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それぞれのドラマ

朝早くの電車に、野球のユニフォームを着た少年たちとお母さんが大量に乗ってきた。

時刻はまだ午前7時。

人が少ないことを理由に、少し早めの電車に乗っている僕は、正直この人たちをよく思っていなかった。


しかし、同じユニフォームを着た子供たちが母親と一緒に電車に乗ってくるのはどういう事情があるのだろうか。

ただの練習試合なら、わざわざ集まって集団で電車で移動したりはしないだろう。
もしかしたら、大切な試合なのかもしれない。
だからこそ、こんなに朝早くからわざわざみんなで集まって移動しているのではないか。

ユニフォームの背中に、ここから遠く離れた地名が書かれていることに気づく。

ああ、そんなに遠くからこの朝早い時間にみんなで集まってきたのか。
どうりで眠そうな子もいる。
母親もお弁当を用意したり、子供の準備をしたりと大変だっただろう。


人にはそれぞれのドラマがある。

嫌味ばかり言ってくる友人にも、会社で怒鳴ってくる上司にも、みんなそれぞれが主役の世界を生きている。

人の言動にムッとしたときは、その人の背景を想像してみると、少しだけ心が落ち着くかもしれない。

人の行動にはそれなりの理由があるはずなのだ。


今朝の電車でも、気づけば、母親の気苦労に共感し、子供の活躍を願う自分がいた。

少年たちのストーリーも全部が全部僕の勝手な想像だけれど、少年たちにムッとしたまま電車に乗り続けるよりもはるかに気分がいいことは間違いない。

今日は曇りで暑すぎもしないから、試合もやりやすいだろう。
5分前の自分からは想像もつかなかったが、この子たちの活躍を勝手にお祈りした。

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