家族で旅して。~海を感じる篇~
夏休みのとある夜。
新宿バスタには、人が溢れていた。
新幹線の運休もあって、いつもより人が多い。
両親はお揃いのキャリーケースで現れた。
普段は都心にいない両親が、でかいターミナル駅を背に手を振る光景は違和感があるけど、「あぁ、旅に出るんだ」という実感が湧いた。
荷物を預け、乗り込んだ夜行バス。
前の席の野球少年は、寝心地が悪いのか落ち着きがなく、後ろのご婦人はバスが停まるたびに何か話していたから、常に誰か起きている気配があった。
カーテンの隙間から街がはっきり見えた頃、バスが停車した。今回は家族3人、兵庫県の三ノ宮駅を拠点に旅をする。
***
外はあいにくの曇り空。
今にも雨が落ちてきそうだった。
荷物をあずけて向かったのは、「海が見える古墳」。
最寄りの霞が丘駅から線路沿いを歩いていくと、穏やかな住宅街の中に突如古墳が現れた。
人は少なく、古墳独占状態。
あいにくの天気だったけれど、海に向かえば右手に明石海峡大橋、そして向かいに淡路島を望むことができた。
古墳は山側のイメージが強かったけれど、この辺りは海沿いの古墳が多いようだ。多分当時と全く同じではないだろうけど、海側にパァ〜と開けるこの景色を、古代人も見たんじゃないかなぁ。
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駅に戻ると、目の前で電車がいってしまった。
走れば間に合ったかもしれないけど、こういう時走るのはあまり好きじゃない。焦らずゆっくり上って、次の電車を待てばいい。ぽっとできた余白の時間はけっこう好きなんだ。
海の湿っぽい風に吹かれて、ぼーっとすれば、ほら、次の電車がやってきた。
乗客のまばらな車内で家族3人くっついて座ると、なんだか小さな頃にもどったみたいだった。こういう時、やっぱり子どもは、真ん中だよね。
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元町エリアは、春に旦那さんとも歩いた街。
…というのに、開店が遅い店が多いのをすっかり忘れていた。
ランチに行く予定のお店は12時開店なので、1時間ほど2度目ましての街にご挨拶してまわった。
ランチでお邪魔した「ビストロ卓」は、母がSNSの繋がりで出会ったお店。
いつもおいしいおやつを送ってもらっているので、レストランのご飯もきっとおいしいに違いないと期待していた。
そしていつものおやつも、今回はテイクアウト。
ネットでのご縁も特別だけれど、やっぱり会うっていいなぁ。
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ランチ後は、雑貨屋さんエリアをぶらり。
前来た時にいいなと思ったお店があるんだよ、と両親を連れてゆく。まさかこんなにすぐ神戸に戻ってくると思わなかったけど、土地のご縁ってあるんだな。
もう一つ目当てのお店は、どうやら「夏休み」らしい。
なんのお知らせも出ていないけれど、閉まっているなら仕方がない。こんなときはイライラしない。余裕のよっちゃんな大人でありたいのだ。
たとえバスの中で誰かうるさくても。
1日中歩いて汗でベトベトだったとしても。
イライラは自分の中から生まれてくるものだから。
そんなことに飲まれず、すっとかわしてみせたい。
そんな心持ちの30代。
旅はまだまだ続く。
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