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【論文】自閉スペクトラム症児における条件性強化子の成立に関する現状と課題

問題と目的
ASD児に対する社会的関わりによる強化は重要であるが、一部のASD児においては社会的関わりが強化子として機能していない可能性がある。社会的関わりを条件性強化子とする成立性が高い方法の検討が必要である。先行研究の概観。

方法
対象とした論文26篇より、「年齢」「診断」「条件付けの方法」「中世刺激の種類」「強化子の種類」ごとに条件性強化子の成立率を算出。

■条件付けの方法
随伴ペアリング
 行動に随伴させて、中性刺激と強化子を同時提示する
非随伴ペアリング
 行動に随伴させずに、中性刺激と強化子を同時提示する
弁別刺激強化手続き
 中性刺激を弁別刺激として、強化子が得られる。
観察学習
 他者が中性刺激を選択する、もしくは中世刺激が玩具等の場合にはその玩具等に従事しているところを参加児に観察させる。

結果と考察
・未就学の参加児において、観察学習、随伴ペアリングにおいて条件性強化子が成立した割合が高かった。→年齢が低い方が、成育歴の中で中性刺激の状態に影響を与える経験が少ないため

・社会的関わりや身体接触は条件性強化子として成立しやすい→課題:参加児が少ない

・強化子としての食べ物や玩具は中性刺激の視覚刺激、聴覚刺激との組み合わせにおいては条件性強化子の成立率が高い。しかし、社会的関わりとの組み合わせでは、中性刺激の視覚刺激、聴覚刺激と比較して条件性強化子の成立率が低い。

・プレファレンスアセスメントでは、社会的関わりや身体接触を強化子とする必要もある。

・自然環境下では、ASD児が中性刺激に注意ができず、条件性強化子が成立しづらい ⇔ 実験場面では、刺激が統制されているため、条件性強化子が成立しやすい 。

すなわち、実験場面や療育場面において、行動に随伴させる形で社会的関わりと強化子を提示することや、他者が楽しんで中性刺激に関わっている姿を見せることにより、社会的かかわりが条件性強化子として成立するだろう。今後の検討が必要である。


感想
・社会的関わりの必要性は何度も言われてきていたが、レビューを通して、その根拠が明らかになった気がする。
・具体的な「社会的関わり」の方法や食べ物など、強化子提示の方法が気になる。セラピストの質によっても結果が左右されそう。
・自分の話だが、論文を読むのが久しぶりだったため、読むのに時間がかかってしまうし、理解も追いついていない…。これからリスタートできるよう、頑張ります。


文献情報
青木康彦・龔麗媛・野呂文行. (2019). 自閉スペクトラム症児における条件性強化子の成立に関する現状と課題. 行動分析学研究, 34(1), 87-102.


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