生徒による作文~アンテナを張り、立ち止まれる人~
こんにちは、志高塾です。
久しぶりの更新となった今日は、高槻校に通う高校3年生の生徒による作文をご紹介いたします!扱ったテーマは、「SDGsに挙げられている目標の中から1つ以上を選び、その解決について考える(※)」というものです。
この作文がどのようなやりとりや修正を経て完成に至ったのか、社員の三浦によるコメントも最後に載せています。
作文を書く意義とは、よい作文とは何か。二人の文章をご覧頂ければ、きっとそれを具体的に感じ取って頂けるはずです。ぜひ、じっくりとお楽しみください!
(※)弊塾には「資料読解」といって、時事問題に関する資料やグラフを基に作文する教材があります。少子高齢化やエネルギー問題など、順を追って取り組んでいった集大成の設問が上記のものです。それぞれの目標が関連し合っているゆえに、その関係性を念頭に置いて意見を練らねばならない、手ごわいテーマとなっています。
高校3年生の生徒による作文
元男性で現在女性弁護士として活躍されている方が講演してくださったことがある。彼女は自分の生い立ちを中心に、誤解されがちなセクシュアルマイノリティについて語ってくれた。私は元々性的少数派に個人的な興味があり、自分なりに情報を集めていた。しかし実際に聞いてみると当人の言葉でしか表現できない感覚があったりと驚かされることが多々あった。
私はこの作文を書く過程で世界の問題について考えるため、俯瞰した視点をもって物事を観察し、文章を書いている気でいた。しかしいざ読み直してみると自分の狭い視界で見える一部分のみ考察しているに過ぎないと気づいた。ジェンダーに限らず、世の中に存在する不平等を解消するには正しい情報に基づいた理解が不可欠だ。そのためには個々人の努力に加えて事実に即した情報を受け取れる場が必要になる。
そういった機会を提供する取り組みとしてヒューマンライブラリーというものがある。ヒューマンライブラリーとは社会的少数派である人を"本"、来場者を"読者"とし、"本"の人にその特殊な経験について語ってもらうイベントだ。"本"の種類はLGBTの人、アルビノの人、犯罪歴を持つ人や元薬物中毒者など多岐に渡る。
人は知らない世界に目を向けているつもりでも自分の周りしか見えていないことがある。これを改善するのは非常に困難なことだ。よってヒューマンライブラリーなどといった未知の世界に触れるチャンスを掴むことが重要だと考える。想像もしてこなかったことについての生の知識を得ることでせめて自らの視野を広げることはできると思う。遠回りかもしれないが、もし一人一人が本当の意味で世界に目を向けることができたならば、SDGsの達成への大きな一歩になるのではないだろうか。
社員・三浦によるコメント
以下に補足として、どのような修正を行っていたのかを述べておきます。
初めは「質の高い教育をみんなに」の目標から、「私立に通っている自分だからこそ、こういった講演を聞く機会が多くある。だから教育の質を上げることがジェンダーの平等などに繋がっていく」という方向性でまとめていたのですが、半分ほど書き上げた際、「SDGsで挙げられている『質の高い教育』というのは、私立や公立というようなものではなく、もっと根本的な部分なのではないか」とふと手を止めていました。ここが作文の「自分の狭い視界で見える一部分のみ考察しているに過ぎないと気づいた」の部分です。
書き出していった後、こうして自分から立ち止まって考え直せる人は多くはいません。そして考え直した後、思い切って方向転換をできる人となると、もっと少なくなるはずです。方向性としてこちらが指導したのは、手を止めていた際に「教育に限らなくても、『関心を持つ』というアプローチはどの問題にも共通するので、教育以外の部分で方法を考えてみては」という点くらいでした。
彼女は生活のなかでよくアンテナを張っています。学校での講演の内容をすぐに思い返せたのも、ヒューマンライブラリーというアイデアを出せたのも、日々の中で色々なものを引き出しにしまっておけるからこそです。