NASAでスペースシャトルの打ち上げを観たまでの話【NASAへ】
3部作になっています。
プロローグ
恋に似たもの
いよいよツアーの日が来ました。
学生でご一緒したのは私ともう一人、他の大学の方。
あとは先生が親しくされている人々が10名くらい。
今でも何故私は声をかけてもらえたのか、謎です。
まだ社会構造を理解していない私にとって、
素敵な大人たちとの打ち上げ鑑賞ツアーでした。
今思えば、錚々たる文化人の方々とご一緒させていただきました。
某有名詩人を発掘した方、ローマ法王の前で演奏されたピアニストさん、サイババの施設でスタッフをしていた方などなど。
素敵な大人たちは、皆さまとっても無邪気で、フロリダへ向かう機内では、お医者さまは下に広がる夜景に、
『いや〜、夜景っていうのは癌とそっくりなんですよねぇ!』
と、明るく話し、
佐治先生は、
『みんな!見て!今ね、窓についた水滴が結晶化してるでしょ!美しいよねー!』
と明るく話し、
どうやら大人の修学旅行に混ぜて頂いたようでした。
そんなこんなで、フロリダへ着きました。
まずはNASAの観光ツアーへ。
因みに、ご存知の方もいるかもしれませんが、打ち上げはフロリダ州オーランドのケネディ宇宙センターで行われ、その後の通信はテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターで行われます。
そんなNASA。
広い。
めっちゃ広い。
観光バスの横を、職員の方が車で通り過ぎました。
真っ白なオープンスポーツカー。
金髪を風になびかせ、サングラスをかけた女性。
めっちゃかっこよかった。
ていうか、ものすごいスピードで走ってました。広いし、公道じゃないし、まあ、もっと早い乗り物に乗る人たちの場所ですしね。
どれくらい広いかというと、バスの中でガイドさんが、
所々にある沼にはワニがよく居ますのでお気をつけ下さいねー、とか、
あ!あそこの池にはマナティーがいるんですよー!
とかお話ししながら敷地内を走るという、
そして地平線の先には時々、スペースシャトルの打ち上げ台がポツリポツリと現れ、まだスペースシャトルがついていないものや、しっかりついているものがある、そうそれがNASAの風景なんです。
大自然と、人工物のギャップが多分世界一です。
あんまり観光の記憶が無いのはおそらく時差ボケしていたかなと思います。
建物内で何を見たかは、漫画『宇宙兄弟』を読んで思い出したくらいです。
確か一通りの観光を経て一旦ホテルに戻りました。
さあ、打ち上げに行きましょう。
諸々準備万端で向かった打ち上げは、夜の打ち上げでした。
これがまた難しくて、打ち上げは、とっても繊細なミッション。ひとつでも不具合が見つかったら延期や中止になります。天候とも睨めっこです。
私の記憶が正しければ、確か一日延長となり、翌日の夜の打ち上げだったと思います。
佐治先生はNASAの研究員なので、おそらく私たちは観光グループというよりは身内グループの観覧席で(外に組まれたスタンド席的なものだったと思います)打ち上げを見させて頂きました。
現地に行ってからも、不備が見つかる度に延長。
何度もカウントダウンのアナウンスが流れては止まります。
佐治先生は、
『打ち上げは夜の方が美しいんだよ!
打ち上がったらね、真面目に観ると目が潰れちゃうから、チラッチラッて見るんだよ。光が落ち着いたらゆっくり観てね。するとね、後から音が来ますから!音が後からっていうのがいいでしょう!遠いからです。』
と、みんなに説明してくださいました。
なるほどー。と思っていたら、事前にその話を聞いた方は、録音用のレコーダーを持ってきていて、音を録ります♪という方もいらっしゃるほどでした。
そしてもう夜が明けそうな頃に、いよいよ本当のカウントダウン!
スリー…ツー…ワン…ゼロ!!ゥオアウアーー!イェーイ!!!
とみんなで叫んだ瞬間に、なんと陽が登りました。夜明けとともに発射!!
と思ったんです。
それは、スペースシャトルの発射の光でした。
NASAに夜明けを引き起こすほどの明るさ。
その後、その光は段々空へ登って、彗星のようになり、星のようになり、キラッと消えていきました。
ニュースで見る、シャトルに寄った映像では分からない光景です。
シャトルとその周りの景色。
そして明るすぎて、いいカメラでも綺麗に写りません。
肉眼で観た景色が、再現できないのです。
この瞬間わたしは、人間はこんなものを作ってしまったのかと思いました。
太陽くらい明るいもの。
それをわたしは、スペースシャトルという形で観た。
でも人によっては、ピカドンだったんだ、と
直感的に感じました。
そしてこれからも、出来ればこういう形で観たいものだなと。
打ち上げの美しさと共に、危うさを感じてしまったのです。
『ほらほら、音が来ましたよ!』
佐治先生の声で我に帰りました。
そんなに大きな音ではないのですが、地響きのような音が後から聞こえてきました。
生きたままお空の星になっていく人を、初めて観た体験でした。(そして勿論地球に帰ってくるわけです)
今でもご活躍されている若田光一さん。
爽やかな笑顔でいつも画面に写っていますが、
太陽のような炎の中で宇宙まで飛んでいく、すんごい人です。
夜のスペースシャトルの打ち上げという、怖いくらい美しい景色を生で観て、感じられて、とっても光栄でした。
人間の力が、どうか平和のために使われて欲しい、と、肌で感じた体験でもありました。
佐治先生にぞっこんになった私は、その翌年、モンゴルへ皆既日食を観に行くことになります。
そのお話は、またいつか。
【完】
追記
ちなみにこのヘッダー写真のような距離で打ち上げを見れる事はありません。これは素材写真です。
何キロも離れた所にしか人間は入れず、メディアのカメラだけリモートで近くに置いたりするらしいです。今はもっとハイテクにリモートしてると思うのですが、当時はカメラは焼ける覚悟で近くに設置する感じでした。
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