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「志高く」バックナンバー③~お月様がおっかけてくる編~

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

今回は代表のブログ「志高く」のバックナンバーをお届けします。

新年と言えばまっさらな始まり。初心にかえることができるような回を再録しています。アルバムをめくるように、ホームビデオを見るように、絵本を読むように、大事な大事な最初の一歩を思い出します。

               ***

Vol.120「お父さん、お月様がおっかけてくるよ」
 
子どもの頃、車に乗って外を眺めていると、太陽がずっとついてくる、と感じたことを思い出した。

先日、サッカー観戦に行くために、5歳の長男と自転車で競技場を目指していたときに、「お父さん、お月様が見えるよ」となった。試合が始まる18時より少し前の話。まだ、東の空のそれほど高いところにはなかったので、「サッカー見ている頃には、もっと高い所まで来るよ」と返した。

19時を過ぎると、「お月様が大きくなったね、お父さん」。日が暮れて、輪郭がくっきりと浮かびあったので、そのように感じたのであろう。あと2、3日で満月になるようなものだった。

帰り道、「お父さん、お月様がおっかけてくるよ」の声。

「そういう風に見えるだけだよ」と説明すると、「何で?」と返ってきた。まずは、近くの木を、その後に遠くの電灯に注目させ、遠くにあるものの方が、あまり動いてないように見えることを体感させた。

「それと一緒で、月はものすごく遠くにあるからほとんど動いてないように見えるだけ」。
これにて、一件落着。子ども自身が納得したわけではないだろうが。

そこからは、ずっと月がどこに見えるかの話。曲がると、次は月がどっちの方向か、その次は、と言った具合に。

すると、今度は「雲がかかって見えづらくなったねぇ」となったので、「風が吹いたら、飛んでいくから、また見えるよ」と答えると、「お月様は飛んで行かないの?」という質問。

そして、雲の説明に移った。「雲は、小さい水が集まってできてるんだよ。それがたくさんになると雨になって落ちてくるんだよ」話しながら、それをどうやったら説明できるかを考えた。

風呂場の天井にシャワーで水をかけて、そのいくつかがまとまって落ちてくるのを見せればいいのでは、と考えてみたりした。

一方で、自分は小学校1年生の頃になっても、雲に乗れるかも、と考えていたので、「小さな水が集まってできている」と話すと夢見るチャンスを奪っているような気もした。

以前、親御様から「子どもと、どんな会話をするか」と尋ねられたときに、例を挙げると、「私はそんな風に話せない」とおっしゃられていたことがあった。

でも、きっと、うまく話せるか、正しく伝えられるか、はあまり重要ではない。博識な人からすると、私の話は、稚拙だと感じるだろう。

事実、「地球と月、どっちが大きいの?」と問われ「地球だよ」と答えたものの、確信が持てなくなった。また、「月が地球にぶつかると、どうなるの?」には、「ぶつからないけど、もしそうなったら大変なことになるぞ」と、実にいい加減なことを伝えた。

意見作文の中で、子どもが「大変なこと」なんて書こうものなら、「何や。大変って」と、必ずそこはもっと具体的に掘り下げさせる。

親が、子どもに一方的に教えて終わりではない。話していてちゃんと分かってないな、という部分があれば調べる。一緒にそれをしてもいい。

そして、自分の中の断片的な知識をつなぎ合わせて、そうだったのか、と納得する。その過程において、自分自身も理解する喜びを感じる。

子どもと会話をすると、すごく基本的なこと、いつも当たり前だと決めつけていることから考え始めなければいけない。自分自身がそれを繰り返すことで、きっと子どもにたちに伝える言葉にも、思いがこもる。

小さな子どもは、それほど難しいことを理解できない。だから、言葉や論理が洗練されている必要などない。でも、心、子どもに伝えてあげたい、と言う心、は、磨かれていた方がいい。

月の話をしようが、雲の話をしようが、そのこと自体を子どもは覚えていない。いつかそれを習ったときに、以前に一度聞いたことだから、とすぐに頭に入るわけでもない。

でも、物事に仕組みがある、ということを知れば、それは、身の回りのことに興味を持つきっかけにはなる。

「お父さん、何で?」と聞かれたとき、私自身は分かっていても、子どもに難しすぎる、となったら、すべての話をしないことがある。

そのときに、必ず伝えるのは、「それは少し難しいから今は話さないけど、いつかそれが分かるようになったら、すごく面白いんだよ」と言う言葉。これは明らかな刷り込み。あの手この手で、「面白い」を子どもの潜在意識にどっかりと座らせる。

「あの手」とは、ちゃんと説明すること。「この手」とは、「知ったら面白いよ」と、いかにもそうだと感じられるように伝えること。

寝る前に、「折角だから、今日はお月様の本を読もう」ということで、『おつきさまこんばんは』を読んであげた。

もっと小さかったころに、何度も読んであげたもの。短いので、最近ではあまり手にしなかったもの。雲がお月様を隠してしまう、という場面があるもの。

息子はこれまでと少し違ったものを感じ取ってくれたかな。それは少し欲張り過ぎか。月のことで、たくさん話ができて、私自身、いろいろ考えることができた。それで、十分。1回分の作文のテーマも提供してくれたし。

                      2013年8月27日 松蔭俊輔

※ホームページにて毎週火曜日に掲載している「志高く」については、以下のURLからご覧頂けます。なお、新年最初の更新は、1月10日火曜日の予定です。
志高塾代表・松蔭俊輔の『志高く』 | 西宮北口校・豊中校・高槻校 (shiko-juku.com)


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