看取り~介護と死別を通して得られた家族の絆とは~(10)
6月20日(日)
今日も少し調子が悪そう。朝急に競馬をしたいというので、僕は少し怒ってしまった。教会から帰ったのは1時半くらいなので、結果的に競馬の受付に間に合った。一緒にレースをみたが外した。夜、急に葬儀のことを心配したのか、僕に不安を話してくれた。「(ケアマネの)Tさんに頼むといいよ」といっていた。僕は返答に困ったが、「教会で全部やってくれるから心配はいらないよ」と話すと、わかったかわからなかったかは不明だが、安堵したような顔をしていた。僕は夜酔っぱらって教会のSさんに電話して泣いた。「あなたがしっかりしなければだめでしょう」というようなことを言っていただいたとは思うけど酔っぱらって記憶が不確かだ。
6月21日(月)
朝出勤するとき、「昨日より少し調子がいい」といっていた。昼に電話してみると、果物は食べられたようだ。仕事帰りにカットした果物を買って帰ったら、それも少し食べた。散歩も結構できたようだ。やはり昨日は調子がわるかったようで、「死んじゃうかもしれない」と言っていた。教会のSさんに電話して、調子が戻ったことを報告した。
この日に僕は初めて仕事をやめて介護に専念することを考え始めた。僕に妻子がいれば、自分の家庭を優先するのが当然だ。でも獏に妻子はいない。幸い何年か食べていける貯金はある。それなら病気で不安をかかえる お父さんのそばにいるのが当然なのではないかと考え始めた。
6月22日(火)
今日も調子はいいようで、朝早くから胃ろうをした。スピードは遅め。それでも朝すこし下痢をしたようだが、昼には治ったようだ。
6月23日(水)
今日は通院の日だったが、点滴はしない日だったのに、それが理解できなかったようで、僕が説明しても納得してくれなかったので、T病院に電話をしてお父さんに代わったら、ようやくわかってくれたようだった。8月に胃カメラとCTを取ると言われた。それと鉄分が不足してるようなので、その薬ももらった。食欲はない。果物を少し食べただけだった。歩くのがだいぶ辛くなってきたようだ。
6月24日(木)
食欲はほとんどないようだ。果物にも手を付けない。無理に食べさせると下痢をしてしまう。豆腐とかヨーグルトがいいのだろうか?抗がん剤を休むと食欲が増すとも聞く。食欲があると安心できるのだが。
6月25日(金)
宿直勤務。朝、サッカーのワールドカップで日本がデンマークに勝ったと言って喜んでいた。夜電話をすると、ケアマネのTさんが昼に来てくれたそうだ。それとスーパーで水を買ってきたと言っていた。僕はネットで介護食のことを調べた。いろんな種類があるようだが、試しにとってみようかとも思った。
6月26日(土)
非番。疲れて夕方寝てしまったので、散歩に付き合えなかった。食欲はないようだ、作り置きしたものにもほとんど手をつけてない。
6月27日(日)
教会の帰りにデパートでスープを買った帰った。競馬は外した。「夏競馬は難しい」となんだか評論家みたいなことを言ったので笑ってしまった。
...
6月28日(月)
朝選挙の投票用紙がある、といわれた。「昨日より調子よさそうだね」といったら笑っていた。昨日の人参のスープを全部食べたので、また買ってこようと思う。公社から電話があって印鑑証明を送ってほしいと言われたので、お父さんに区民センターまでいけるか、と聞くと、「大丈夫だ」といってたのでお願いした。
6月29日(火)
なんとなく調子のサイクルが分かってきたような気がする。職場にお父さんから電話があって、今日は印鑑登録をしただけで、印鑑証明は数日かかるとのこと。それでお父さんは疲れてしまったようだ。夜デパートで枝豆のスープを売ってたので買ってきた。
6月30日(水)
耳がだいぶ遠くなったようだ。ワールドカップのサッカーで日本は負けたと言っていた。朝調子を聞くと、「普通だ」と言っていた。昼に電話すると、スープを半分食べたと言っていた。アート引越しセンターから電話があった。ヘルパーさんの手記だと、(貧血気味で調子がよくない)と書いてあった。
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