【読書感想文】拝み屋怪談 花嫁の家/郷内心瞳 ※ネタバレ注意
本日の読書感想文はこちら。
『日本最恐』の呼び声も高いこちらの作品。
これは日本で確かにあった、花嫁を巡る悍ましき実話―――
『拝み屋』とは本来地味で目立たぬ仕事、但し例外もある
郷内さんが営む『拝み屋』とは、本来地味な仕事なのだそうです。依頼される仕事も地味だし、行う仕事もまた地味なもの。
でも、その中には何万分の一の確率でぶち当たる例外も存在する。それがこの作品に綴られているのです。
保存しては消え、パソコンが壊れ…それでも満身創痍で書き上げられた今作。想像を絶する実体験が、待ち受けています。
旧家・椚木家を取り巻く闇
立花昭代が田舎町にある旧家の椚木家に嫁いできたところから、すべては始まる。椚木家には夫の武徳と二人の妹、そして義母がいる。家族仲も良好で、特に不自由もなく暮らすことに。
だが、嫁いできてしばらく経った頃、昭代は真夜中に突然動物の雄叫びで目を覚ました。恐る恐る外を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。当然夫や義母にも相談するが、彼らはそんな雄叫びを聞いていないという。それでも昭代は確かに聞いているし、それ以降もその光景を目撃するようになる。その間に夫の妹二人は出ていき、長女と長男を授かって忙しくなったこともあり、話題にも出さないようにしていた。すると今度は、誰かが口ずさむ美しい歌声を聞いた。それを伝えると、急に義母と夫の態度がおかしくなり、罵詈雑言を浴びせるようになる。また長女は誰もいない空間に話しかけたり、「誰々がいなくなる」等予言めいたことを口にし、昭代を悩ませていく。辟易する昭代に更に追い打ちをかけるように、夫に最悪の出来事が…
怪異を目撃したことから、徐々に崩壊へと向かっていく椚木家。昭代が見た悍ましい光景とは、そして美しい歌声の正体とは。
郷内さんの元に集う話、辿り着いた鍵にきっと驚愕する
高鳥千草という若い女性からの連絡で、郷内さんの物語が動き出す。
亡くなった彼女の母親が夜な夜な現れるという依頼だったのだが、彼女の話はそれだけでは終わらなかった。彼女は幼い頃からこの世ならざるものを見たり、花嫁の幽霊を目撃するなど、そういった体質の持ち主であった。正直あまり関わりたくないと思っていた郷内さんだったが、そんな訳にもいかなくなる。
郷内さんの元には、いろんな客が訪れる。シングルマザーだった母親を亡くした女性、引きこもりの娘に困っていた女性、人の鼓膜を破ることが出来る息子を持った女性…並べて見ても、まったく共通点は見当たらない。
そして郷内さんの先輩である華原さんや水谷さんの元にも依頼が舞い込む。おかしな宗教にのめり込む父親を恨む女性、屋敷をお祓いしてほしいという女性…それらにも、特に共通点は見当たらない。
だが、郷内さんが千草と出会ったことで、今度はすべてのピースが埋まっていくことに。何もかもが繋がっている、その軸となるものは一体何か。
郷内さんはなんとかしたいと思うものの、華原さんや水谷さんは止めておくように忠告。先輩たちがこぞって阻止してくる案件、非常に危険であるが故身を引けということだった。
椚木家の闇、千草の過去、見えてくる共通点。それらが恐ろしいと思えるほど見事に綺麗な一本線を描いていきます。最早呪いの域でしょう。
また余談にはなりますが、拝み屋さんチーム以外の男性陣がほぼろくでもないです。特に芹沢真也という男が超危険人物であると同時に、まあ生粋のクズで…郷内さんが殴りたくなる気持ち、死ぬほどわかります。
『母』そして『花嫁』を巡る壮絶な闘いの末
反対を押し切り、千草に協力をすることとなった郷内さん。
だがその矢先、一番の危険人物である真也が二人に牙を向く。恐ろしいほどに執着を見せる真也は、容赦なく二人に襲い掛かる。結果、千草は幼い娘を残し――
怒りに燃える郷内さんだったが、千草の依頼を遂行するために再び動き出す。また真也とも対峙しなくてはならなくなってしまったが、先輩の華原さんの活躍もありなんとか撃退することに成功する。安堵したのもつかの間、呪いの毒牙は慈悲もなくまた一つの命を奪ってしまった。
激しい自責と後悔の念に駆られる郷内さんでしたが、周囲は責めることもしないし、優しく言葉を掛けてくれた。それは亡くなってしまった人も同じで、郷内さんに微笑みかけてくれる。
椚木家を中心とした、恐ろしき呪いの騒動。ハッピーエンドとはいかずとも、事態は収束へと向かっていく。
…と思いきや。
数年後、またしても呪いの因果に引き込まれてしまう。
あー、やっぱり真也殴りたくなるな…華原さんに盛大なる拍手を。
花嫁が亡くなってしまう家に嫁いだ女性
事件から数年後。霞という女性から依頼の連絡が来た。
彼女が嫁いだ海上家は、やってきた花嫁が何人も亡くなっている。覚悟の上で結婚したが、生きている心地がしないほどの恐怖に苛まれていた。更には白無垢を着た花嫁の夢まで見ているという。郷内さんは引き受けるものの、後に彼も後悔することに。
その家が守っているもの、それは花嫁を象った人形だった。人形といってもリアルってレベルでは追いつかないほど、一部は本物の人体を使っているという、最早ミイラに近いものだった。これが呪いや祟りの原因なのではと勘繰る郷内さんだが、家の人たちは頑なにそれを手放さない。引き下がるしかない郷内さんだったが、それはやがて恐ろしい事態を引き起こして…
花嫁しか共通点ないのでは?と思うかもしれませんが、驚くのは霞さんの過去を聞いてからです。やはり呪いは伝授する、そうとしか思えないほど意外なところから繋がりが発覚するのです。
そして本作の結末は、かなり苦いものとなってしまいます。この話は終始郷内さんが辛そうですが、最後の最後だけはちょっとだけ救われてるかもしれません。でもやっぱり苦すぎる。
『花嫁』に似つかわしくない恐怖体験、貴方は耐えられるか
「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、ここまで怖くなくてもいいのでは…
日本最恐とも言われる所以を身を持って感じられる作品です。
また人間関係のドロドロもあるし、親子間の捻じれもあるし、呪いの恐怖以外でも読むのに疲れてしまう箇所も多いです。まあ先に書いた通り、出てくる男性陣がクズで鬼畜ばっかりなので…
昼読んでも夜読んでも怖い実話怪談、覚悟して読んでください。
ではでは、また次の投稿まで。