大雨と火事、そして止まるエレベーター。アクロポリスまでの道は遠かった
エーゲ海のパロス島からアテネに戻り、1泊した。本当はそのままイスタンブールに行きたかった。アテネを避けようとしたわけではない。先へ、先へと進んでいくことがコロナ禍の旅のポイントのひとつだと思う。いつ新しい変異株が生まれ、新しい規制が降りかかってくるかがわからない。こういった規制の決定や実行は海外のほうが早いような気がする。
しかし飛行機の乗り継ぎがうまくいかなかった。アテネからイスタンブールに向かう便も減便されていた気がする。午後便はかなり少なかった。やはり新型コロナの影響を受けていた。アテネに昼に着き、イスタンブール行きは翌朝。このパターンに絞られてしまった。翌朝といってもかなり早い。慌ただしいアテネ滞在である。ところがアテネは季節外れの大雨、さらに宿の近くで火事⋯⋯。やはり都会は落ち着かない。
旅の期間:11月26日~11月27日
※価格等はすべて取材時のものです。
宿は清掃費というものが加算され、倍近くに。詐欺ではないんだけど
(旅のデータ)
宿はシンタグマ広場の近くにした。翌朝のことを考えてのことだった。アテネ国際空港から市内までは地下鉄とバスが結んでいた。翌朝、地下鉄で空港に向かおうとすると、始発に近い電車に乗っても間に合うか、どうか。その点、空港とシンタグマ広場を結ぶバスは24時間運行。便数もかなりある。それに運賃は5.5ユーロ、約710円と最も安い。空港往復の足はバスと決めた。宿はネットで探したが⋯⋯失敗した。1泊3000円ほどの宿を選んだが、途中で清掃費というものがしらーと加算され、倍近くの料金に。最後にちゃんと確認すればよかったのだが、そのまま支払いに進んでしまった。なにか不愉快。キャンセルも考えたが、キャンセル料が発生する時期に入っていた。かえって損。まあ、しかたない。
最近の悩みはICカードを買うか、どうか⋯⋯。アテネでは切符を買いました
sight 1
宿はシンタグマ広場近くだったので、迷わずバスで市内に向かう。最近、海外に出て悩むのはバスや電車の切符。どこも日本のスイカのようなICカードになりつつある。小銭がいらず、買い物もできて便利なのだが、今回のように半日滞在でもつくるか、どうかで迷う。デポジットが必要になり、出国時に清算⋯⋯。それをしないと、少額が入ったICカードが残ってしまう。そんなカードを僕は20枚以上もっています。で、アテネ⋯⋯バス切符を買いました。
sight 2
バスのなかはコロナ対応。シンタグマ広場までは1時間ほど。昼間は渋滞も気になるが。乗ってみてわかったが、途中のバス停での乗り降りがかなりある。コロナ禍で飛行機の利用者が減っていることもあるのだろうが、半分以上は地元の人。路線バス代わりに使っていた。アテネの街は空港方面に広がっている証でもある。
突然の大雨。止まるエレベーター。そして火事。いったいなんなんだ
sight 3
宿はシンタグマ広場から路地を5分ほど歩いたところにあった。前日にメールで指示がきた。英語でビルの入口のボックスのなかから鍵をとり出す方法が書かれていた。そこでわかった。予約をしたのは1軒の宿ではなく、所有する1部屋をネットで貸すスタイルの宿というか、部屋だった。こういうスタイルはときどきある。部屋に入り、しばらくすると激しい雨。ベランダから見おろすと⋯⋯。それは次の写真で。
sight 4
部屋は10階だった。1階に降りると、道は川になっていた。流れも速く、とても道を歩けそうもない。アクロポリスの丘ぐらいは登っておこうと思っていたのだが⋯⋯。部屋に戻ろうとすると、エレベーターが止まっていた。近くにいた人は、「修理を呼んでいるけどこの雨じゃ」と力なく説明してくれる。階段に息を切らして部屋に戻ると、外が真っ白だった。「煙?」。窓を空けると焦げ臭い。「火事?」。
sight 5
慌てて1階に降りる。「あのビルで火事。でも心配しないで。消防車が来たから」。1階に集まっていた野次馬が教えてくれた。これが都会っていうこと? パロス島の平和な時間から一気に現実に戻されたような気分だった。また階段を登る。部屋は10階である。なんという洗礼。それから2時間。再び1階に降りると、まだ消防車が停車していた。しかし雨はあがっていた。
アクロポリスめざして坂道を登る。でも、道を間違えてしまった
sight 6
水が引いた道をアクロポリスに向かって登りはじめる。時刻はすでに午後4時近かった。急がないと日が暮れてしまう。地図も確認せず、坂道をずんずん登った。これがいけなかったのか。道は狭くなり、行きどまりになってしまった。見あげるとアクロポリスの頂あたりに人の姿も。あそこまではどう行ったらいい?
sight 7
グーグルマップを開いてみた。どうもいったん坂道をおり、再度、登っていかないとアクロポリスの入口には辿り着かないようだった。時計を見た。もう午後5時をまわっている。視界をくるりと変え、アクロポリスとは反対側の風景を目に、ふーッと息をつく。夕陽にが当たるこの眺めで、今回のアクロポリスは終わりとするか⋯⋯。
カエサル? アウグストゥス? 世界史の受験参考書を思い出す
sight 8
坂道をくだっていくと、突然、規模は小さいが、しっかりとした遺跡に出くわした。こういうところがアテネのすごいところだ。街の実力というか。住宅街のなかに、突然、紀元前などという遺跡がヌッと現れる。そういうなかに人々は暮らしている。日本では考えられない時間感覚だ。
sight 9
遺跡の正面にまわる。ローマン・アゴラという遺跡だった。アゴラというのは共同広場。商店が並んでいた。いまでいえば市場やフランスのマルシェのような場所だったのだろうか。カエサルが資金を提供して建設をはじめ、初代皇帝アウグストゥスが紀元前 12年から紀元後2年の間に完成させた。ウィキペディアからの受け売りです。カエサル? アウグストゥス? 世界史の受験参考書を思い出しました。
sight 10
ローマン・アゴラから見あげると、アクロポリスはもう夕暮れ。大雨がなく、火事がなかったら、いま頃、あの上に立っていた? そういえば、宿のビルのエレベーターは直っただろうか。また歩いて10階まであがらないといけない? 明日は朝が早い。そろそろシンタグマ広場界隈に戻ろうか。
ホームメイドのザジキが3ユーロ。つい、一軒の店に入ってしまった
sight 11
ローマン・アゴラからさらにくだっていくと、地下鉄のモナスティラキ駅に出た。今日は金曜日。仕事帰りの会社員や若者でにぎわっていた。クリスマスまで1ヵ月を切った。街も活気づく。日本を発って9日。そろそろそばが食べたい気分。安い中華がみつかったらそこで夕食⋯⋯と街を歩くと、ザジキに出合ってしまった。ザジキ? つぎの写真で。
sight 12
店頭の看板に「ホームメイドのザジキ 3ユーロ」と書かれていた。そうだ。まだザジキを食べていない。ザジキというのは、羊か山羊のミルクからつくったヨーグルトに、キュウリ、ニンニク、オリーブオイル、ハーブなどを加えたもの。好物だった。パンにつけてもいいし、料理に載せてもいい。3ユーロ、約387円というのも良心的。つい入ってしまった。ザジキは写真左下。
sight 13
ザジキに満足。店を出て、シンタグマ広場にいくと、なかなかみごとなライトアップ。これまで何回もシンタグマ広場にきているが、こんな光景ははじめてだった。クリスマス前の演出だろうか。財政赤字に端を発したギリシャ危機のときは、広場周辺でデモや放火が相次いだ。根本的にはなにも解決されていないが、一応、いまはこのライトアップです。
sight 14
シンタグマ広場から宿に戻る道⋯⋯と書きたいところだが、夜のこの界隈は若者で大変な騒ぎ。「新型コロナウイルスはどうなっている?」と不安になる。やはりウイルスは都会で感染が広まる理由がよくわかる。田舎が安全ということか。この写真は朝の5時。空港行きのバス乗り場に向かう途中です。
sight 15
空港には朝の6時すぎに着いた。トルコのイスタンブール行きのチェックインカウンターには、すでに10人ほどが並んでいた。特別のチェックはなく、無事、搭乗券を受けとった。免税店フロアーは24時間営業? コロナ禍前に戻りつつある。さてトルコ。入国時の気がかりがあった。それは次回に。
【次号予告】次回はイスタンブール。突然のコーランの響き。そしてサバサンド?(1月28日公開予定)
新しい構造をめざしています。