【暗黒青春ファンタジー?】映画『オアシス』感想
清水尋也と高杉真宙がW主演を務め、危険な裏社会に生きる若者たちの青春を描いた映画『オアシス』。
鑑賞していく内に印象の変わっていく不思議な映画だった。
冒頭こそまさにノワール、ピンと張り詰めた空気に背筋がゾクッとする。
「雰囲気良いね~」と思って観ていくと伊藤万理華演じるヒロインが登場した辺りから緊迫感はどんどんゆるくなっていく。
謎だらけの彼らの関係や過去が明かされるにつれ、映画の雰囲気も感傷的なものに変わっていく。思っていたのと違うけど、これはこれで好きな展開だな。
そう思って観てると終盤で唐突に映画がバカになる。何でそうなったのか分からないタイマン対決にギャグのような生首、何だこりゃ。
いや分かるよ。確かに映画冒頭で組長は格闘技やっていたしクスリには手を出さないという昔気質な人物だったもんね。
だからこそ清水尋也演じる富井の気持ちを汲んで、タイマン勝負をしてくれたんだよね。分かるんだけどすんなり受け入れられなかった。
鑑賞中は唐突過ぎて「?」ってなってしまった。もう少し富井と組長の交流みたいなものがあれば違ったのかも。
最後まで観終わってみると場面ごとでは楽しめたものの余りにも統一感が無さすぎる。
この作品のリアリティの軸はどこに設定してあるんだろう?
冒頭のリアリティある雰囲気から終盤のマンガ的展開は監督の構想通りなのか?など色んな疑問が湧いてしまった。
後、この映画、喫煙シーンが格好良いのだが、観ている内に違和感も抱いてしまった。(これはこの映画が悪い訳ではない)
これだけ嫌煙で若い人が煙草を吸わなくなってしまった今、喫煙=格好良いというのは時代錯誤なのかもしれない。
もしかしたら映画はタバコに変わる格好良いといえるシーンを生み出さないといけない時にきてるかもしれない…そんなことも考えてしまった。
批判ばっかの感想になってしまったが、映画の映像や雰囲気はとても良かった。正直、清水尋也と高杉真宙も線が細すぎてあまり裏家業の世界の人間には見えないんだけど、2人が美しく撮られているので2人のファンなら特に満足するかも。
岩屋拓郎監督は今作が初長編とのことなので、今後どういう方向性にいくのか、次回作がどんな作品になるのか楽しみである。