自己肯定感に悩むなら山に行け!「私って、やればできる!」をはじめて実感した山での話
大学4年生の秋、私は北アルプスの尾根にいました。
長野県・白馬岳のふもとから新潟県・親不知の海岸まで3泊4日で踏破する道中、3日目。
この先には今日宿泊する小屋があるはず。しかしその日は悪天候に見舞われ、風がすごい。のに、この、細い尾根を、私は歩かなければいけない。あちらに渡らないと今日の宿はない。もう2日以上歩いた道を戻るわけにも、もちろんいかない。
進む以外に道はない・・・でも・・・
そんな時、私に向けて怒号が飛ぶ。
あ、
あ、
わあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
長野の山での10日間
こんにちは。イラストレーターの島田です。
キャンプってレジャーキャンプだけじゃないんだよ。ということを書いた前回の続編。今回は"組織キャンプ"に参加者として参加した私の話です。
大学2年生でどっぷりハマった野外教育の世界。スタッフではなく参加者として参加してみたい…そう思っていた私には憧れの団体がありました。
それは「日本アウトワードバウンド協会」、通称OBJ。
野外教育、特に冒険教育の分野で日本トップと聞き、その世界を一度見てみたいと願い続けた団体です。
OBJは、子ども向けコースの他に青少年(20歳前後)のコースも大切にしています。そこに参加者として参加したい。卒業したら参加できないかもしれない!
翌年に就職を控えた私は、9月に開催される10日間の青少年向けコースへの参加を決めました。
私が抱えた大きな問題
当時の10日コースのスケジュールはこんな感じ。
それぞれがハードなプログラム。この10日を乗り越えた時、私はどんな景色を見ているのか。。期待に胸が膨らむ一方、私には心配事がありました。
私、体力が異常にない。
子ども向けの野外教育に携わってきた私。その中で繰り返す、川遊び、山登り、スキー、大きな荷物。そして自由時間に子どもたちから畳み掛けられる、鬼ごっこ、鬼ごっこ、鬼ごっこ。
無理なの・・・
そんな体力はどこにもないの・・・
どこにもないのにどこからか無理やり生み出すので、1日が終わると必ず脱水症状。好きな飲み物はOS−1。次の日はもちろん筋肉痛。
そんな体力なし子なのにOBJの10日のコースに申し込んだのです。
おい、大丈夫か。
日本最高峰の青年向けプログラムだぞ。
体力つけて気合い入れて参加しないと!!!!
そうだ、体力をつけよう!
参加する前から心が折れる
気合い十分だったこの夏、私は4日間の小学生キャンプにスタッフとして参加することになりました。
初日は宿泊施設のある秩父の山を自分たちの足で登るらしい。水やカッパ、行動食以外の個人の荷物は搬送車で運んでくれるとのこと。
チャンスだ。
私は4日分の荷物も全部背負って登ろう。
このキャンプが終わった時、私の体力は数段レベルアップだ!!
どうしてそう思ったのか全く謎ですが、
いざ登山が始まればやっぱり、
山を駆け上がる子どもたち。
追いつかない私。
(ああ、班の子たちに置いていかれる・・・それはまずい・・・でももう無理・・・)(こんなことじゃOBJに行っても何もできない・・・そんなの嫌だ・・・ああ私・・・)
あの時の私に、今ならはっきり言える。
目の前のことに集中しなさいよ。
案の定、登山が始まって30分も経たないうちに私の荷物は搬送車に没収されました。
ボロボロになって泣く私に「何やってんの?」と笑ってくれたディレクターの顔、私は忘れない。(たぶん全部織り込み済みだったのでしょう。奇行すみません&見守ってくれて感謝…)
こうして私の夏は挫折で終わりました。
始まってからも折れ続ける心
夏は終わって9月、秋です。プログラムが始まります。初めて出会う8人のメンバーで過ごす10日間。
前半4日間のプログラムは「ロッククライミング」「沢登り」「自転車遠征」です。楽しそうでしょ?
でも、なんというか・・・
皆さんの想像よりちょっとハードなのです。
そのハードさは体力的なものに限りません。
他の参加者の様子を見て気持ちが動くこともあるし、
他の参加者と意見が分かれることもあるし、
嬉しいこともあるし悔しいこともあるし
自分では如何ともしがたいこともあるし
でもそんな時でも意外と自分にできることがあったりして
なんだかすごく「心」を使う。
もちろん体力的にもハードで(特にOBJの沢登りは全人類に体験してほしい…人口の90%以上が限界突破する気がする。深くは触れないけど…)、
前述の通り私は体力なし子なので、
その点でまず葛藤。
他のメンバーを思いまた葛藤。
だって6日目からはグループ8人で登山遠征。
3泊4日を山で過ごし、目標時間までに白馬岳のふもとから日本海を目指します。
私がもしダウンしたら、みんなを道連れにするかも・・・
何より、
ここまでの5日間で私が一番心が折れたのは
「私、自分で決めたことを何もやり遂げたことがない」
という気づきに対してでした。
部活をやりきったこともないし
高校受験も大学受験も第一志望は落ちて
就活は1つ目の内定で終わりにして
大学では勉強もそこそこにキャンプに打ち込んだけど、足りないものが多すぎて
OBJでの前半4日間も、「なんとか(なんとなく)成功した挑戦」もあれば「結局ダメだった挑戦」もあって、「うおー!!やってやったぞ!!」という感動がない。
私はその感動を求めてOBJにきたはず。
日本でトップの冒険教育。憧れていた舞台。
そこで何かを得たいと思って来たはずだけど・・・
登山もやり遂げられないかも
そうなったらどうしよう
踏み出すしかなかった
案の定、登山でも体力不足っぷりと心の弱さが炸裂し、目標時間にゴールに着くイメージが持てないまま登山3日目。
「私がいなければみんなゴールできるのでは?」
「もう下りたい帰りたい帰りたい」
ここに来た意味を完全に見失う私。
でも、帰るわけにはいかない。
そのストッパーになっていた存在がいました。
それは同じグループの女の子。すごく朗らかで、元気で、やる気いっぱいの彼女は、体調を崩し途中で下山していました。
「あんなにやる気のある子が、どうしてもここに来られなかった。私がここで降りたいなんて言うのは違う。あの子の分まで歩くんだ」
よくドラマで「あの子の分も」という台詞を見かけますが、自分が感じたのは初めてでした。そういう気持ち、私にもあるんだな。
そんな中、朗報が届きます。
「下山していた彼女が
今日宿泊する山小屋で合流する」!
やった!!その山小屋になんとしてでも辿り着こう!!一層士気があがる私、そしてグループの仲間たち。
しかしここで残念なお知らせ。
高所恐怖症の私、
強い横風が吹く細い尾根で立ち尽くす
いや、立ち尽くすは嘘。
腰が抜けて膝をついていました。
もうすぐ目標の山小屋。
でも周りはガスがすごくて景色も見えなくて、
目の前にはギリギリ歩ける程度の幅しかない尾根。
バランスを崩せば大変なことになる。(と私は感じた)
無理無理無理!!!!疲れて足に来てヘロヘロな私が、こんな風を受けながらまっすぐ歩ける訳がない!!!!
絶望・・・・・・
していたところで、冒頭部分に至ります。
「この先で!!
あの子が待ってるんだよ!!だから!!」
同じグループの(1つ年下の)女の子が、見たこともない剣幕で叫ぶのを私は見ました。
その勢いに圧倒され、
私は
ものすごい勢いで立ち上がり
尾根を
突き進む
わ、
わああああああああああああああああああ!!!!!
・
・
・
その日、予定した小屋で私たちは8人揃うことができました。
翌日は最終日。順調にいけば、全員で時間内にゴールに辿り着ける。もしかして、もしかするのかもしれない・・・私の中に生まれる高揚感。
そして登山最終日
もちろん、簡単ではありませんでした。
最終日はひたすら下り。疲労が貯まった足はいよいよ思うように動かず、少しずつ遅れる行程……。
正直やっぱり途中で折れかけた…けど、山あいからちらりと見えた日本海がものすごい希望の光に見えて、その光を追いかけてただただ下る。
坂道を下り
岩場を下り
雨で泥沼になった道を進み
ひたすら、ひたすら。
そして、目標時間の15分前に、新潟県・不親知、着。
あんな達成感と充足感を、私は味わったことがありませんでした。
私は今、目標にしていたOBJに来て、
目標の9月13日15時に日本海の目の前に立っている。
やりたいと思ったことって、
本気でやったらできるんだ。
私、やればできるんだ。
一歩踏み出した先に
それまでの私は、「私たぶんやればできる」「私たぶん割と優秀」と根拠もなく信じていて、でも根拠がないから本当は不安。不安がゆえに、変に強気で、自己肯定感というやつはすこぶる低い。そんな21歳でした。
でも、あの登山を超えて「私、なんかいいな」と思える瞬間が増えました。
ふとした瞬間に「私いいじゃん」って思えるし、大変なことがあっても「私もっと頑張れる」と思えるし、私あんなすごいことしたんだって自信が湧く。
あの登山は、そしてそこに至った10日間は私の人生で一番大きな体験だし、今もあの10日間に支えられて生きています。
あの尾根で、文字通り「一歩踏み出した」。大きな大きな一歩でした。
その後の私
翌年、私はシステムエンジニアとして就職しました。
が、この10日間と学生時代のキャンプでの経験が忘れられず、こんな経験をたくさんの大学生に私も提供したいと思って、3年後、OBJの指導者養成コースに参加するため退職しました。
(お察しの通り、指導者養成でも私は散々でした。が、同時にとてもとても充実した日々を過ごしました)
それ以降は、かなり自覚的に、自分で選んだ自分の人生(※)を歩んできた気がします。
だから人生、いつも今が一番楽しい。
家族や職場に心配や迷惑をかけたこともあったけれど、見守ってくれたみんなに感謝です。そして、一緒に10日間を過ごした7人の仲間と3人のインストラクターに改めて感謝です。
一歩踏み出したその先に。
コンテストに向けて書きました。
誰か一人でいい。自分のことを好きになれずに悩む人に、届けばいいなと思います。
踏み出したら、結構人生変わるよ。