮らしは何かと物騒ですから、飯島直子さんたち夫婦と一緒に住むとかしてあげた方がいいかもしれませんね(笑)。

ついでに「踊る」ユニバース、と考えれば、それぞれの「続き」も観てみたいです。例えば、警察官を目指す貴広くん(東大を目指していたようなので警察官僚でしょうかね?)の話、飄々として掴み所の無い松下洸平さん演じる警視庁捜査一課の桜の話、母からの洗脳と決別して生きていくことを決めた杏のその後、そして何かと一人で賑やかな地元交番の乃木くんの出世までの道のり・・・など(笑)。こうしてそれぞれ一人一人にストーリーがあるのが「踊る」の魅力の一つですね。ここに本当は湾岸署の面々も加わってほしいくらいです。

柳葉さん、ありがとうございました!

そして長年にわたり室井慎次を演じてきた柳葉敏郎さんに改めて感謝したいと思います。私の子ども時代にはトレンディドラマで一世を風靡(というかチームもまた一世風靡セピアでしたね)していた柳葉さん。本来はコメディセンスもあり、ご本人もお笑い大好きの「陽キャ」。たしかあちこちのインタビューで、「踊る大捜査線」では早々に殉職させて欲しかったと仰っていましたね。というのも、お笑い好きの柳葉さんとしては湾岸署の面々がコントを繰り広げる姿をいつも羨ましく思っていたのかもしれません。そんなおご本人の「武器」を封印し、常に冷静沈着、かつ動作も少ない室井役をオーラと気迫で演じきった柳葉さん、本当にお疲れ様でした。今度はかつてのような弾けたコメディ演技も久しぶりに観てみたいです。


ラストのラストに注目!エンドロールは最後まで!

もうすでにあちこちで注目を浴びていることと思いますが、絶対にエンドロールは最後まで観て下さい!劇場が明るくなるまでお楽しみ下さい。「踊る」ファンなら絶対に頬が緩むに違いありません。まさに私がそうでした。これがなかったら、憔悴感だけで劇場を後にするところでした・・・。さすが、亀山プロデューサー!分かってるなー笑。


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