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【ちゃんと生きるのって難しい】映画「時々、私はかんがえる」感想

何で自分は皆のように振る舞えないんだろう

そう思ったことがある人には何かしら刺さるかもしれない。そんな映画だった。

『時々、私はかんがえる』はオレゴン州のアストリアを舞台に1人の女性の成長を描いた人間ドラマだ。

「スター・ウォーズ」シリーズのデイジー・リドリーが主演、プロデュースをつとめる。監督は2023年インディワイヤー誌が発表した注目の女性監督28人にも選出されたレイチェル・ランバート。

2023年製作/93分/G/アメリカ

往年の名作『グーニーズ』と同じアストリアが舞台ということで、映画ファンには懐かしい気持ちになる人も多いだろう。
そんなアストリアが舞台の本作は愉快な冒険譚ではなく静かで美しく孤独な物語。

本作の主人公、フランは引っ込み思案な性格をしている。
皆が和気あいあいとしている時でも少し引いたところにいる。皆みたいに自分をさらけ出すことができないからだ。

こういういたたまれない、分かる人には分かるのでは。

そんなフランの日常は職場と自宅を行き来するだけという質素なもの。
場面の合間に映し出されるアストリアの町は、とても静かで不思議と住民の姿は映らない。自分には孤独なフランの心象風景と重なっているようにも感じた。

波音立てない湖面のように静かで穏やかだったフランの日常はロバートとの出会いをキッカケに波紋が広がるように変わっていく。

自分も人前で自分をさらけ出すのが苦手な性格なので(自分を見せることが恥ずかしい)、フランに共感しながら鑑賞していた。

フランが自分をさらけ出せないのは自己肯定感が低いから。それは必要以上に自分を卑下した発言からも伺えること。

そしてその原因は恐らく家庭環境にあるのだろう。
劇中、母親からの着信を無視している場面からも家族との仲は良好ではないように思える(スマホを確認もしていない辺り、常習的なんだろう)。

ただし劇中ではそこを掘り下げることもしない。
個人的にはその描き方も良かった。原因がどうかより今が大事だと言ってるような気がしたから。

フランの行動を変えるキッカケとなるキャロルとの再会。
キャロルの言葉が重い。

「素敵な空想だとしても現実じゃない」

これもフランと同じで、自分も空想しがちなところがある性格(といってもフランのような死への空想ではないが)だからこの言葉は地味に刺さったな。
キャロルが言うとおり「ちゃんと生きていく」ってとても難しいのだ。

フランを演じたデイジー・リドリーも良かった。
デイジーって眼力が強いというか、いつも気を張ったような表情をしているから心を閉ざしてるフランというキャラクターとよく合っている。

デイジー、大作映画のイメージが強かったけどこういうミニシアター系作品にも出演していって欲しいな。

こういう場面ひとつ取っても大作映画の主演とは全く別の佇まいをしてる

ラスト、これから先どうなるかは分からない。
だけどフランにとっては新たな始まりの一歩、自分の殻を割った先に何があるのか、できれば希望であって欲しい。

ちなみに原題知らずに観ていたからタイトルバック出た時は驚いた。
これ邦題と原題でだいぶ印象が変わるね。もしまだ未見でこれから観る予定の方はぜひ原題を調べずに観て欲しい。

『時々、私はかんがえる』は7月26日より全国の劇場で順次公開中。
気になる人は是非チェックしてみてね。

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ヴィクトリー下村
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