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自分がなりたいと思っているその「何か」に、今すぐになれる方法

そんな方法があったとしたら、皆さんは試してみたいと思いますか?
今日はその方法についてお伝えする記事です。


先日、夢と職業って必ずしも結びつけて考えなくていいよね、ということをこちらの記事の中で書きました。


私は、「書く」ということに関わる仕事に就くのが学生時代の夢だったのですが、その夢をあきらめて公務員になりました。でも、若手公務員向けの本を出させていただくことになり、仕事にしなくても「書く」ことと関わることができて、夢が叶いました。

仕事にしなくても夢はかなう。

つまりは、夢と職業は必ずしもつながっている必要はなくて、職業とは別のところで夢をかなえることってできるということを体験できたのです。


この夢と職業のことを書きながら思い出したのが、沢木耕太郎さんの本に出てきた名刺のエピソードでした。


沢木耕太郎さんの『路上の視野』(文藝春秋)というエッセイ集に収められている『ささやかな発端』という話があります。
大学を卒業して就職するはずだった会社を1日で退職した後、これからルポライターとして初めてのルポタージュを書こうとしている沢木耕太郎さんに、初めての名刺をつくってあげることにしたイラストレーターの黒田征太郎さんが、こんな風に語りかけます。

「いや、そうじゃない。名刺にルポライターと書けば、あなたはもうルポライターなんですよ。イラストレーターと書けば、イラストレーターだ。誰だってどんな者にもなれるんです」

私はこの言葉を読んで、とても興奮したのを憶えています。ひと言で言うと「これはすごいことだぞ!」という気持ち。

ここで黒田征太郎さんが「いや、そうじゃない」と切り出しているのは、この言葉の前に沢木耕太郎さんが、まだルポタージュを書いたわけじゃないので、名刺にルポライターとは書けないし……とつぶやいたのを否定しているんです。

ルポタージュを書いたことがないから名刺にルポライターと書けないと思っている沢木耕太郎さんに、名刺にルポライターと書けば、あなたはもうルポライターだと応える黒田征太郎さん。


私は以前、妻が「料理研究家になりたい」と言ったときに、この沢木耕太郎さんのエピソードを憶えていて、「じゃあ、まずは料理研究家の名刺をつくろう」と話したことがあります。


大切なのは、実績を積んで「そろそろいいんじゃない」と周りも自分も思えるようになってからルポライターと名乗るのではなくて、ルポライターとして実績を積むために、まったく実績がない最初から「ルポライターです」と名乗るということ。

もちろんルポライターはあくまでひとつの例。

ファシリテーターになりたかったらファシリテーターだと名乗り、芸人になりたかったら芸人だと名乗り、コミュニティデザイナーになりたかったらコミュニティデザイナーだと名乗る。

名乗ることから始める。

ファシリテーターになってから、芸人になってから、コミュニティデザイナーになってから、そのように名乗るのではなくて。


名乗る方法として最も手っ取り早いのが名刺をつくること。

もちろん、名刺をつくることだけではなくて、ブログやSNSのプロフィール欄に書いてもいいし、実際にブログなどで「私はコミュニティデザイナーです!」と発信してもいいでしょう。
いずれにしても「名乗る」という行為は人に伝わってはじめて意味を成すので、伝える媒体が必要。その媒体として何が相応しいのかを考えるのも、その何者かになる第一歩なのです。


名乗ると何が起こるか。
実際には何も起こりません。

少なくとも、私たちのような普通の一般人が、急に「ライター」とか「ファシリテーター」とか「芸人」とか「コミュニティデザイナー」とか名乗ったところで、目に見える変化はないでしょう。

でも、自分自身の心の中に大きな変化が起こります。

もしかしたら急に「来月、私たちのワークショップでファシリテーターをやってください!」と依頼が来てしまうかもしれません(実際には依頼は来ないんですけど、自分はそう思いたい)。
だから、その名刺に相応しいスキルや知識を身に付けるために、勉強も訓練もするようになります。名前負けしないように頑張ります。ファシリテーターと名乗ってるのに、ファシリテーション出来なかったら恥ずかしいだけではなく、依頼主に迷惑がかかりますから。


でも、いつまでもドキドキしながら準備をしていても仕方がありません。やはり実績は大切。

どうやって最初の頃の実績をつくるのか。
それは自分でつくればいいのです。

絵でも文章でも動画でも、創作系なら今は自分で創ったものをインターネット上で公開することができます。
講演や研修の講師でもファシリテーターでもコーチングでも、対人で実施するものであれば自分が主催したり、体験してくれる人を募ればいい。

これらは立派な実績です。

自分で実績をつくろうとすると「否定されたり、うまくできなかったらどうしよう」と思う、自分の恐怖心に邪魔されるかもしれません。

でも、大丈夫です。

まだ名乗っただけの私たちの作品は誰も見ていませんし、自主開催のイベントに急に200人も集まったりしませんから。

むしろ背伸びしても小さな実績しかつくれないうちが、失敗したり、恥ずかしい思いをするチャンスです。


そうやってドキドキしながら準備をしたり、失敗しながら小さな実績をつくっている間に少しずつですが周りの人たちの認知が変わってきます

すると、実績のあるプロには頼めない、「辺縁部の仕事」の情報が届くようになったりします。予算がないからちゃんとしたプロには頼めなくて、無償でも経験を積めるならやりたいと言ってくれるアマチュアを探しているような事案。
勉強のため、ネットワークづくりのため、その界隈の実態を知るために、自分が名乗ったその何かに関係するコミュニティに参加することもあると思いますが、そういうコミュニティで「辺縁部の仕事」の情報が手に入ることもあります。


自分の手による実績づくり、アマチュアレベルの実績づくり、これらを行ったり来たりしつつ、それぞれのstepで必要なことを学んだりしながら、常に実績は発信をし続けるのがおススメです。
実績の発信が狼煙(のろし)となって「ここにコレができる人がいますよ~」と周知してくれるので、さらに他人からの依頼を呼び込むことになります。いずれその依頼の中に、プロとしてお願いしたいというものが混ざってくるかもしれません。


step 1 名乗る(名刺をつくったり)
step 2 準備をしつつ自分で実績をつくる
step 3 他人からの依頼でアマチュアレベルの実績をつくる
step 4 他人からプロとしての依頼を受ける


step3~4に進むまでに、就職などでなりたい何かが生業になることもあるかもしれません。そうなったら幸せですよね。

でも、すぐに転職するのが難しい場合や、趣味や副業としてやりたいという場合もあるはず。そういう場合は、やはり「なりたい何か」と職業は切り離して考えることになるのでしょうね。



なりたいものがあるのに、万全の準備を整えて、名乗る資格を十分に得てから「なる」のでは、いつまでも「なる」ことはできません。

未だ「なる」ことができていないあなたに、名乗るだけの資格を十分に与えてくれるような依頼主は現れません。だって、未だ「なる」ことができていないのですから。


だから、どうしたら「自分がなりたい思っているその「何か」」になれるのかの答えは、

たった今、世界に向けて「私は○○です」と名乗る

ことです。



前述したイラストレーターの黒田征太郎さんの言葉、

「いや、そうじゃない。名刺にルポライターと書けば、あなたはもうルポライターなんですよ。イラストレーターと書けば、イラストレーターだ。誰だってどんな者にもなれるんです」

この後には、こう続きます。

「だが、そのあとのことはわからない」


なりたいものがあるなら、名刺をつくったり、SNSのプロフィールに書き込むなりして「なってしまったらいい」。

本当に大切なのはそのあと。

なってからどのように行動できるかです。


皆さんは如何お考えでしょうか。


あ、国家資格キャリアコンサルタントのように、名称独占というルールもあるので、それは注意してくださいね。(言うまでもないかもしれませんが)

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