【長編小説】踊る骨 エピローグ/高村恵子
エピローグ
「亜美ちゃん、おはよう。気分はどう?」
高村恵子はいつものように亜美の骨にむかって話しかけていた。左手の親指の第一関節から先の小さな骨だ。
彼女は亜美の両腕が助けをもとめるように青いシートを持ち上げていたという話を人づてに聞いたにすぎなかったが、その光景をありありと思い浮べることができた。
どんなに淋しかったことだろう。
どんなに恐かったことだろう。
まだ五つになったばかりなのに、それはあの子にとって、死よりも辛かったに違いない。
亜美が指を吸うこ