見出し画像

PCアドベンチャーへの想い

今朝(と言ってもいつも通り1時前後なのですが)起きて
そうか……と衝撃的なニュースが飛び込み、いろいろと想いを馳せた。

前にこちらにも少し書いたとおり
自分はRPG少年から始まり、その後サクラ大戦をキッカケに
アドベンチャーゲームというジャンルを知りハマリ、
大学時代からパソコンゲームも毎日のように遊び
「ゲームシナリオライターになりたい」
シナリオを写経したりプロット化したり、そんな日々を送っていた。

当然ながら戯画の作品には触れており
『パルフェ』や『この青空に約束を』など
丸戸史明さんを軸に追いかけていたのですが、
だからこそ今回の衝撃はエルフさんがなくなったときぐらい大きく……

ここでのルールではありますが
「普段Twitterでは書かない(触れない)ようにしている
 内部に踏み込んだお話」
として、少し綴ろうと思いました。

Twitterのほうでは、
作品のファンとしてフォローしてくださっている方もいる思うので
「あまり著者(ライター)のことを知りたくない」という方は
この先はそっ閉じしてもらえれば、と思います。



■RPGからADVへ

先に述べたように、
小学時代はもっぱら「RPG大好き少年」でした。

初めて触れたゲームは『マリオブラザーズ3』……
両親がファミコンのコントローラーを握りしめ、
ふたりで協力しながら難関なステージを突破しようとし
それが嬉しく自分も夢中になり
「ねえ、どうやったらドッスンの向こうのボス、倒せるの?」
「8面(最終ステージ)までいったの!? 隠しの笛!?」
そんな感じで、きゃっきゃ言いながら遊んでいた思い出があり。

だえどアクションゲームはどうにも苦手で、
次に手を伸ばしたのが友達が遊んでいたRPG――
『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』
『クロノトリガー』などで、そこから
『テイルズ』『スターオーシャン』シリーズなど
「各キャラのドラマがわかりやすく提示されるもの」……
最後の2つではスキットやプライベートアクションに惹かれ
それが後の「キャラごとのストーリー」――
『チェインクロニクル』などに繋がってくる部分がある、
と思っているのですが、ともかくそうしてRPGを堪能した後
『サクラ大戦3』のオープニングに度肝を抜かれる事件が起きました。


「なん、だコレは……とにかくヤバそう、面白そうだぞ!?」
「ロボも……戦闘シーンもカッコいい!(男の子の血が騒ぐ!!)」

ゲーム屋さんで立ち尽くし、何度も観てしまった自分は
速攻でドリームキャストを購入することになり……
ここから美少女ゲームというものを知り、次に購入したのが
『センチメンタルグラフティ』で
「なんてピュアなんだ……」と小説版を読み
キャラクターソングまで買ってしまい、友達と
『ジャーニー』で「ドカポン以上の戦争」になりかけました。

その後『Memories Off』シリーズと出会い
KIDという会社とスタッフが好きになり、
大学時代に『Ever17』に衝撃を受け
「ゲームシナリオライターになりたい」
夢が固まった流れがありますが、
この頃にちょうどプレイを始めたのがPCゲームでした。


■初めてのパソコンゲーム

最初は先輩に勧められた『君が望む永遠』……

これについては、やはり未だに「シーン」で覚えており、
第1部の終盤の畳み込み……
OPへの入り方がすさまじく強烈で
「マジか……
 いや、やめてくれよ、どうなるの……」

と放心状態になりながら第2部へとプレイが進み
「キツイ……二者択一なの?」
「茜の主人公への想いがわかるからこそ、
はね除ける彼女の姿が切ない、痛い……
(立ち絵の差分をフルに使った感情表現、素晴らしすぎる)」

といった感じでズブズブはまり、最後は号泣し……

以降、パソコンゲームにもすっかりのめり込んでしまい
(必ず経験が活きると思い飛び込んだ)喫茶店のバイト代と
奨学金のほとんどをここへ費やし、葉鍵はもちろん計200本
田中ロミオさんの作品(『家族計画』『クロスチャンネル』など)や
『車輪の国、向日葵の少女』などるーすぼーいさんの作品、
アリスソフトならば『戦国ランス』や『アトラク=ナクア』
奈須さんの『fate』や虚淵さんの『ファントム』
竜騎士07さんの『ひぐらしのなく頃に』『うみねこのなく頃に』
エルフならば『YU-NO』や『微肉の香り』……
そしてソーシャルゲームのシナリオを書くにあたり
最も参考にさせていただいた丸戸史明さんとの出会いが
戯画の『パルフェ』であり『この青空に約束を』でした。


■ソーシャルゲーム登場時の意識

ビジュアルノベル、ノベルアドベンチャー、ノベルゲーム……
ひとくくりで「ADV」と呼ばれるこの分野は、よく
「ゲームか否か(どこまでゲーム性を入れるか)」という話になります。

選択肢を一切排除させたにもかかわらず
最後まで読ませる面白さを持つ
虚淵さんの『鬼哭街』は挑戦的だったと思いますし
「最低限しか用意しない」と2個だけ選択肢を用意し
「分かれた3つのエンド、どれも良い(胸に残る)」
という構造にした『沙耶の唄』は、やはり「スゴいな」と当時、
いちプレイヤーだった自分は衝撃を受けたものですが
ご存知のとおり、ソーシャルゲームも
「選択肢による大きな分岐がないもの」
「選択肢がないもの」が基本となります。

これがガラケーの時代、今から10年ぐらい前には顕著であり
1話2000文字(約4KB)ぐらいしか書けない、選択肢がないもの……
つまり今のスマホゲームより文字数も演出も
なにもかもが制限されており厳しく、でもそのなかでも
「なんとか良いものを創りたい」
「好きだったパソコンゲームやコンシューマーの
アドベンチャー/RPGのように記憶に残るものを創りたい」
「なにか、良い手はないか?
(パソコンやコンシューマーのADVのように
地の文もしっかり書くことが出来ないぞ? どうする?)」
「この分野が好きだからこそ、ちゃちゃっと書いて
 それなりのを楽しんでもらう、みたいな半端は許せない」
「半端なものを創るぐらいなら切腹する!!」
――

こういう気持ちになった時
「そうだ、パルフェだ。あれが比較的近い!」
と戯画の作品を思い出し。

『世界でいちばんNGな恋』『ホワイトアルバム2』
そしてライトノベル(冴えカノ)と、
どんどん地の文を増やし挑戦を続けていった丸戸史明さんが
「極限まで地の文を削っていた頃、
キャラ同士の掛け合いがテンポ良く面白く
笑え、しかししっかりオチがついたと読者にもわかる
起承転結が見事かつ、短い文章量でおさまっていて
シナリオ本文には選択肢がない
(基本各キャラのSSを読む選択ができる構造になっている)」――

『パルフェ』『この青空に約束を』のシナリオを、
この構造を上手くソーシャルゲームの枠に落とし込めば
より濃く、近い楽しみを与えられるのではないか?

そう思い、ひたすら丸戸さんの文章をテキストに打ちこみ、
テンポから言葉遣いから演出まで血肉に刻み
「7~10KBか……
この構造をインストールして4KBに濃縮、
もっと刺さるように濃く鋭く削るように
ソーシャルゲームのキャラたちの話を書けば、必ずっ!!」

ADVへの愛から、
ソーシャルゲームのガラケーの頃のシナリオ
(ベクターさんの『えんむす』が最初で、
三崎ユウナ、マリアという2キャラのルートを任せてもらえ
前者を自分、後者をまだ学生だった世俵という
『脱出アドベンチャー』シリーズのコンビ)で臨ませていただきました。

そこからRPG愛とセガ愛も爆発し
『チェインクロニクル』に繋がってくるのですが、
ともかく戯画の作品がなければ自分の
「ソーシャルゲームでのキャラを魅せるシナリオ」の
ベースが生まれていなかった
、と言っても過言ではなく。

だからこそ、今回の件が
人一倍自分には響いており
「これからの時代の表現や作品」などについても、
あれこれを考えています。


■これからの時代について思うこと

自分がデビューした頃と明らかに違う、
というより「より浮き彫りになってきた」と思うのは
「どう情報を与えていくか」という部分。

例えばADVのイベントCG、スチル絵と呼ばれる類のものは
「言葉で表すと野暮ったくなるものをあえて絵で、
そこでの情報で見せることで、よりグッとさせて記憶に残らせる」

という映像作品にもある手法が使われることがありますが
戯画の『パルフェ』では、まさにこれが使われており
里伽子ルートの最後は、忘れられません
『Ever17』と同様、とは言うと怒る方がいるかもしれませんが――
それこそ『車輪』を挙げろ、と言う方がいるかもしれませんが――
「ゲーム/ゲームのストーリーという構造を
上手く使った全体構成」
にもなっており、
彼女の想いとその立ち位置の意味を知った時は衝撃を受け
(いちいち衝撃受けすぎですね)」……
だからこそ最後に泣くような、素晴らしい物語でした。

そんな思い出深い戯画がなくなる、
というのはちょっと、信じがたいというより
なんと言っていいかわかりませんが
「楽しませてもらったものを糧にこれからも続く未来で、
もしかしたら別の媒体で、形を変えてでも技や想いを引き継いで
今の若者たちに楽しんでもらえるものを創っていこう」

こんな想いが湧いて、こうして綴っております。

文字を含めて
「視覚的な情報の受け取りやすさ」
「影響力」というものをよく、考えるようになり
ADVでもRPGでも、ちゃんと
「今の若い子たち、作品に触れるであろう方々、その想い」に向きあい、
血肉になってきたものを「今または未来の形で活かしていこう」――
そんなふうに、思っております。

まとまりのない文章ですが、
少しでもアドベンチャーやRPG、戯画への想いが伝われば幸いです。


30年近くの間、ありがとうございました。
お疲れ様でした。


                      株式会社Qualia Writers COO/シナリオライター 下村 健



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?