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子どもの未来と心の健康

子供の頃の心の健康が大人になってからの心の健康を左右すると聞かされていたら、そして、心の健康が人生の成功を大きく左右すると聞かされていたら、きっと違った子育て方法を試したのではないでしょうか?

心の問題を抱える大人が増えているのは、子供の頃に刻まれた感情や気持ちの表現方法に深く根ざしていると言われています。問題は、社会全体として感情リテラシーが欠如していることにあります。子供を授かり親になる大人に対して、子供の気持ちや感情に共感することや思いやりをもって接する具体的な方法を教えているところはどれぐらいあるのでしょうか?幼児教育に関しては、幼少期からの読み、書き、そろばんが現在でも主流で、少し変わったところでは、音楽やお絵かきなどで創造性を養うと言いつつも、IQ を重視する点は基本的に変わりません。確かに、幼いころからそろばんを習うことで計算が速くなったり、音楽に触れることで音感が良くなったりする効果はあります。しかし、それらの特技が人生に与える影響と、心の健康が与える影響を比べた場合、両者の重要度は全く異なるのではないでしょうか?

今回はこの子供の心の問題に関して TED の動画などを参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。


感情的に聡明な子供の育て方

この動画は、子供の心を育てる際には、子供が感じる安心感が大切であることを伝えています。嬉しいことも、悲しいことも、楽しいことも、腹が立つことも、子供が心の中で感じたすべての感情を、安心して表現できる安心感が、子供の心を育てるうえで大切なようです。その安心感は、周りの大人の態度によって育まれます。好奇心をもって子供の話を聞く、抱きしめてあげる、そんな親の行動が子供を安心させ、心を育てます。

また、子育て中に気を付けなければいけない二つの兆候も紹介しています。

引きこもり (Repression)

子供の頃、自分の感情を表現することに不安を感じたとしましょう。もしかしたら、泣いているときに「泣くな」と注意され、心を閉ざさざるを得なかったのかもしれません。もしかしたら、心の中にあるものをすべてさらけ出さなければいけないような辛い経験をしたのかもしれません。すると子供は、そうした状況や感情に対処する自分なりの方法を見つけなければなりません。そしてほとんどの場合、自分の感情や感覚を抑え込み、引きこもることを学んでしまうようです。

子供の頃に学んだその感情と行動は、大人になっても忘れることはありませんし、ふとした瞬間に現れるものです。一方、大人になると、子供の頃とは違う方法でそれが現れることがあります。お酒を飲みすぎたり、意味なくインスタグラムをスクロールしたり、とにかく音楽を聞いて時間をつぶしたり。

攻撃性 (Aggression)

子供の頃、自分の気持ちを自由に話したり表現したりすることができなかったりすると、その経験は心を傷つけます。そのような心の傷は、有害な脳内のおしゃべりによって時間をかけて増幅され、心をむしばんでいきます。そして、傷ついた心が恐怖や脅威を感じると、攻撃的になったり、怒りっぽくなったり、大声で話したりするようになってしまうことがあります。また、子供は自分の気持ちを表現しているだけなのに、大人からトラブルが多いというレッテルを貼られることもあります。そのような攻撃的な傾向は、他人に対するいじめや暴力だけでなく、自分自身に対する厳しい批判的な考えとなって現れることもあります。

こじれた親子関係を修復する戦術

まずは、この動画に出てくるストーリーを紹介します。

ある日曜日の夜。母親は台所にいました。家族のために夕食を作り終えたばかりですが、仕事に関する悩みを抱えていて、イライラしていました。これからの1週間のことで疲れきっていて、よく眠れていません。大きな仕事があり、プレッシャーと不安で気がめいっていました。そこに、息子がキッチンへ来て、テーブルを見て、そして、不機嫌そうにこう言いました。
息子: 「えー、またチキンなの?」
たったそれだけなのですが、母親はキレました。息子に怒鳴りました。

The Single Most Important Parenting Strategy | Becky Kennedy | TED - YouTube

親子に限らず、パートナー同士、職場など、そのような感情的なやり取りの結果、とても気まずい雰囲気になってしまい、後から後悔してしまうことは皆さんも経験があるのではないでしょうか?起こってしまった事件を悔やんでも先に進むことはできないことはわかっていても、どうすれば、そのような失敗から克服して、関係を修復することができるのでしょうか?動画ではとてもシンプルな二つのステップを紹介しています。皆さんも試してみてはいかがでしょうか?

ステップ1:自分自身を修復する

まず、二人の関係を修復する前に、自分自身の問題点を修復することの大切さを動画では伝えています。つまり、もし次に同じ場面に遭遇しても、同じ失敗をしない自分に生まれ変わるのです。そのために、自分自身を二つに分割して考える方法を提案しています。「現在」の自分と「過去」の自分です。

生まれ変わる「現在」の自分を強く意識しつつ、一方で、過ちを犯した「過去」の自分を認識します。「現在」と「過去」の自分を別々に認識できるようになるには、瞑想が効果的です。瞑想によって「現在」の自分を認識する感覚を養うことができれば、「過去」の自分をより適切な視点で認識できるようになります。

決して「過去」の自分から認識しようとしてはいけません。「過去」は脳に記憶されているため、とても簡単に行うことができてしまいます。このようなアプローチの難しさは、「現在」の自分とは何であるのかを認識することにあり、そこから相対的に過去を見つめる必要があります。そして、この問題に対して、瞑想はとても科学的なアプローチです。

「過去」の自分の過ちを反省する際には、内省を活用します。頭の中で過去の過ちの場面を思い出し、生まれ変わる自分ならばどう行動したのか何度かシミュレーションすると良いでしょう。もし、良い修正方法が思いつかないときは、誰かに相談しましょう。

このとき重要なのは、上書きすることです。「過ちを犯さないようにする」のではなく、「○○をする」と、過ちではない別の行動を明確にし、過去の間違った行動とは別の行動によって上書きすることが大切です。「○○しないようにする」という反省はうまくいきません。何をしてよいのかわからなければ、同じ過ちを犯してしまうでしょう。古い行動を新しい行動で上書きしてしまうことで、「現在」の自分は生まれ変わるのです。

ステップ2:関係を修復する

自分の過ちであったこと、相手の過ちではないこと、そして、自分のすべきだった行動を伝え、お互いにつらい思いをしたことを共感します。この際のポイントは、相手に対するあなたの言語、非言語的な表現方法です。言葉と心が不一致では、表情や態度に現れます。感情は伝染することを忘れてはいけません。この時点では、まだ相手はあなたに対して懐疑的なはずです。したがって、相手はポジティブな感情よりもネガティブな感情に対して敏感に反応するでしょう。

このステップを成功させるカギは、自己認知を通じて自分自身を修復することです。もしこのステップが難しいと感じているときは、自己修復が不完全である可能性を疑ってみましょう。

「いないいないばあっ!」は世界を変えられる

この動画は、2021年7月現在、TEDの最年少スピーカーの一人であるモリーが、子供が5歳になるまでの健全な成長は、その後の人生の基礎を築く非常に重要な時期であることを訴えています。特に、脳の基本的な構造は、母親のお腹の中にいるときから構築されていき、5歳の時に大人の体積のおよそ90%までに成長します。いわゆる遺伝子が基本的な設計図を提供しますが、その遺伝子によって実際に作られる脳は、目、耳、鼻などの五感を通して得られる経験によって大きく影響されます。また、この時期の脳の成長速度が示すように、人生において脳が外部に最も適応する時期でもあります。

そして、発達中の脳の構造を形成する上で最も重要な経験として、親子間の「サーブ&リターン」と呼ぶ、コミュニケーションのラリーを提案しています。具体的には、子供と「つながり」、「おしゃべり」し、そして「遊ぶ」ということです。例えば、子供が大人のモノマネをする遊びは、想像力と共感力を養います。言葉遊びは、語彙力と注意力を養います。いないいないばあっ!は記憶力と信頼感を育みます。話しかけたり、一緒に遊んだり、笑わせたりするたびに、人間関係や心の健康が築かれていくのです。幼い時から、そして何度も触れ合うことが大切です。この往復のプロセスは、幼児期における脳の発達にとても重要なものとなります。

一方で、幼い脳は逆境に対処する方法も学んでいきます。幼児がストレスを感じると泣いたりしてそれを表現します。短期的なストレス反応は、健全な成長を促進しますが、親のサポートのないストレス状態が長く続くと、成長に悪影響を及ぼしてしまうのです。

単に子供におもちゃを与えて、一人で静かに楽しんでいるだけでは、この成長は限定的なものになってしまうでしょう。一方で、「サーブ&リターン」は日々の積み重ねがとても大切です。それが子供の人生の成功を左右する可能性を考えれば、育児休暇などの会社の制度を積極的に活用し、価値ある時間を過ごしたいと考えるのではないでしょうか?もし、積極的に制度を活用できている親御さんが近くにいらっしゃるのであれば、話を聞いてみるのも良いでしょう。


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