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【悪夢の島で最悪なヴァカンスが始まる】映画『インフィニティ・プール』感想

これぞまさに『The 悪趣味映画』

清々しいまでの悪趣味映画だった!

監督は本作が長編3作目となるブランドン・クローネンバーグ
これまでもセレブの掛かったウィルスをマニアに売りつける『アンチヴァイラル』や、人の意識を乗っ取って暗殺をさせる『ポゼッサー』などアブノーマルなテクノロジーを題材にした映画を撮っている監督だ。

父親は『スキャナーズ』、『クラッシュ』など数々の傑作で知られるデヴィッド・クローネンバーグ。
父親は"鬼才"、"変態"という通り名で呼ばれているが息子のブランドンのビジュアルや題材も父親譲りといえる。

そんなブランドン・クローネンバーグ監督、映像以上に内容がエグいので自分は観るたびいつも引いてしまう。

「何でそんな悪趣味な映画を見てるの?」と突っ込みが入りそうなところだか、その点に関してはこう答えたい。

とにかくビジュアルが好き。

下記の画像のようなキレキレのビジュアルがツボに刺さりまくる。
もしアナタがこの画像を見てピンときたなら本作は是非お薦めしたい(ただしエログロ描写もあり)。

こうしたビジュアルがツボならお薦め!(左上から右周りに『アンチヴァイラル』、『ポゼッサー』)

本作の舞台は高級リゾート地として知られる孤島。
この島には観光客向けにとんでもない法律が存在した。

『罪を犯しても自分のクローンを作らせて身代わりにできる』

主人公のジェームズは6年間、新作が書けていない小説家。
妻とバカンスでこのリゾート地を訪れる。バカンスを楽しんでいたジェームズだったが、誤って車で島民を撥ねてしまったことから悪夢のバカンスが始まる…といった内容。

そもそもこの島、過失とはいえ人を殺したら死刑というかなりキツい法がある。まさに「目には目」

4月6日にヒューマントラストシネマ渋谷で鑑賞してきました。
客入りは8割ほど、老若男女さまざまなお客さんがいた。

普段、愛知県で映画を観ているけど、こういうタイプの作品でここまで賑わってる劇場はなかなか見たことない。こういう時に東京と愛知の差を感じてしまう。

※これより以下は作品の具体的な内容に触れています。気になる方は鑑賞後にお読みください。

2023年製作/118分/R18+/カナダ・クロアチア・ハンガリー合作

「アブノーマルなハイテクノロジー」に「閉じた世界」、ブランドン監督は一貫した作風の方なのだろう。どの作品にも共通した題材、演出が多い。

映画冒頭の天と地がひっくり返る演出は『ポゼッション』でも使用されていたが、今作で言えば「これからこの世の理がひっくり返るぞ」というような始まり方で気分を煽ってくれる。

サイケな映像が連続するカットも『ポゼッション』と共通している。こうした劇中の演出などは相変わらず格好良い。

この気持ち悪い仮面とか最高に格好良いよね

本作はジェームズにとって最低最悪の地獄体験。

金持ち達の醜悪なヴァカンスに巻き込まれたジェームス。自尊心は失われ身も心も徹底的に玩具にされてしまう。あの手慣れた感じ、多分彼らは毎年からかい相手を探しているだろうな。

ネットの拾い画像。要はこの映画はこうなんですよ。

最後まで観終わってなかなか意地が悪いし胸糞な映画とも思った。
というのも、この映画徹底的にカタルシスが排除されている。

堕ちるとこまで堕とされたジェームスのリベンジ的展開がある訳でもなければヒロイック的な要素も無縁。
最後の最後までジェームスが可哀そうな目に遭うだけである。

特筆すべきはミア・ゴスの怪演。

ミア・ゴスの出演作品を全然観ていなかったのだけど、気づいたらおかしな役では定番の人になっていたんだね。確かにこの顔面はインパクト大だわ。吹っ切って演じてるのが最高。

一時期の香川照之を思い出す顔芸っぶり。

ブランドン監督、いつも奇抜なアイデアをそこまで活かしてる印象がなかったのだけど、ハイテクノロジーのアイデアを活かしきるというよりはそれによって変貌する人間の姿に着目してることに3作目にしてようやく気付いた。

この映画も、身代わりクローンを作るという設定も面白いけど、奇抜な設定と人を掛け合わせるとどうなってしまうのかってとこに焦点を当てている。

ジェームスの最後の行動をどう捉えるかは人それぞれだろうけど、自分はすべてを失った男が本当の意味で自分を見つめなおそうとしている行動に思えた。

そういう意味でジェームスにとって、このバカンスは生まれ変わりの場所だったのかもしれない。

パンフレットと入場者特典の仮面。パンフレットの装飾はめちゃ凝っててGood!


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ヴィクトリー下村
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