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【そこは夢と現の境目】映画『郊外の鳥たち』感想
夢と現を行き来する。
物語というより詩を読んだ時のような感覚を覚える映画だった。
『郊外の鳥』は中国の新鋭チウ・ション監督による長編デビュー作だ。中国の地方都市を舞台に2つの時間軸が交わる不思議な物語が描かれる。
ポスターを見たときから、ビジュアルの美しさで気になっていた作品だ。
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映画は青年ハオと少年ハオの2つのパートで構成されている。冒頭、青年ハオが測量をしている場面から物語が始まる。360度辺りを見渡すカメラワークが印象的だ。
前半はハオの仕事を中心とした日常が描かれる。
説明的な台詞はないし、何をしているか分からない場面も多い。そのため観客は画面から情報を集めていくことになる。
本作のレビューを読むと「ストーリーが難解」と評したものが多いが、こうした点もその理由の1つだろう。青年パートは物語るというよりは、ハオの行動を客観的に観測をしているようでもある。
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この作品、全編通じて自分は「捉えどころがない」という印象を受けた。
最初はハオという1人の男の現在と過去が交じり合っていく話だと思っていた。しかし2人のハオが同一人物かそうでないのかも分からない。
まるで白昼夢のよう。足元がおぼつかない感覚がある。
こうした作風は好き嫌い分かれるが自分は大好きだ。
浮遊感に身を委ねるが心地良い。特に映画館という映画と向き合うだからこそ存分に味わえる体験だと思う。
心地よさにまどろんでいると、目の醒めるような展開に変わる。
それが少年ハオのパート。
青年ハオと比べると少年ハオのパートは対称的。
動きのなかったカメラは流れるように少年ハオたちの日常が映し出す。その光景は懐かしくもあり眩しくもある。
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チウ・ション監督、映画監督というより映像作家と呼べるくらい画が魅力的なのだが、それが遺憾なく発揮されているのが少年パートだ。
草原、学校、崩れかけた廃墟、鉄橋。
少年ハオを通じて映される世界は鮮やかで美しい。子供時代の瑞々しい感覚を思い出す。正直、少年パートだけで1本撮って欲しいくらいこのパートは好きだ。
監督自身の子供時代を参考にしているということもあってか、子供特有の残酷さも描かれている。
突然不登校になる少年、気づいたら仲間外れにされている少女(こちらは恐らくハオを巡る色恋沙汰のせいだろう)。
ノスタルジックさに心がくすぐられた反面、こうした子供時代の「あるある」にも共感した。少しの間に子供の世界というのは大きく変わる。子供時代の多感さも改めて感じた。
この作品を「パズルゲーム」と例えてる映画評があったが分かる気がする。
双眼鏡、測量機、水、バースデイケーキ…こうしたアイテムによって2つのパートが繋がっていく。謎解きというよりは発見に近い楽しさがある。
今作がチウ・ション監督の長編デビュー作ということもあってか、好きな監督の影響が随所に伺えるのも特徴的。
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作品全体の浮遊感がビー・ガン監督の作品っぽいと思っていたら実際に意識しているらしい。
またズームアップの多用はホン・サンスを意識していることなども明らかにしている(他にもアピチャッポン・ウィーラセクタン監督など)。
個人的にはチウ・ション監督ならではと呼べる作風が観たかった気持ちもあるが、それはこれからだろう。
様々な監督の影響をどう消化し作品に活かすのか、今後の作品にも期待したい。
しかし、ビー・ガン監督やディアオ・イーナン監督など今の中国の監督は魅力的な映像を撮る人が本当多い。これまで中国映画は追っかけてなかったけど、これから本格的にハマっていこうかな。
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