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おててがでたよ

 1歳1か月になる娘のお気に入りの絵本の一つが、「おててがでたよ」。

 市の8か月検診でもらった林明子さんの絵本で、赤ちゃんが一生懸命ひとりで服を着る様子が描かれている。絵本の中で赤ちゃんが、"ばあ"と服から顔を出したり、"すぽん"と足を出したりするたびに、娘は拍手して喜ぶ。

 週末の夜、娘をお風呂に入れたあと、バスタオルに包んで夫に託した。夫がリビングへ連れて行き、保湿や着替えをする。

 娘が起きているうちに夫が家にいることはほとんどないので、お風呂から上がって夫に引き渡されることは、娘にとっては非日常だ。最近は私にベッタリなこともあり、夫と2人にされた娘はぐずっていた。ジタバタ暴れる娘をなだめながらパジャマを着せていた夫が、「ほら、おててがでたよ」と言った。続いて、「あんよはどこかな?」

 絵本と同じセリフ。洗面所でその声を聞いていた私は、フフフと笑って、じんわり感激してしまった。

 夫は娘が産まれて半年間ほど、「なんてしゃべりかけたらいいのか分からん」などと言っていた。「歌を歌ってあげたら喜ぶで」、「絵本読んであげたら?」と言っても、「俺にはハードルが高すぎる」などとスカしていた。赤ちゃん、それも女の子の赤ちゃんに、どう接したらいいか分からない、という様子だった。

 それが最近では、いないいないばあをしてあやしたり、ハイハイで追いかけたり、ぎこちない声で絵本を読み聞かせたりしているのだ。そして、その絵本のフレーズを日常生活で活用しているなんて。お義母さんに聞かせてあげたいぐらいだ。

 2人きりになると泣かれちゃってかわいそうな時期だけど、もう少ししたらきっと父親の出番がたくさんあるからね。

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