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【狂気の様式美をご覧あれ】映画『マッドマックス フュリオサ』感想

5月31日より公開中の『マッドマックス フュリオサ』
2015年に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚にあたる作品で劇中に登場した女戦士フュリオサの生い立ちが描かれる。

あの大傑作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の新作!しかも主演が今をときめくアニャ・テイラー=ジョイとくれば期待せずにはいられない。今年一番楽しみにしていた作品だ。公開日初日にイオンシネマ大高で鑑賞してきた。

2024年製作/148分/PG12/アメリカ

先に言っておくと本作は『マッドマックス 怒りのデスロード』のスピンオフだが、作品のテンポやトーンは『怒りのデスロード』とは異なる

『デスロード』のように観る者を怒涛の勢いとテンポで巻き込むのではなく、女戦士フュリオサが誕生するまでの物語がじっくりと描かれる。

そもそも前作は3日間の出来事に対し、今作は15年間もの歳月が流れている。同じテンポで描くという訳にもいかないだろう。

作品に漂うトーンなど1作目の『マッドマックス』が一番近い雰囲気だと感じた。

作品のテンポこそ違うが世界観は「デスロード」そのもの。

フュリオサを始め、小悪党のディメンタスにイモータン・ジョーやウォーボーイズなど、シリーズお馴染みの狂ったキャラクターたちも登場。

漫画『北斗の拳』が『マッドマックス2』からオマージュを受けたのは有名な話だが、マッドマックスはキャラクター造形が抜群に良い。

ウォーボーイズ、本作では仮面ライダーにおけるショッカーやスターウォーズにおけるストームトルーパーみたいな存在感。

そしてマッドマックスといえば、メカニックデザインとアクションの凄まじさも魅力の一つ。
「効率化」という言葉とは無縁の最高に頭の悪そう(誉めてます)なデザインのメカニックは今作も健在。車関連のアクションはどれも観てるだけで引き込まれる。

自分が一番好きだったのはウォータンクの襲撃シーン。
次々と訪れる敵のギミック含め「これどうやって撮ったの?!」って思うような狂った場面のオンパレード。それまでの流れから一転、一気にエンジンが掛かったと思った。

ディメンタスが乗ってるどう考えても効率的じゃない乗り物も最高(ちなみにディメンタス・チャリオットという名前らしい)。

物語はフュリオサの復讐譚として誠実に描かれていると感じた。フュリオサとディメンタスとの数奇ともいえる因縁、フュリオサの強さのルーツも突然発生したものではなく培われてきたものだと分かる。

怒りを溜めて溜めて「アイツ絶対殺す!」となる展開はシリーズの中でも1作目の雰囲気に近いと感じた。

フュリオサを演じたアニャ・テイラー=ジョイはシャーリーズ・セロンとは違うが眼力が印象的でフュリオサそのもの。面白いと思ったのはクリス・ヘムズワース演じるディメンタスのキャラクターだ。

マッドマックスに登場人物たちって頭のネジが外れた人物たちが多いのだが、その中でもディメンタスはイカれきれてない小物感がある。そこが人間臭い。

パンフレットによるとディメンタスの衣装は独裁者と宗教の教祖をミックスしたとのことだが、カリスマ性をもちながら空虚な人物像にピッタリだと思った。しかしディメンタスのデザインってアベンジャーズのソーと似てると思うんだけど敢えて?

警護隊長のジャックとフュリオサとの関係性も良い。
どちらも寡黙なんだけど目線だけで通じ合っているのが良いし何も言わなくてもお互いのために命を懸けて助けにいくというところが渋いし格好良いのだ。

ジャック、個人的にはもうマックスじゃん!って思ったな。

今回、改めて思ったのが「マッドマックス」はジョージ・ミラーの美学が詰め込まれた世界だということ。

イカれたキャラクターやメカニックに復讐劇。シリーズの世界観は一つの様式美になっているしこの唯一無二さ加減が最高。

正直、『怒りのデスロード』のようなノリを期待すると肩透かしを喰らうかしれない。それでもこの狂った世界を再び味わうことができて自分は満足。

また『怒りのデスロード』の前日譚としても文句なしの作品だと思う。
本作を観ると『怒りのデスロード』を観たくなるし、キャラクターもより感情移入して観ることができる。気になる人は是非ともチェックして観て欲しい。

この子役の子、アニャに似てる子を揃えたなと思ったけど、実はAIでアニャの顔を混ぜているということ!凄いし面白い試みだけど賛否両論分かれそうな演出でもある。


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ヴィクトリー下村
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