第三章 人間の顔とは何か?-005
顔とは何か?
胎児の研究をした解剖学者が
「お母さんのお腹の中の胎児の顔から、魚類、両生類、
そして哺乳類の顔の進化の変遷の歴史を読み取ることができる」と、
述べています。*1
やがてお母さんが出産を迎えると、
その顔は人間の赤ちゃんの顔として登場してくるのです。
他の動物に比べて、人間の赤ちゃんがユニークなところは、
誕生してすぐに喜怒哀楽や奇声を表出することです。
他の霊長類の赤ちゃんはお母さんの体にしがみつき、
その手によるボディータッチによって母親はその要求に応えます。
なぜなら人間の赤ちゃんのように、
奇声を発れば母子共に捕食者に狙われやすい存在となってしまうのです。
不思議なことに、人間の赤ちゃんは自分のして欲しいことを
「対面」によって、その能力を発揮し始めます。
このことによっておっぱいが欲しい、腸の調子はいいよ、
早くおしめを変えて、とお母さんに気持ちを伝えるのです。
あごから、巧みな非言語コミュニケーションとわずかな
言語コミュニケーションを使って、
こころを表出させる能力をすでに持ちあわせて生まれてくるのです。
生後1年も経ると、お母さんは赤ちゃんのこころから発する
この二つの情報(表情と発語)を同時に入力することがによって、
こころの具体的内容をキャッチできるようになります。
そのことによって、お母さんは赤ちゃんに
「どうしたいの?」
「何が欲しいの?」と
具体的な質問を投げかけるようになります。
この人間らしい食べて生きる姿を確認したのち、
おおよそ3歳となった人間の子どもたちは、
第三者の大人の元で教育を受けることになります。
幼稚園もしくは保育園デビューという現象です。
*1 生命形態序説 三木成夫著 うぶすな書院 1992年