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【あの帽子の行方を探して】映画『SUPER HAPPY FOREVER』感想

絵画のような映画だと思った。
映画『SUPER HAPPY FOREVER』は、妻を亡くした男の現在と亡き妻との出逢いの日を描いた物語だ。

予告編の印象から感傷的な話かと思っていたが、構成や演出が凝っていて物語自体も面白い。映画の前半は妻を失った夫の現在パート、後半は2人の出会いを描いた過去パートという構成になっている。

2024年製作/94分/G/日本・フランス合作

疑問が生じる現在パートを過去パートで答え合わせしていくような演出が面白い。点と点が線で繋がっていく感覚。加えて2つの時間軸を見せることで登場人物の掘り下げになっている点も巧い。

例えば主人公の佐野は現在パートだけ見ると自暴自棄で危うい人物だ。
タクシーの座席を蹴っ飛ばしたり、宮田の指輪を捨ててしまうなど良いとこなしだが、過去パートを見るとだいぶ印象が変わる。

宮田も現在でこそスピリチュアルなセミナーにハマっているが、過去パートを見ると何故そうなったのかが察せられるような台詞もある。この映画、劇中で描いていない部分を想像で補完させるのが上手い。

過去パートを経て再び現在パートに戻るが、そこで描かれるのは「辛い経験をしたけど前を向いて生きていこう」という立ち直りや再生を表した終わり方ではないし、何やかんやあって少し元気になりましたという着地でもない。

劇中で描かれるのは変わってしまった現在と過去の美しい思い出。
あくまでもそれだけ。そこには一種の無常感さえ漂っている。
「では自分は何を見たのだろう?」と考えてみると、それは一種の情景のようなものかもしれない。

完璧ともいえる美しい時間。
観る人によってはそこに自分の過去を重ねるかもしれないし、もしくはそこに憧れを見出すかもしれない。自分はどちらかというと後者に近い。

赤い帽子もそうだが、結末も内容も受け手にかなり委ねている作品だと思う。

五十嵐監督はパンフレット内のインタビューで「幸せな瞬間は永遠に失われない。それはいつだって蘇ってくる」と語っている。

美しい過去の一日を琥珀のように永遠に閉じ込めている、何かに進むタイプの物語ではない。そういう意味で物語というより絵画やアートに近い映画だとも思った。

正直、演出が巧み過ぎてあざとさすら感じてしまったのだけど、とても良い作品だった。五十嵐耕平監督、今作が初見だったけど過去作などもチェックしてみたい。

ちなみに今回、この作品を観るために刈谷日劇に訪れました。
初めて訪れた劇場だけどラインナップがかなり好み!地理的になかなか行けない劇場だけど、気になる作品があったらまた訪れたい!

刈谷日劇。刈谷市駅のすぐそば。
エレベータのドアが開いたらポスター貼ってあって一気にテンションが上がる。

後、ちょうどお昼時にいったということで、せっかくなので劇場近くの飲食店に寄ろうとして近くの中華料理屋に行ったんだけど、ここの担々麺が凄い美味しかった!

実は担々麺は機会があれば色んなお店のを食べてるくらい美味しい担々麺を探してるんだけど、このお店は今年食べた中では一番好きだった!

味は今までの担々麺でも一番クリーミー。(ラー油の瓶がついてくるので、それで辛さ調整ができる)正直、クリーミーな担々麺ってそこまで好みじゃなかったんだけど、そんな考えを覆するくらい美味しかった。
このお店のために刈谷市駅を訪れるのもありかもしれない。

担々麺の写真。お店の方の対応もとても丁寧で良かった!

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ヴィクトリー下村
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