第二章 食べて生きるための進化とは?-003
3.雑食が体を進化させる
直立二足歩行によって前手を移動手段から開放し、
道具の開発と利用を始めました。
もともと草食動物だった霊長類である人類は、
雑食動物として旬のものを少量、たくさんの種類
(葉、野菜、種子、果物、小動物やその死骸をナマで食べた)から
食するトライアンドエラーを開始しました。*1、2
のちにご紹介しますが、
自然の動植物は食べられないようにするために、
毒を含ませています。
このため、他の動物は自分の食べられるものしか食べないのです。
しかしどこかの時点で、
人類は食べるための生死を分けるトライアンドエラーを始めたのです。
なぜそのような決断をしたのか?
は、想像するしかありません。
肉食を取り入れると、
腸での消化吸収に使うエネルギーを節約できるようになりました。
このことによって腸は短くなっていきました。*3
このことによって、体の形は釣鐘型から円形へと変化しました。
(ゴリラは葉っぱを消化吸収するために長い腸が必要です。
だからお腹が大きいのです)
狩猟を集団化するようになり、
霊長類独特の大きな犬歯は小さくなりました。
他の動物のようにあごから直接捕食にする必要がなくなり、
また他の集団との戦いに用いる必要もなくなったのです。*4
そのかわり、より硬い食べ物を噛み砕けるように、
歯の表面を覆うエナメル質が厚くなりました。*5
やがて肉食は、脳の拡大に一躍を担い始めます。*6
腸での余ったエネルギーを、脳の拡大に利用し始めたのです。
なぜなら肉は、
葉の10~20倍、果実の2~5倍のカロリーを含んでおり、
しかも栄養価の高い食べ物なのです。*7
ところで霊長類学者は、
移動手段としての足のことをこのように語ります。
「四手動物の後ろの手を、人間が足に進化させたことも注目に値します」と。
人間独特の直立二足歩行は他の動物にはない、
新たなる姿勢制御を作り出したことを指摘しています。
(このポイントも重要です)
ゴリラは二本足で歩くこともありますが、
背中はストレートですが、人間のそれは湾曲しています。
*1 R. Wrangham. Catching Fire: How Cooking Made Us Human (English Edition). Basic Books (2009).「火の賜物:ヒトは料理で進化した」 リチャード・ランガム著、依田卓巳訳、NTT出版、(2010年)
*2 <Toumai >:https//www.futura-sciences.com/planete/definitions/paleontologie-toumai-17044/
*3 L. C. Aiello.and P.Wheeler.The Expensive-Tissue Hypothesis: The brain and the Digestive System in Human and Primate Evolution. Current Anthropology (1995)36:199-221.
*4 O. Lovejoy. Reexamining human origins in the light of Ardipithecus. Science (2009)326(5949)74-74e8; J. M. Plavcan.I nferring social behavior from sexual dimorphism in the fossil record. Journal of Human Evolution (2000)39(3)327-44; W. L. Hylander. Functional links between canine height and jaw gape in catarrhines with special reference to early hominins. American Journal of Physical Anthropology (2013)150(2):247-59.
*5 P. W. Lucas. Dental function morphology. How teeth work. - Cambridge, Cambridge University Press (2004).
*6 W. R. Leonard, J. J. Snodgrass and M. L. Robertson. Evolutionary Perspectives on Fat Ingestion and Metabolism in Humans,” in Fat Detection: Taste, Texture, and Post Ingestive Effects, ed J. P. Montmayeur and J. le Coutre. Boca Raton,FL; CRC Press. (2010)
*7「家族進化論」第二章・第16節 脳の増大と食の改変 山極寿一著、東京大学出版、(2012年)
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