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【193分の摩訶不思議体験】『セリーヌとジュリーは舟でゆく』感想

公園のベンチで魔術の本を読んでいたジュリーは、落とし物を届けたことから自らを魔術師と名乗るセリーヌと知り合いになる。成り行きで共同生活が始まった2人はあることから郊外の屋敷で起きた事件と直面することになる。不思議な屋敷と謎のキャンディので現実と幻想の世界を行き来しながら、その謎に迫っていく…

『セリーヌとジュリーは舟でゆく』は、フランスのジャック・リヴェット監督が1974年に製作した作品だ。筆者はこの作品と不思議な縁がある。

今から数年前、映画好きの友達が突然「この作品と観て欲しい!」と連絡してきたのがこの作品だった。何でもその友達が、知り合いの映画好きからお薦めされて借りた作品らしいのだが、友達は長尺の映画が苦手だったので、筆者に代わりに観てもらい、その感想を教えて欲しいというのだ(色々ひどい話だ)。

1974年製作/193分/フランス

という訳で筆者が観ることになったのだが、本作は193分と3時間超えの長尺。上映時間が長い作品に抵抗はないが、それは劇場で観る時の話に限る。

家などで観ると長尺の作品は集中力が続きにくい。加えて自分が観たいと思っていた作品でもないため、当時は自分もぼんやりした感想を伝えたことを覚えている。

そんな訳で、すっかり忘れかけていた頃に『ジャック・リヴェット映画祭』が開催されるということで、この映画の存在を思い出したのだった。

鑑賞したのは名古屋シネマテークの5月31日の回。
観客数も7~8割は埋まってた印象

という訳で、何年か越しに再鑑賞した訳だが、改めて見ると本作は何とも自由で不思議な魅力に満ち溢れている。冒頭の2人の追いかけっこからして不思議な魅力があり、全編ふざけてるのかと思うくらいの自由っぷり。

ジャック・リヴェットの作品は他に観たことがないが、ヌーヴェル・ヴァーグ期の作品ということもあって、こうした作風なのだろう。筆者は観てて日本の2000年頃の漫画(アフタヌーン系)の雰囲気を思い出していた。他の方のレビューでも本作を「ライトノベル」と評していた方がいるため、日本のポップカルチャーを連想した人も少なくないのではないだろうか。

個人的にツボだった場面
まるで観客と向き合ってるみたいな構造が面白い

そう感じたのは、本作全体から感じられるPOPさ。全編漂うコミカルな雰囲気が漫画やアニメっぽくあるし、小道具や色使いも柔らかい。サイケデリックな展開と演出だが刺々しさはない。

『セリーヌとジュリーは舟でゆく』は、70年代の作品ということで、この時代にそうした雰囲気を纏った作品があると思うと驚くし、自分がまだまだ知らない世界があるということも思い知らされる。

本作の魅力は摩訶不思議な展開にあるが、世界観の可愛らしさも大きな魅力だ。特にセリーヌとジュリーの2人が常に本当に楽しそうに笑っているのが良い。観てると、こちらの顔もつられてにやけてしまう。

ここら辺の悪ふざけ感が最高に楽しかった

193分という長尺もあってか、中盤はダレてしまったが本当に楽しい作品だった。本作もできればもう一度改めて観たいし、これを機にジャック・リヴェット作品を掘り下げようと思うのだが、配信もないし既にソフトは販売終了してるのが残念。今回の上映を機にDVDなども再販して欲しい。


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ヴィクトリー下村
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