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治療院の人事戦略について 2025.01
大転職時代の到来
一般的には10年ほど前から人材の流動性は上がりつづけていますが、治療院ではグループ院中心の大量採用が2010年代後半~2020年前半に起こり、いよいよ、この方たちの転職が盛んになってきました。
ある意味、グループ院のポジショントークとして、"人が辞めない会社"が"良い会社"とされてきました。
採用数>離職数になりますから必然的に離職率は低くなります。離職率はネガティブなKPIとして見られ、私たちもその考えに基づいた取り組みをしてきました。しかし、採用が高止まりすると、そうもいかなくなります。
例にもれず、私たちの会社も離職率が徐々に高まってきました。
また、社員に長く働いてもらうことの難しさも増しています。
新卒から定年まで勤める人は20%未満
あるデータでは、新卒で入社した会社に定年まで勤める人の割合は男性で約32%、女性で約6.5%。男女合わせると19.25%程度です。
これは1970年以前に生まれた世代のデータで、年功序列や終身雇用が当たり前だった時代でもこの数字でした。今後はさらにこの割合が低下し、新卒から定年まで同じ会社で働く人はますます少なくなるでしょう。
特にセラピストのような専門職では、新卒から定年まで勤めるケースはごくわずかだと思います。
入れ替わる「商品力」と採用の難しさ
治療院経営において、「人」はそのまま「商品」であり、サービスの質と直結します。社員数が商品数や売上に直結する一方で、社員の入れ替わりは避けられません。
採用数が離職数を上回っている間は社員数は増えますが、その社員が定着するとは限りません。社員数の維持や採用の難しさは、年々高まっているのが現実です。さらに、有資格者の数も減り続けているため、採用のハードルはこれからも上がっていくでしょう。
経営者と個人の視点の違い
経営者としては「長く働いてほしい」と願いますが、個人としてはさまざまな経験を積みたいと考えるのも自然なことです。
ただ、転職を繰り返すことが本当に自分の成長や理想のキャリアに繋がるのか、という点は一度立ち止まって考える価値があるかもしれません。
もちろん、経営者としては、社員が「ここで長く働きたい」と思える環境づくりを考えることが大切です。そのためには、組織の成長段階ごとに役割や成果、求めるスキルを明確にし、適した人材を迎え入れる体制を整えることが必要です。
適材適所の重要性
どのポジションにも器用に対応できる人は決して多くありません。それぞれの得意分野や個性を活かし、適材適所の配置を心掛けることが大切です。
また、社員が新しいスキルや役割に挑戦できるような環境を整えることで、組織の成長と社員の成長を両立させることができるでしょう。
これからの人事
変化が激しい時代だからこそ、社員が安心して成長できる環境を整えることが求められます。
柔軟なシフト制の導入: 業務の繁閑に応じたシフト調整や、家庭との両立を考えた働き方の工夫。
社員の声を大切にする: 定期的な意見交換や1on1ミーティングの実施。
定着と流動性のバランス: 基幹スタッフの安定と新しい視点の導入を両立させる。
離職や定着は、時代の変化とともに捉え方が変わってきています。経営層としては、社員が長く働きたくなる環境を整える努力を続けつつ、人の流れを前向きに受け入れる柔軟さは必ず必要になってきます。
大切なのは、社員が成長し、満足して働ける環境を作ること。
社員のみんなが自分自身の未来の最善の道として、この会社でいたいと思えるような会社にしていきたいと思います。
また、色んな未来の選択肢があるのは、本当に素晴らしいことだと思います。だからこそ、一人一人が自分自身の未来に対して自分で選択してほしい。決して、無責任にならないでほしい。そう思っています。