見出し画像

【言葉】「全力では動けないけど、全力を目指しています」~イチロー選手アメリカ野球殿堂入り②

「投票していただいた記者の方々、ありがとうございました。どうやら1人、投票してくれなかった方がいるようですが、ぜひ自宅に招待して一緒にお酒を飲みたいので、名乗り出てシアトルまでお越しください」どうですか!この洒落の効いたコメント!会場は大爆笑だったということですが、本当に素晴らしいですよね、どうしてもステレオタイプ的に日本人は口下手というか、生真面目でスピーチがつまらない印象をもたれがちですが、いやいや、これぞ日本のサムライ、イチロー選手ですよ!本当にカッコいいし、胸がスカッとしました。ということで前回に引き続き、イチロー選手のインタビューをご紹介していきたいと思います。


僕はなるべく自分が思っていることを表現したい

Q.今の時代、選手自身が何か言われたりしないようにセーブして話していると感じることはあるか。
「もちろんそうですよ、それはどの時代もそうですけど、今はそれが極端になっているという印象ですよね。今、記者さんたちは大変だなと僕は想像するんですけど、表現していることばを額面どおりに取れないんじゃないかと。その裏側を結局捉えないといけないけど、でも表現していないから、それは書けない。だけど表現ができないというもどかしさは、それは現代の深刻な病とまでは言わないですけど。ことばの裏側を捉えないといけない。だけどそれは表現ができない。だから僕はなるべく、自分が思っていることを表現したいと思っています。でもそれでも難しい、現代はね。いろいろなことをカバーしようとしたら、無理ですよ、もう話なんかできない。

NHK NEWS WEB 2025年1月22日 17時33分より抜粋

私がイチロー選手で印象に残っているのが、オリックス時代の契約更改のインタビューです。まだまだ初々しいルーキーだったイチロー選手が、昨年の活躍が認められ大幅アップした直後の会見だったと記憶しているのですが、記者陣に「(年俸を)何に使いますか?」と聞かれ、「あったかいセーターを買いたいです」というようなことを仰ったように記憶しています(もしかしたら記憶違いかもしれませんが・・・汗)。もちろん会場は爆笑。ただ、この飾らない人柄が伝わる光景だったように思います。それから毎年記録を更新し、マスメディアに常に追われる中で自身(と家族)のプライバシーを守るために、徐々に防御を固めていく・・・ま、当たり前ですよね。時に非友好的な印象のコメントを残す時期もありましたが、選手生活晩年期には角が取れて来たように思います。が、そういう姿勢になったのには、こうした考えをもっていらっしゃったんですね・・・納得です。

100%賛同される意見なんてつまらない

「だから僕としては、薄っぺらい会話なら何言ったっていいんだけど、深く議論を呼びそうな話題になった時、その時は7:3のバランスでアンチがいるといいなと思っています。100%、10割ね、賛同される意見なんてつまらないですよ。つまらないし、議論にならないんで、そもそも。7:3、6:4だとちょっとね。8:2でも、8が強すぎるのも、問題ではないんだけれど、7:3ぐらいのバランスを目指しているんだけどね、なかなかそれは結果だから分からない

同上

これはイチロー選手だからこそ出来ること。これだけの圧倒的な実力を持ったスーパースターだからこそ、ある意味「本音」でマスメディアに挑むことが出来るんだと思います。私流に言うとまさに「何を言ったかより、誰が言ったか」。たぶん、あるときから吹っ切れたんだと思います、イチロー選手の言葉で言うと「薄っぺらい会話」ではなく、できる限り「本音」でぶつかろう、と。マスメディア受けする「表面的」なコメントでおしゃを濁すのではなく、もっと自分らしい、相手にストレートに伝わるような表現をしよう、と。きっといろいろと辛い思いもされたのでは無いかと思います。自分はそういう発言はしていないのに、そういう意味で言ったわけではないのに・・・と。それなら、もっと自分らしく発信しよう、と思われたのではないか、と思いました。

全力では動けないけど、全力を目指しています

Q.自分自身がどこまでできるのか想像がついているか、選手と同じく毎年勝負か。
「選手と同じ気持ちかどうかはわからないですけど、僕にはどこにゴールがあるか分からないです。あした潰れるかもしれないし、10年後かもしれないし、その先かもしれないし、わからないです。今やっていることというのは、その日の限界を迎えること、これを繰り返しています。今、全力では動けないですけど、この状態で全力を目指しています、限界を目指しています。これを繰り返していくことで、アスリートの体がどうなっていくのかという、それを見てみたい興味がすごく強いんですね。それは単なる1例でしかないんですけど、野球選手にとって何かヒントになることがあるんじゃないかということを期待しながら、今取り組んでいるということです

同上

イチロー選手の引退後の生活を追ったドキュメンタリーを見たことがありますが、自宅にはトレーニングマシンが取りそろえてあり、入念にトレーニングされている姿が記憶に残っています。もちろん年齢を重ね、かつてのようには動けないわけですが、それを受け入れつつ、今できる最善を目指すという考え方、本当に頭が下がりますし、もちろん私はイチロー選手とは当然違うわけですが、そのスピリットの1%でも影響を受けたいな、と心から思いました。「今、全力では動けないですけど、この状態で全力を目指しています、限界を目指しています」最高すぎませんか、カッコ良すぎませんか?しかも言葉だけでなく、本当に実践されていますからね!これは自分の中でも大切にしたい言葉であり、考え方になりました。ま、非常にシンプルなんですが、やっぱりそれをイチロー選手が言うと、言葉の重み、格が違います・・・って結局単なるミーハーですね・・・(笑)。


ということで、今回も名言をたっぷり頂きました。そういえば、言葉で語らず、Tシャツで表現されていた時期もありましたね。毎回、ユーモア溢れるTシャツを着こなしつつ、キレッキレのトレーニングをされているそのギャップが印象的でした。この後もイチロー選手の後に続く日本人選手が出てきてくることを楽しみにしたいですね。


いいなと思ったら応援しよう!