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【ウェス・アンダーソン流アメリカへの郷愁】映画『アステロイド・シティ』
50年代のアメリカ、南西部の砂漠の架空の街「アステロイド・シティ」。
隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所となっている街に、科学賞を受賞した5人の少年少女とその家族が招待される。しかし、その授賞式の最中にとんでもないことが起き…
映画『アステロイド・シティ』は『グランド・ブダペスト・ホテル』、『ムーンライズ・キングダム』のウェス・アンダーソン監督の最新作だ。
アメリカの架空の町を舞台にそこに集まった人たちによる騒動が描かれる。
ウェス・アンダーソンといえばミニチュア的世界観やお洒落なビジュアルで日本でもファンの多い監督の1人。自分も新作が出たら劇場まで足を運んででいるくらいには好きな監督だ。
9月1日の仕事終わりに観に行ったのだがファーストデイということもあり場内はほぼ満席。男女比は4:6くらいで女性の方が多かったと記憶している。
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そんな本作だが、ボーイ・ミーツー・ガールもあれば大人の男女の恋愛もあり、終盤の大騒動もありと「いつものウェス・アンダーソン映画」である。だが、自分は今作はそこまでハマれなかった。
相変わらずビジュアルはキマりまくっている。だけどストーリーは抽象画のよう。
どこに焦点を合わせたら良いのか分からない。
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少しネタバレになるが、本作の舞台となる『アステロイド・シティ』は実は舞台劇で、映画はそのメイキングを記録したテレビ番組として始まる。
つまり映画自体が「入れ子構造」となっており、この番組に関わった人達とと劇中の人物のドラマが交互に映されていく。
ウェス・アンダーソンは1人の人物に焦点をあてるより複数の人物を動かすドラマを描くのに長けている監督だ(ミニチュア的世界観と言われる理由の一つでもある)。
今作も登場人物の数は多いがそこは気にならない(観ていく内に覚えていく)。個人的には舞台の裏側パートと劇中劇の繋がりをあまり感じなかったし、全体的に話が散漫としている印象を受けた。
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思えば過去作の『犬ヶ島』は不思議な国ニッポンを題材にした作品だった。自分は本作は「ウェス監督のアメリカへの郷愁を描いた作品」なのだと捉えている。
西部、宇宙、UFOと同時の憧れ50年代のアメリカがカオスティックに詰まった街「アステロイド・シティ」。その設定を紐解いていくと、そこにはウェス監督が本作に込めたアメリカへの思いも感じ取られる。
ジェームズ・ディーン、マリリン・モンローなどの往年の名優たちに偉大な劇作家、劇中での出来事と元となった事件などが映画という架空の世界で結ばれる。
『アステロイド・シティ』とはウェス・アンダーソン監督のアメリカへの好きがつまったおもちゃ箱のような世界なのかもしれない。
本作は豪華な出演陣も見どころの一つ。
ジェイソン・シュワルツマン、スカーレットヨハンソン、トム・ハンクス、ジェフリー・ライト、ティルダ・スウィンフトン…ウェス・アンダーソン監督の作品でしかあり得ないという豪華面子は眺めてるだけで眼福だった。
最後に自分が劇中で最も好きな場面を紹介して終わりたい。
終盤で語られる劇中劇ではカットされた場面が語るシーン。舞台の裏側パートは全体的にハマらなかったが、この場面は美しかった。
ということで『アステロイド・シティ』。現在も公開中なので気になる人はチェックしては。
ウェス・アンダーソン監督で一番好きなのはこれかな(もしくは『ファンタスティック Mr.FOX』)
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