📖 : 『乳と卵』 / 川上未映子

あと何回、ここに生理がくるのかを考え、それから、今月も受精は叶いませんでした、という言葉というかせりふというか漫画のふきだしのような意味合いが暗闇にふわりと浮かんでくるのでそれを見た。(中略)

や、受精、受精ですか、いや、今月も来月も受精の予定は、ないですよ、とわたしはぼんやりした音のない意味で答えます。(中略)

重さだるさに意識がねっとりと沈んでゆくなか、生きてゆく更新が音もなく繰り返される。…

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これを読んだとき、頭の中を覗かれた気がした。

「なぜ月に一度生理がやってくるのか」
女性なら一度は考えたことがあると思う。
今は必要ないから子供欲しくなるまで来るな、なんて無茶なことを何度願ったことか。
卵子本来の役割を全うせぬまま無駄遣いしているようで、一抹の罪悪感と悲愴感を抱かざるを得ない。どうやらそれは珍しいことではなかったらしい。

豊胸手術に取り憑かれている、「私」の姉「巻子」。
初潮を迎え、変化してゆく体に嫌悪感を抱く、姉の娘「緑子」。
対照的な親子のそれぞれに共感できる部分があり、矛盾だらけだけど、これが今の私の素直な反応なのだと思った。

キツめの関西弁でクセのある文体だったけど、表題の「乳」と「卵」を彷彿とさせる表現がうまく散りばめられている上に物語全体も見事な収まりで、素人ながら、さすが芥川賞受賞作だ、なんて納得してしまった。
女性の心と体について、これほど真っ向から描写されることはあまりない気がする。
でも男子がこれを読んでも、おそらく女心は理解できないだろうなぁ。なんて。