【読書感想文】ずうのめ人形/澤村伊智 ※ネタバレ注意
本日の読書感想文はこちら。
人気の『比嘉姉妹シリーズ』第二作目。
呪いが伝授していく都市伝説の人形に立ち向かえ。
ある原稿を書いていたライターの不審死。そこに書かれていたものは
編集部に勤務する藤間は、締切になってもライターの湯水から連絡が来ないことに焦りを抱いていた。思い切って彼の部屋を訪ねてみると、そこには不審な死を遂げた湯水と、所々焼け焦げた原稿が存在していた。
原稿には、里穂というホラー好きの中学生の少女が父親から隠れて家族と生活している様子が描かれていた。学校では居場所がなく、唯一の友人は特殊学級に通う井原という男子。しかも映画【リング】が公開されてから『サダコ』という仇名で呼ばれるようになり、益々憂鬱な気分になる。
ある日、通っている図書館で交換ノートを紹介してもらう。自分が読んだ本の感想を書くと、ゆかりという人物から返信が来ていた。しばらくやり取りをしていると、ゆかりは『ずうのめ人形』という都市伝説を教えてくれた。だがその話を聞いてから、里穂は人形の夢を見るようになり―――
その話を聞くと呪いにかかる、定番なのにやっぱり怖いホラー。けれど、ちょっとどこか違和感を覚えることも。交換ノートに書かれていた、ということは…?
その原稿を読んだが最後、赤い糸に絡め取られる
編集部でアルバイトをしている岩田という大学生が、湯水の原稿を勝手に持ち出していた。しかも藤間にコピーまで渡してくる始末。とりあえず読んでみる藤間だったが、『ずうのめ人形』の部分だけがまともに読めなくなっていた一体何故?
訝しむ藤間だったが、その後突然岩田と連絡が取れなくなってしまう。ようやく取れたと思ったその矢先、電話の向こうで岩田は断末魔を上げる。その身体には無数の赤い糸が絡まっていたのだが、藤間以外にはその糸が見えていない。しかも藤間には、小さな人形の姿までもがはっきりと見えるようになっていた。
藤間と一緒にいたライターの野崎とその婚約者の真琴が相談に乗ってくれることとなり、更に真琴は一緒に原稿を読んでみるという。しかし、そこで予想外の事態が発覚する。里穂が通う中学校は、真琴の母校でもあった。つまり、これは創作ではなく実話。しかも読み進める内に、真琴の二番目の姉・美晴までもが関係していることを知る。そして美晴は、中学生で亡くなっており―――
ここで一気に比嘉姉妹が繋がりを持ち始め、ますます先が気になってしまう展開に。しかしいくら助けられる力があるとはいえ、呪われるかもしれない原稿を読むのは怖すぎますね…
美晴が辿り着いた呪いの元凶、そして里穂の結末は
しばらくして里穂は、ゆかりだという少女と親しくなり、家にまで行く仲に。しかし、ゆかりはどうしてもずうのめ人形の詳細を教えてくれなかった。それはどうしてか?
ある日、いじめっこに言われこっくりさんに強制参加させられた里穂だったが、そこで起こる不可解な出来事を理由にずうのめ人形の話をすることに。鼻で笑う彼女たちだったが、その後亡くなったことが全校集会で知らされる。やはり話を聞くとそうなってしまうのか?考える里穂の前に、比嘉美晴が現れる。
不遜な態度の美晴は、呪いなんてどうにか出来ると豪語し里穂から半ば強引に話を聞き出した。だが、美晴はある真相に辿り着いていた。呪いだけではない事実を暴いていた美晴は、気丈に立ち向かうものの前述の通り命を落とすことになる。果たして美晴が辿り着いた真相は?その真相を知った里穂が取った行動は?
ここから、里穂に対する見方が少しずつ変わってきます。ただのかわいそうな子だと思っていたのが、だんだんそうではないのか?と思えるシーンも増えてきます。また呪い殺された遺体の様子が怖すぎて…ぶちっていう音が想像を掻き立ててくるのがなんともグロテスクです。
呪いを断ち切るために明るみになっていく過去、そこまでに張り巡らされた伏線に驚愕する
呪いの毒牙は、藤間だけでなく真琴や野崎にも伸びて来ていた。刻一刻とその時が迫る、人形の姿が大きくなる。彼らは四方八方を駆けずり回り、里穂に関係することを片っ端から当たっていった。だが思わぬ形で、彼らは里穂に辿り着くこととなった。彼女が唯一親しくしていた、井原という男子。彼に会うことで、事態は終末に向かって舵を一気に切り始めた。
里穂の本当の姿、ゆかりちゃんの正体、呪いが迫る恐怖、そして意外な人物の行動―――呪いの『赤い糸』を断ち切れるか。
ここから一気にすべてが紐解かれていきますが、またしても最初から騙されていたことにようやく気付くわけです、だからどうして毎回毎回騙されるのか…しかもホラー小説なのに。
また呪いの襲い方が容赦なく、対象者だけではないことが恐ろしい。普通のホラーってその対象者のみが襲われるんですが、ずうのめ人形は呪いがとにかく強大です。知らないのにいきなり…とか、部屋にいるのが怖くなってしまいそうなレベルです。
ミステリー作品としても一級品、極上のホラーとどんでん返しを味わい尽くす傑作
ホラーとしての恐怖が満載なのに、そこにミステリー要素が加わるというとにかく面白い作品。澤村さんはそこの融合のさせ方が天才的なので、怖いのに続きを読みたくて仕方なくなってきます。
また実在するホラーの名作も多く出てくるので、ホラー好きな方は特に楽しめると思います。これ読んだら【リング】また観たくなる。
澤村さんの作品でもイチ押しのホラー、是非堪能してください。
ではでは、また次の投稿まで。