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【中編】ぼくが女編集長のセクハラを受け肉欲に絆され快楽堕ちするまで。

前回までのあらすじ ↓ ↓ ↓ ↓


―――
ホテル高層階の廊下は音を失いじっと佇んでいる
鳴り響く革靴の足音はボクのものだ
視線の先はひんやりと正確にパースがかかり、ボクを目的地まで いざな
景色はその豪奢 ごうしゃな色合いとは裏腹に幽幽たる質感を まとっていた。

ボクはからからの口腔内を絞り唾を飲んだ
今ならドアノブに触れた指先の律動すら明白に感じ取れる
その緊張感すらも たぎりへと変容し循環され、
ボク自身の一箇所へ執拗に送り出される。


ガチャ

「あれ…。」

ドアにはロックが掛かっていた
視界を上げ部屋を確認するボク。
それと同時に内側からゆっくりとドアが開かれた。

「いらっしゃい」
「ごめんね、半開きにしておくわけにもいかなくて(笑)」

淫魔は賢者に打ち果たされたか
それともあれはボクの底意に眠る夢魔が見せた眩惑か
ドアの向こうに居たのはいつもの優しい彼女だった
半ば正体不明の影に怯え戸惑うボクは
恐る恐る歩を踏み出し彼女の部屋に吸い込まれた。



「ふーっ
 よかったわねボクくん。
 首尾よく事を終えて、
 おいしいお料理にも有り付けたでしょ? 」


「へへへ…。
 はい、さすが高級ホテルのバイキングですね。
 骨からステーキ目の前で切ってもらったの初めてです。(ローストビーフのこと) 」



よかったね、と微笑む彼女は話題を挿げ替えこう続ける。



「売れ行き、好調よ。」



彼女はMacBookを取り出し
得意げな表情で当該作品の売上推移を見せつけてきた。



「最近はこのジャンルもシビアでねー、
 初刷が1万2500…
 で、二週目でここまで捌けてれば、続刊どころか重版も見込める水準ね。」

「ま、とは言え最近じゃ、
 Amazonの事前予約分で大凡の売上は出ちゃうんだけどね?(笑)
 それじゃつまらないじゃない。」



彼女はボクに振り返り、
きらり
放胆 ほうたんな笑みを見せた。
そんな彼女を見てボクの心がぽわっと沸き立つ。


ああ、
彼女は闘うことが好きなんだろう
彼女は馬を駆り、槍を振るう女傑アマゾーンだ
光を絶やさず矜恃で以て実直に突き進む彼女に、
ボクは敬意を超えた好意を抱いていたのだ。


そう心で噛み締めた矢先だった、
またあの淫魔の囁き声が、ボクの耳元にそっと、
ただ確かに聞こえてきたんだ。



「ボクくん、こっちおいで?」



スイートルームから眼下に見る景色は既に深淵を孕んでいた。

街の灯りはボクの頼りない両眼に光芒 こうぼうと映り込み、
しかし曖昧に揺らめくそれらは暖かく明瞭に活気づいていて、
この街の人々の強い呼吸を感じさせる。

手を伸ばしても一向に届かないこの乳白色の微光は
ボクにとってまるで星の群れだ。
南天から北天へと跨る銀河そのものなんだ。


―目の前の窓にぼんやりと反射するシルエットは
ふと無力感に支配されたボクだった。
その背後に音もなく回り込んでいた彼女の両手が、そっとボクの肩を包み込む。



「綺麗でしょ?」



たおやかに膝を曲げ
彼女はボクの耳元に言葉を吹き付ける。
その吐息に織り込まれた淫蕩の熱が今は暖かい。

ボクの意識が戻るのを待たず、
半ば身体を持ち上げられるように
後ろから羽交い締めにされる形で両の乳を揉みしだかれる。
薄手のシャツの衣擦れの音が
彼女のボルテージの燭台にひとつ飛ばしで火を灯していくのがわかった。



「二次会は私の部屋で、二人だけで。」



もはや彼女が何を言っていたかわからない。
ただ彼女は愉しんでいた。
けたたましく鳴り響くサイレンのように
ボクの脳髄を駆け巡る言葉は
多少のアルコールの侵入を許した身体には刺激が強すぎた。
頭がガンガンする。
気管が狭まったかのように呼吸が荒い。

やっとの思いでボクの口から発せられた言葉は


「編集長~~…ッッ」


情けない
それは命乞いにも等しい
あられもない服従の意思だった。
熱のせいかも満杯の感情のせいかもわからない涙を眼に溜めて。

ボクはくるりと反転させられ
その勢いのまま唇を食べられた。


はむ…

ちゅ…ちゅっ…
れろ…
れろ…


鼻息すら熱を帯び
濃厚な彼女の味が舌先から脳天へビリビリと伝導する。

小柄なボクと大きな彼女では従来の男女の力関係と異なり、
まるで蜘蛛か蟷螂 かまきりか、
交尾に ふける雌が目の前のパートナーを捕食するかのように
厚ぼったい唇で
長く太い舌で
硬く整った歯で
ボクの下顔面を所狭しと舐めずり制圧した。


後退りするボクは勢いよく窓に貼り付くと
彼女のその鋭い爪先が両の肩に突き立てられ
快楽と恐怖から来る震えを押さえ込む。
ボクはまるで猛禽類の大きな鉤爪に捉えられたかのように
服従し寵愛を受け入れる事しかできないでいた。


「…お酒、飲んだの?」


冷静な声音とは裏腹に
彼女の長く艶やかな黒髪は既に乱れ
顔面はほんのりと上気している。


「恐い?」


と尋ねくすりと微笑む彼女は
あの時現れた淫魔そのものだった。

応える間も余裕もなく
ただ身体を蹂躙され翻弄されるボク。

おもむろにズボンを引き剝がされるが
屹立した突起がパンツに引っかかる
布地の中央からは苦し紛れの体液が吐き出され、
既に情けなく染みを作っていた。

彼女はそれを視覚し、そしてまた微笑むと
そのまま這いずる蛇のように腰を落とし
怒張を口に頬張った。


おふ…

はふ…はふ…
じゅる…じゅっぽ!


アッ…!!ああー…ッ!っ!!」



自らの悲鳴に呼応するかのように
怒張はさらにその角度をのけ反るよう釣り上げ
ボクはびくびくと痺れるように身体を よじ

直後力任せにパンツを引き剥がされ
ビンと上下に震えるボク
間髪もなく彼女はそれを口に咥えねぶる。



じゅっぽ!
くちゅ…
くぽッ
ぐぽッ


あ!…ッ!!!」



熱く蕩ける口腔内は
ひとつひとつの細胞が意志を持ったかのように敏感な部位を喜ばせる
彼女は垂れる涎にも構わず
今度はボクの尻にがっしりと爪先を立てながら
窮屈なタイトスカートの中で股を割り
背筋をピンと伸ばし縦横無尽に
まるで儀式のように口淫を続ける。


ぐぽっ!
ぐぽっ!
じゅる…
じゅるり


あぁッ!!!あっ…!」


ボクは堪らず腰を引こうとするが身動きひとつ取れず
揺れる彼女の頭部に手を添え掴んだ。

刹那

ああこの感情はなんだ
胸に渦巻くこの感情はなんだ
このあさましくも尊い感情の正体はいったいなんなのだ。

眼下に広がる光景は
窓の外の星群よりも煌めき
建ち並ぶビル群よりもボクを圧倒するんだ。

鳩尾 みぞおちの奥に弾ける小さな泡沫は
ボクの一抹の支配欲の器から即刻溢れ出し、
脳髄が悦びに震える
根底に眠る毒蟲の心が暗々のうち目を覚まし
添えた手に力を込め、ボクは無我夢中で腰を振った。



こぽっ!
こっぽ!
こぽっ!

ぐぽっ!じゅる…くちゅっ



彼女はその たぎりも難なく受け入れ
前後のピストンに合わせ正反対に顔を突き動かす。



あッ…!?



ボクは突如込み上げる射精感に戸惑い、
今度こそ跳ね除けるよう腰を引く。



どろっ…

ぴゅっ!

ぴゅ…ぴゅ…



我先にと押し寄せた魂の第一軍が せきを切り噴出される。

たぱぱ
と飛沫は彼女のスーツを かす
床へと乱れ落ちた。


「ごめんなさい…っ」


咄嗟の爆発に我に帰ったボクは平謝り
ティッシュを探して視線をさ迷わせたその瞬間



ちゅるっ

ちゅぱ

ごぽッ
ごぽッ


「あッッ!!!あーっ…ッ!!」



ボクは許してはもらえなかった。

彼女の舌先は白濁した体液を絡め取り丹念に吸い上げ
また敏感になったボクの先端をあやす様にとろりと包み込んだ…。


意馬心猿 いばしんえん坩堝 るつぼ
ちらりと見やる窓の外は更なる闇を極め
薄ら輝く新月は尚も妖しく
本格的な深更 しんこうの訪れを予感させた。


【後編】
へ続く。

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