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【読書感想文】新耳袋 第四夜 現代百物語/木原浩勝+中山市朗 ※ネタバレ注意

本日の読書感想文はこちら。

実話怪談の先駆けとも言えるべき短編集。
その中でも『稀代の逸話』と呼ばれるものが…


実体験を文字に起こす実話怪談集

その名の通り、実際に起こった出来事を収録した作品集。
有名なのは郷内心瞳さんの【拝み屋シリーズ】もありますが、新耳袋は何度も映像化されるなどホラー好きなら一度は耳にしたことがある作品です。
ホラー作品なら恐怖体験→元凶の解明という流れが一種のお約束だったりする中、実話怪談というのは恐ろしい体験をしても結局わからない、みたいなことが多数です(私が昨年末に書いた実体験もそうですが)その分、読み手が想像するのも楽しみではあります。
またこのシリーズは長く続いていることもあって、ジャンルや数も非常に多いです。中には著者さん本人が体験しているものもあったりと、みんな少なからず体験しているのか…と驚かされます。
そんな膨大な中でも、特に有名な逸話があるのです。

著者が特別な体験と語る逸話【山の牧場】

これは中山さんが学生時代に体験した実話です。
あまりにも反響が大きく、中山さんも長らく封印されていたのですが、噂が風化してきた頃に満を持して解禁されたもの。
読んでみると、その異様さはすぐにわかると思います。

卒業制作の映画撮影、そこで偶然見つけたものは

中山さんが大学の卒業制作で映画を撮っていた時、仲間二名と村全体を見渡せる高台の撮影場所を探していた。なかなか条件を満たす場所がなかったのだが、ふと舗装されていない山道を見つける。
車一台がなんとか通れる道をひたすら上っていると、道脇に妙なものが置かれていた、『あと〇〇メートル』と白いペンキで書かれたドラム缶だった。導かれるように進んだ先、とうとう『終点』の文字が見える。そこは山の頂上で、広い草原が広がっている。そして一際目立つ、赤い屋根の大きな建物……牛舎であった。
しかもその状態はどう見ても異様だった。赤いトタン屋根の真ん中は鉄球でも落としたかのように大きなクレーターがあったが、肝心の牛舎の中は使用された様子もなくぴかぴかの状態。更にそのそばにトラクターがあったのだが、何故かひっくり返されている。まるで妙な力が作用しているかのようであった。
山に牧場があるというのは、特段不思議なことではありません。ただ使われた形跡もないし、おかしな跡があるし…異様なことが多すぎて初っ端から不気味です。

牛舎だけではない。そこにあるものすべてが異質

二つの牛舎に挟まれるように、コンクリートの少し小さな建物があった。中は実験室のようだったが、棚をはじめフラスコやビーカーなどがすべて粉々に破壊されていた。なにかがおかしい…中山さんたちは違和感を覚え始める。
別の二階建ての事務所は、一階は倉庫のようで大量の石灰が置かれていた。用途不明なそれもだが、もっとおかしいのは二階だった。居住スペースのようだが、二階へ上がる階段がないのである。普通絶対に有り得ない構造、一体何故なのか?
崖をのぼって庇からなんとか二階へと入ったが、そこには更におかしな空間が広がっていた。様々な姿の人形が床に転がり、その部屋全体にはびっしりとお札が貼られている。まだ色褪せている様子はない、ということは。
いよいよ不気味さが頂点へと達しようとしていた時、一行は決定的なものを目撃する。それは、襖にペンキで書かれた言葉―――
絶対何かあった、と思わざるを得ない言葉に震え上がること間違いなしです。短い簡単な言葉がここまで恐ろしいとは…様子から何から、絶対ただの牧場ではありませんね。

牧場?それともUFO基地?憶測飛び交う中で起こること

逃げるようにしてその場を後にした一行は、あの場所が一体何だったのか考察する。経営不振で破綻した牧場?だがそれにしては不審点がありすぎる。飼育の形跡がない、そもそもあの細い道での資材運搬は至難の技、更には生活が困難であろう建物の構造…答えなど見えてこない。
しかも、その地域はUFOがよく目撃されることでも有名であった。もしかしたらUFO基地なのでは?けれど地元の人ですら建物の存在を知らないという。
更には、その後も不思議なことが続く。後日牧場の写真を撮った後輩が一家ごと行方不明、地元の学校で大勢の人がUFO目撃、新しく経営者としてやって来た謎の人物、以前とは明らかに違う建物の様子…出てくる話すべてが奇怪なのである。一体あの牧場、ひいては山には何が眠っているのか。
ちなみに中山さんたちは撮影途中だったので当然カメラ持ってた訳ですが、撮影はしなかったらしいです。命の危険を感じたんだとか。そして撮影した後輩は家族ごと音信不通に…不穏な力が働きすぎですね。

まだまだ続く後日談、けれど謎は永遠に…

ちなみに、中山さんが書かれた【怪談狩り】という著書の中で、この続きが書かれています。
これだけ広まったのでTVや取材陣が放っておく訳もなく、いろんな人がその牧場を訪れます。しかし行くたびに様子が変わっている。結局無人となった牧場へ続く山道は通行止めになったが、次の取材では何故か綺麗に復旧している。更には炊事場やお風呂まで作られている。またまた次の取材では、牛舎が増築されていたり、お札が増えていたり、獣臭がしたり―――
どうも、裏で何かが働いているとかしか思えない様子がどんどん出てきて、嫌でも想像を掻き立てられます。ある意味大きな事故物件とも言えるでしょう。それでも中山さんがもうあそこには行かないと明記されているので、謎は謎のまま残っている状態です。命大事ですから…

絶対に行ってはいけない場所、それが存在した事実

幽霊が出るとか、惨い事件が起きたとか、そこは未だ解明されていません。でもここまで訳がわからないもののオンパレードだと、不気味と思わずにはいられません。しかも行方不明者までいるのですから…
ただ、山の牧場へ行った映像は残っているものもあります。【新耳袋 殴り込み!】はプライムビデオなんかでも観ることができるので、興味あれば是非そちらも。実際に見てみると、その異様さに興味津々になってしまうこと間違いなしです。
ではでは、また次の投稿まで。


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