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【この世は不安と怖いモノだらけ】映画『ボーはおそれている』感想

まさに3時間の悪夢。

『ボーはおそれている』は2月16日から公開されている映画だ。
監督は日本でも話題となった『ミッドサマー』、『ヘレディタリー 継承』のアリ・アスター監督。主演『ジョーカー』などで知られる名優ホアキン・フェニックス。

アクの強い両者がタッグを組んだということで公開前から話題になっていた作品だ。自分が鑑賞したのは公開初日のレイトショー。116席に対し客入りは7割程度、男女比は6:4くらい。

大学生くらいのグループがきていて「いや~来たくなかったのに来ちゃったよ」と呟いていたのが印象に残った。

前2作で「トラウマ製造機」という印象を与えたアリ・アスター監督だけに、こういう「怖いものみたさ」で観たお客さんも少なくないだろう。
実際、自分もそうだった(だからこそ情報が出始める前に観たかった)。

そんな本作だが、前情報の段階で何となく「悪夢を詰め込んだような内容なんだろうなぁ」と思ってたら誇張無しにそんな内容だった。

観たのはミッドランドスクエアシネマ2。女性客が多いのが意外だったけど『ミッドサマー』って女性人気高いイメージあるね。

これアリ・アスター監督が「起きたら嫌だなと思うシチュエーション」をひたすら詰め込んだだけじゃないかな。

アリ・アスター監督、実売インタビューで下のようなことを言っている。

「観る者に負け犬の人生を追体験をさせたい」

そもそもこんなこと言ってる時点でマトモな映画なワケがないのである。

本作は『オデッセイ・スリラー』と宣伝されてるけどそれより『あったら嫌なことシチュエーション』スリラーという感じ。

ただ普通、そんなのばかり見せられたらダレるところだけど、そこはアリ・アスター作品。これが全然そんなことはない。

『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』もそうだけど緊迫感と引き込む演出が上手いのでスクリーンから目が離せなくなる。

加えてボーを演じたホアキン・フェニックスの存在感もさすが。
「アリ・アスター×ホアキン」、曲者くせもの同士の化学融合は見事に成功といえるだろう(ちなみにアリ・アスター監督の次回作の主演もホアキン・フェニックスであることが決定している)。

3時間以上、出ずっぱりなのに観客をスクリーンに引き付けるのはさすが。劇中の6割以上は怯え顔ではあるが。

想像以上のスケールにも驚かされた。本作は残念なことに興行的に大赤字らしいが、製作費が掛かっているだけあってダイナミックな映像だけでも見応えがある。

正直、3時間が「あっという間」に感じられるタイプの作品ではない。
むしろ嫌な空間をじっくり味あわされるので、観る方にとっては拷問に近い時間ともいえる。

物語に関しては謎な場面も多いため様々なこれから考察が出てくるだろう(監督は本作について語るのは数年後になるかもと語っている)。

自分は前述した通り、この作品はアリ・アスター監督のこの世に対する不安が原動力になっていると思う。(この記事の一番下に自分の感じた考察を書いています)

また描かれてるテーマはこれまでの作品と一貫している。

家族、共同体への恐怖と嫌悪感。

『ヘレディタリー 継承』、『ミッドサマー』でも「家族」を題材に取り入れてきたアリ・アスター。
今作のインタビューでも「自分にとって家族とは“終わりのない義務感”」だと語っている。

上『へレディタリー』下『ミッドサマー』

今作で顕著なのは圧倒的な母親の存在。ボーの生活どころか人生を支配下においている。本作を通して改めてアリ・アスター監督が家族を「呪い」として捉えているのが良く分かる。

正直、鑑賞前はつまらないことも覚悟して観に行ったんだけど、自分はもう一度見返してもいいくらいに好きな作品だった。

ただ本作は物好きや好事家のための作品だとも思う。

なので自分からお薦めはしません。
気になった人はチェックしてみてはどうだろう。

※これより以下は本編の具体的な内容に触れています。未見の方はご注意ください。

冒頭、出産シーンで息をしてない赤ん坊の場面から始まる。
そしてラスト、ボートが壊れボーが死んでしまった後に冒頭の母親の声が響くような場面がある。

自分は本作は取り出される際に死んでしまった赤子が死の間際に観た悪夢だと解釈したのだけどどうだろう?

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ヴィクトリー下村
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