無門関第四十六則「竿頭進歩」⑤
無門関第四十六則「竿頭進歩」について綴っています。
公案の現代語訳は、こちら。
ヤバい講習会シリーズ5日目から。
この頃から、受講者に、いろんな変化が表れます。
6日目からは、日常の軽作業を体験しながら、会での暮らしについて教わります。
初日でもサラッとは触れられますが、初日とは、受講者の反応がかなり違ってきます。
詳しい内容は割愛しますが、要は、初日に比べて「話されることが、受講者の頭にダイレクトに染みこんでしまう」ということです。
これ、恐ろしいのは、受講者側が、素直に聞いてるか、斜に構えて聞いてるかが、初日に比べると、比較的関係なくなり始める、という点です。
様々な意識の関所をフリーパスに近い状態で、脳の意識の奥底にすり込まれる。そんな傾向が強くなります。
通常なら明らかに拒否反応を覚えるような内容でも、程度の差はあれ、何となく頭にすり込まれてしまう。
さらに。
受講者の日常の状態にも変化が表れます。
曰く、
「ここに来る前と比べて、景色がとても美しく見える」
「トイレが薔薇のようないい香りだった。
その香りにうっとりしながら、素手で便器を掃除した」
(※消臭剤すら置かれていない和式トイレです)
「神々しい声が聞こえた」
「強い光が自分を包んだ」
「少し高いところから、考えている自分を見下ろしていた」
「今回知り合った皆さんの考えていることがよくわかるようになった。
繋がっていて、ひとつなんだということが、実感できた」
などなど。他にもいろいろあります。
人によって違います。勿論全然ない人もいます。
6日目からは、これまでのような、集中して思考する講習はありません。
しかし、軽作業をしているときや、食事のときなど、折々に、会の人から、世間話のような雰囲気で、ちょっとしたテーマが投げかけられます。
例えば、その日の食事メニューがハンバーグだったとします。
すると、食事中、会側の係の人が、こんなことを言います。
「ハンバーグは、いつから、ハンバーグではなくなるんでしょう。
ハンバーグだったものは、どこに行ったんでしょう」
真剣に考えろとは言われません。
しかし、ひとつのことをずっと考えさせられた今回の体験により、受講者は投げかけられたテーマを、自発的に考え始めるようになります。
結局、非日常の空間で、ずっと何かを考え続けたまま、最終日を迎えます。
この日が、講習のクライマックスです。
講習会最終日。
受講者は、いつもの広間に集められます。
ここ2日間は、比較的和やかな時間が続きました。
しかし、最後までそのまま平和に終わると思ったら、大間違いです。
最後のお題が、進行役から出されます。
「あなたは、このままここに、残れますか?」
ちなみに。
詳細は書きませんが、「ここに残る」ということは、具体的に言うと、「家も家族も友人も仕事も捨てる」「資産は無条件ですべて会に寄付する」を実行するということでもあります。
流石に、受講者からは拒否反応がでます。
しかし、進行役は迫るのです。
「ここに、残れますか?」
これまでに何度も見た、厳しい顔と声で。
受講者の反応に、少しずつ変化が生じます。
「すぐに戻ってきますが、今日は帰らせてください」
「体は帰りますが、心は残っています」
会へのおもねり、従属度が増した解答が増え始めます。
しかし、それでも進行役の態度は軟化しません。
「このままここに、残れますか?」
そして、最初の一人が出現します。
「残れます」
さて、予定の時間が来たら、やっぱり進行役は、スッと穏やかな顔になり、「これで、講習は全て終わりました」と受講者に告げます。
「残れるかどうか、真剣に考えてみて、どうでしたか?」とやはり穏やかに告げるだけです。
そうか、これは、「講習」の「課題」だったんだ。
監禁されようとしたわけじゃない。帰れるんだ。
受講者に、ほっとした空気が流れます。
実際、帰る人は普通にそのまま帰れるし、その際には最初の言葉通り、預かった所持品はちゃんと返してもらえます。
帰る人は。
つまり、先程ちらっと書いたような多くの条件を全て受け入れて、会に残る人も、いるわけです。
その人は、具体的な入会の手続きに入ります。
どうです?
ここまででも、なかなか怖い話でしょう?
しかし、本当に寒気がするのは、ここからです。
これを読んで、「怪しいものからは逃げりゃいいのに」「オレは大丈夫。絶対入りたいと思わないもん」「入る奴は、意志が弱いか、頭が悪いんじゃねぇの?」と思った人、結構いると思うんですよ。
そんなあなたのために、次回、別の角度から綴ってまとめます。
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