あくび
ないないと血眼で探していたはらまきが、ヒョンと出てきた。昨日、整体前に脱いだかと車を探しても見つからず、付近を探しても探しても見つからなかった我が腹巻き。異次元の旅より帰ってきたように、ひょっこりこたつの布団から顔を出した。こたつのぬくもりを残したまま再び我が腹回りに納まった腹巻きは、暖かく我が腹をつつんでなお、余裕のあるように感じる。誇らしさが垣間見えた。成長したなぁ腹巻!主人を超えるんじゃないぞっ!
鹿田です、よろしくね!
そんな腹巻きに温められた我が丹田は熱を持ち、その熱が血の巡りとともに体中に行き渡るとなお力を欲す。ならば仕方ない、特効薬を与えようと今日も理由を見つけてはビールのプルタブを開ける。カプス。
乾杯、素敵な夜を!
テレビでは水行のニュースをやっている。雪に低温と特段に厳しい今年の冬に行われる水行は、如何程のものか。合間呆けた眼差しで天井を見上げて想像してみただけでも、身震いに見舞われる。ぬくぬくと温まった部屋で飲む冷たいビールのほうが、よほど体に良さそうである、だなんて結局、自分に都合のいい解釈を誑す。『自分に都合の良い解釈』って、なんて素敵な言葉なんだ。
と、己の胃にアルコール入りの水行をさせといて、瞬く間に僕はほろ酔いである。酔っては熱くなり半纏を脱ぐ、腹巻きも脱ぎ捨てる。せいせいとした鹿田は大きく背伸びをして後ろに倒れた。伸びるに伸びて浮遊していく感覚に任せれば、いつもそうやって夏の世界へと導かれていく。自分に都合の良い解釈は、自分自身が信じるならば、どんな嫌なことからも開放させてくれる素敵なやつさ、僕はいつもそうポジティブに受け止めている。受け止めるのも自由だろ?
こわばった手を開いて、先日購入した背中のマッサージ道具アイソースバインに寝転んで猫背を矯正して、気持ちいいのいい深い息を吐き、全身の力を抜く、抜くことができる。ふしゅーーと、枝葉末節から体全体のくうきをいれかえるように、浮かんでいく。なんかいいことが起こりそうだ。
そんなふにゃふにゃで適当なポジティブに、僕はいつも支えられている。気楽って素敵さ、気楽に慣れば自然とからだはうかんでゆく、高いところから周りを見渡せる、俯瞰できる。そして怒涛のごとく目まぐるしく変わる世界もまた、自然と理解できてゆく。完全など無い、不完全が永続していることを理解できるのが俯瞰。その先に見える一筋の光だけを、好奇心のまま探求していく冒険みたいな素敵な世界が正解。それだけ。
またあくびして眠って、朝が来てウキウキすることをしていく。
で、いいかなぁ、僕は。
適当を適当たらしむ僕だ。
では、また。
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