【誰だって負け犬になるため生まれてきた訳じゃない】映画『ライオン少年』が素晴らしい!
日本の獅子舞とは大きく異なる「中国獅子舞」。
それは踊り、音楽、武術が一体化し古来より受け継がれてきた中国の民間芸能だ。
そんな「中国獅子舞」に魅せられた少年の成長と奮闘する姿を描いた映画『ライオン少年』。
この作品、元々は去年開催された「電影祭」という上映されていた。
そこで観た人が絶賛しているのを見かけたし、その年の年間ベスト1位にこの作品を挙げてる人もいて気になっていた。
今回、実際に観ることができた訳だが納得。
これは多くの人の心に刺さることだろう。
『ライオン少年』という作品を大まかに説明すると、
ボーイミーツガール×スポ根×負け犬の逆転劇
と熱くなる要素が幾重にも織り重なった物語。
獅子舞大会を目指すチュンに数々の苦難が襲い掛かる。押しつぶされそうになりながらもチュンは決して挫けない。
こんな物語見せられて熱くならない訳がない。
今年公開された作品の中でもダークホース的な作品だと思う。
万人に強くお薦めしたい。
これより以下は、より詳しい内容を感想を交えながら紹介していきます。
鑑賞を迷ってる人は是非本作を見て欲しいし、気になった人も良ければ読んでいって欲しい。
主人公は自他共に「負け犬」と認める少年チュン。
チュンは両親が長いこと出稼ぎにいっており、祖父と2人暮らし。
貧しい日々を過ごしており、身体も痩せっぽちで自分に自信もない。
物語はそんなチュンが獅子舞使いで同名の少女チュンとの出会いをキッカケに、同じ負け犬仲間のマオ、ワン公とともに獅子舞大会の出場を目指す…というあらすじ。
話は王道かつ普遍的。
いわゆる「負け組」の逆転劇だし、夢を追い掛ける若者の物語でもある。
また大会を目図すという意味ではスポーツ映画ともいえる。
しかし彼らの道のりは順風満帆ではない。とりわけチュンの前には数々の苦難が襲い掛かる。
その苦難は凄まじい。
ここまでイジメるものかと思わず手に力が入ってしまう。自分がチュンならきっと夢を諦めてしまっただろう。
だけどチュンは決して諦めない。
チュンの叫びがスクリーンを超えて私たちに突き刺さる。
「いじめられるために生まれてきたわけじゃない!」
「僕らには一度のチャンスもないのか」
本作は生きることを肯定する映画だと思う。
劇中チュンが何度も神に祈る場面が出てくる。
だが、奇跡を待つものじゃない、起こすものなのだ。
似たようなテーマの作品はこれまで何本も見てきたが、見せ方一つでこんなに心に響くものだということにも気付かされた。
そもそもチュンの両親が共に出稼ぎで帰れない現状も日本だとあまり考えられない状況いえる。本作は中国の悲惨な社会格差も描いている。
境遇こそ悲惨だが物語の雰囲気はむしろ明るい。
ギャグとシリアスの使い分けが絶妙で、日本の漫画やアニメと変わらないノリなので物語にも入り込みやすい。
チュンを始めとするキャラクターたちも一人一人が愛おしい。
少年3人組もキャラがそれぞれキャラが立っている。自分は吹き替え版で観たが山口勝平さんの安定感が流石だった。
師匠となるチアンのキャラが掘り下げられているのも良い。
チアンはかつて獅子舞の名手だったが、獅子舞で稼いでいくことができずに結婚を機に干物魚の経営者となっている。
現実では夢で生きていくことを諦め地に足のついた生活を送ってる人は多い。チュンではなくチアンに感情移入する大人はきっと多いんじゃないかな。
各キャラクターの関係性の描き方も良い。
自分が好きだったのはチュンと少女チュンの関係性。ドラマチックな出会いと淡い恋心の顛末はとても現実的だし今っぽいと感じた。
後、チュンのことを散々馬鹿にしていた村の獅子舞グループ。
正直、序盤はこいつ等に腹が立って仕方がなかったが、最後まで観るとその思いも変わった。この映画、根っからの悪人が登場しないのも好きなところだ。
そして何より獅子舞の軽快かつダイナミックな動きに魅了される。
映画を見終わった後にYouTubeで中国獅子舞が実際に動いてる動画を何本か見たが、映画と比較しても動きがよく再現されていることが分かる。
中国獅子舞は元が獅子だけあって猫っぽい動きが合間に見えるところが可愛い。顔も日本の獅子舞より可愛いくて好きだな。
大手のアニメーション会社に対して製作期間は短いらしいが、獅子舞に関する部分や獅子舞大会の部分は迫力十分。縦横無尽に動くさまを観ているだけで楽しい。
ということで『ライオン少年』、SNSの反応などを見るにあまり注目されてないのが残念だが、本当に万人にお薦めできる作品だしお薦めしたい作品です!気になる人は是非ともチェックしてみてね。