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眠れない夜に
目を開ける。
時計を見る。
深夜2時。
そうか。今日は眠れない日だ。
別になにか特別嫌なことがあったわけではない。
でも特に理由もなく眠れない日がある。今日がその日なのだ。
すっかり闇に慣れてしまった目を閉じて、想像する。
部屋の天井から目を閉じている自分を眺める。
まるでお人形の家に自分がセットされているように。
どんどん視点を遠ざけていく。
Google Mapでマウスホイールを下へ転がしていくように。
ゆっくり、ゆっくりと。
自分の部屋から出て、隣の部屋が見えてくる。
まるでおもちゃの人形みたいにベッドに寝かされた隣の人を想像する。
上の階の人。下の階の人。アパート全体。周辺のアパート。
そして街全体へ。
空を飛んでるみたいに街を眺める。
光がキラキラして綺麗だ。
街灯、車、コンビニ、そしてぽつぽつと光っているマンションの窓。
なんだ。
みんながみんな寝ているわけじゃないようだ。
大きく息を吐いて、目を開ける。
少しだけカーテンを開けて、向かいのマンションを見る。
もはやどこが窓でどこが壁なのか分からないほど暗く染まったマンションの外壁の中で、カーテンの隙間からうっすらこぼれる光を見た。
もしかして、あの人も眠れないのかも。
そう思うと、その光から伝導するほんの少しの熱が自分の中に入りこんで、ちょっぴり暖かくなった気がした。
今日は僕もまだ眠れなそうだ。
しかたがない。
部屋に明かりをつける。
僕の部屋のこの明かりも、眠れない誰かを暖めることを想って。
今日は眠れない夜の一員となって、この街をほんのちょっぴり暖めよう。