無門関第四十一則「達磨安心」現代語訳
公案現代語訳
本則
達磨が壁に向かって座禅をしていた。
二祖が雪の中立っていた。
肘から下を切り落として言った。
「あなたの弟子はいまだ不安です。
どうかお願いです、師よ、私を安心させてください」
達磨は言った。
「その心を持ってこい。お前のために安心させてやろう」
二祖は言った
「心を探し求めているのですが、どうしても得られません」
達磨は言った。
「お前のために安心させ終わった」
評唱
歯の欠けた西方の爺さん、十万里の海を渡ってわざわざやってきた。
これは風もないのに波を起こしたと言えるだろう。
末後に一人の弟子をみっちり指導し、却って六根不具となった。
おいコラ、四字を識らぬ謝三郎。
頌
西からやってきた直指の教え
事はこれを頼みに委ねることから生じた
叢林を騒がせ乱しているのは
元を辿ればお前だ
注釈
「鈌歯の老胡」すなわち「歯の欠けた胡人の爺さん」とは達磨のことです。
達磨は、座禅をしまくったせいで手足が腐り落ちたという逸話で有名ですが、達磨を嫉み憎んだ人々から石を投げられたり毒を盛られたりしたせいで歯が欠けてしまったという逸話もあるそうです。この逸話に基づいた呼び名でしょう。
謝三郎とは、玄沙師備のことだそうです。
謝家の三男というような意味合いでしょうか。
この人は雪峰の弟子で、とても厳しい修行を自らに課す人だったのだそうです。人から「奇人」と怖れられるに至るほどのストイックさは、達磨に相通ずるところがあるようにも感じられます。
雪峰に「どうして各地のお堂を行脚しないの?」と訊ねられたとき「達磨は東方には行かなかったし、二祖は西方には行かなかった」と答えたという逸話が残っていますが、これは今回の公案にはさほど関係がないでしょうか。
四字とは銭に刻印された四つの文字のことらしいです。
達磨は文字が読めない人だったというのが「謝三郎四字を識らず」という文章に繋がったのでしょうが、この文章がどういう意味を持つのか、まだピンときていないので、そのまま書いておきます。
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