【青春なんてイタくてなんぼ】映画『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』感想
『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』は2003年のカナダを舞台に映画好きの少年の青春を描いた物語だ。監督は本作が長編デビューとなるチャンドラー・レバック。
いわゆる「イタい主人公が傷つきながら成長していく青春物語」なんだけど、想像以上にビター&シビアであった。
まず主人公のローレンスが性格にだいぶ難がある。
ワガママ、プライドは高いくせに打たれ弱い。そのうえ人をナチュラルに見下してるというなかなかのクズ。
見た目こそ可愛らしいが可愛げは全くない。
そんな主人公なので応援したくなるというよりは半ば呆れながら彼の成長を見届けていくという感じで観ていた。
物語も強烈。
学校生活は悲惨だし「そこまで言っちゃうの?」と引いてしまうくらい登場人物達も本心をぶちまける。
正直、ビジュアルや予告編の印象よりパンチの効いた映画だと思う。
このオブラートに包んでない生々しい雰囲気、賛否あるだろうけど自分は好き。監督の自伝的作品ということだけど、自身の恥ずかしい部分をキレイごとにまとめてない辺りに誠実さを感じられる。(ちなみに監督は女性監督ということで性別を男の子へ変換させてるのも興味深い)
ローレンスも嫌な奴なんだけど、1つ良いのは映画が好きという気持ちに嘘が無いということ。
憎いはずのローレンの作品に対しても私情を挟まないし、彼のせいで同僚がエラい目に遭った時も頭にあるのは映画のこと。
どこまでも映画が優先という姿勢は同じ映画好きとしては尊敬するし、羨ましささえ感じる。
要はローレンスって想像以上に子供なんだよね。そんな彼が取り戻せない痛みを経験することで、少しずつ大人に成長していく。苦みは強いけど真っ当で誠実な青春映画だと思う。
後、シビアではあるけど希望を感じさせる優しい終わり方なのも作り手の優しさを感じられて好き。